「ゾンビ、でも……いいよ。これは、奇跡だよ」

 思わず立ち止まり、付いて出ていた言葉に、初めて自身が地面を睨み付けていることに気が付く。
 永は、今どんな顔をしているだろう。同じように立ち止まった気配がした。

「ずっと、ずっと、あの日のことが残ってた。大切だったあなたを傷付けたこと……ごめんなさい。こうして再会できて、謝ることが出来たこと、本当に嬉しいの」

 顔を上げると、驚いた表情が目に入る。夕日をバックにしているからか、まるで赤い炎の前に立っているように見える。危うく、今にも燃えてしまいそうな。

 真っ直ぐ私を見据え、危険な笑みを携えた。

「悠長なことを言っているが、俺がこの人を喰うとは思わないのか? よくこんな奴に好きな人の身体の自由を許したな。俺が乗っ取るとは思わなかったか? 今すぐこの肉体ごと奪ってやることだって出来るんだ」
「そんなことしないよ、永は」

 しない。分かっている。
 私の答えに少し怯んだようだが、鼻で笑われる。