もう長くない時のなかで、いったい何度、私は人にありがとうと言えるだろう。
 こうして本心で言葉を交わせる相手がいるのは素敵なことだ。けれど、大事にしたい、大切にしたいと思う相手が増えるほど、私は迷ってしまう。
 遠くない未来に消えゆく私が、明日が当たり前の人に関わっていいのかと。
 こうして親密に関われば関わったぶんだけ、いずれそれは棘となり、刃となり、心に拭いきれない傷を負わせてしまうのではないかと。

 ──鎖となって、まるで枷のように苦を縛り付けてしまうのではないかと。