目覚めの悪い朝だ。
ぼんやりと去年のことを思い出しながら、僕はようやく布団から出ようと努力を始める。
寝転んだまま手探りで充電コードが繋がれたたままのスマホを手に取り、徐に画面を覗く。時刻は午前11時半。
あと1時間もしないうちに1日の半分を迎えてしまうことに若干の焦りを感じたが、今日に限ってその必要はないとすぐに思い直す。今日は書店のアルバイトが休みだ。
寝転んだまま目的も無くメールアプリの受信ボックスを開き、定期的に送られてくる宣伝メッセージをゴミ箱へと送る。余計なものはスワイプして簡単に葬ることができるこの作業が毎朝の日課となっている。
トップページに設定したニュースサイトに出てきた記事をスワイプし、使い回されたの芸能人の写真が載った記事を見つけてタップする。
景色を眺めるように書き殴られた文章を流し読み、誤字を見つけては鼻で笑う。もちろん記事下の匿名コメントまでしっかりと目を通すことも忘れない。
散りばめられた心無い言葉がどう評価されているか、世間に受け入れられる言葉は一体どんなものなのか。そんなことを確認している。
たまに紛れる自分の価値観を押し付けているような尖ったコメントを見つけると、僕は心の中で卑下をする。
そこでやがて無意味な時間を過ごしたと気付き、しっかり後悔する。
次の瞬間、僕の瞼は瞬間的に視界を閉ざす。その直後、頬の辺りに痛みが走る。
「って……」
手から滑り落ちたスマホが僕の頬骨に直撃した。
突然視界が真っ暗になり、右頬にひんやりとした硬めのものがぶつかった衝撃はさほど大きくはなかったが、身体の方は突然顔面に固形物が落下してきたことに大層驚いたようで、さっきまでの微睡みが一瞬でどこかに飛んで行った。
事故とはいえ、これはこれで良い目覚まし代わりになったと無理矢理思い直し、僕はようやく起き上がる。
よれた敷布団を毛布もろとも乱雑に三つ折りにし、襖が開いたままの押し入れの上段に無理矢理押し込む。
洗面所に行く前に、リビングに置いている電子ケトルのスイッチを押すのは忘れない。
蓋を開けて確認するのが億劫だったから、昨日の残り水が入っていたはずだという曖昧な記憶だけを信じて。
入念に洗顔をしてから、スプレーのワックスを使い、髪を整える。どこに出かける訳でもないのに必要以上に身嗜みを整えようとするのは、だらしない格好をしている自分が赦せないから。
ぼんやりと去年のことを思い出しながら、僕はようやく布団から出ようと努力を始める。
寝転んだまま手探りで充電コードが繋がれたたままのスマホを手に取り、徐に画面を覗く。時刻は午前11時半。
あと1時間もしないうちに1日の半分を迎えてしまうことに若干の焦りを感じたが、今日に限ってその必要はないとすぐに思い直す。今日は書店のアルバイトが休みだ。
寝転んだまま目的も無くメールアプリの受信ボックスを開き、定期的に送られてくる宣伝メッセージをゴミ箱へと送る。余計なものはスワイプして簡単に葬ることができるこの作業が毎朝の日課となっている。
トップページに設定したニュースサイトに出てきた記事をスワイプし、使い回されたの芸能人の写真が載った記事を見つけてタップする。
景色を眺めるように書き殴られた文章を流し読み、誤字を見つけては鼻で笑う。もちろん記事下の匿名コメントまでしっかりと目を通すことも忘れない。
散りばめられた心無い言葉がどう評価されているか、世間に受け入れられる言葉は一体どんなものなのか。そんなことを確認している。
たまに紛れる自分の価値観を押し付けているような尖ったコメントを見つけると、僕は心の中で卑下をする。
そこでやがて無意味な時間を過ごしたと気付き、しっかり後悔する。
次の瞬間、僕の瞼は瞬間的に視界を閉ざす。その直後、頬の辺りに痛みが走る。
「って……」
手から滑り落ちたスマホが僕の頬骨に直撃した。
突然視界が真っ暗になり、右頬にひんやりとした硬めのものがぶつかった衝撃はさほど大きくはなかったが、身体の方は突然顔面に固形物が落下してきたことに大層驚いたようで、さっきまでの微睡みが一瞬でどこかに飛んで行った。
事故とはいえ、これはこれで良い目覚まし代わりになったと無理矢理思い直し、僕はようやく起き上がる。
よれた敷布団を毛布もろとも乱雑に三つ折りにし、襖が開いたままの押し入れの上段に無理矢理押し込む。
洗面所に行く前に、リビングに置いている電子ケトルのスイッチを押すのは忘れない。
蓋を開けて確認するのが億劫だったから、昨日の残り水が入っていたはずだという曖昧な記憶だけを信じて。
入念に洗顔をしてから、スプレーのワックスを使い、髪を整える。どこに出かける訳でもないのに必要以上に身嗜みを整えようとするのは、だらしない格好をしている自分が赦せないから。