うん、と答えると再び沈黙が訪れた。それでもさっきのような緊迫した空気ではなく、少しずつ、少しずつ、彼の乗っていた船が私の船に静かに近付いてくるような空気感に、硬直していた身が脱力していく。

 長い時間、私たちはそうしていた。コーヒーとココアを飲み終えても、二人で真っ暗なテレビ画面の中にいるお互いを見つめ続ける。私はそこに、初めて喜一ではなく、永を見た。私とメッセージのやり取りをしていたあの日々の彼は、こういう顔をして、そして私もきっとこういう顔で、交信をしていたはず。

 今は朝なのに、夜のような、あるいは宇宙の中に移っていく。クーラーをかけた肌寒さも、外から聞こえてくるセミの鳴き声も、時計の針でさえ全部遠くなって、ようやく、どこでもない、空間もない場所で、逢瀬を交わす。

──永遠なんて ない。永遠なんて 言葉 嫌いだ。

 いつだったか、そう言っていたのを思い出す。

──私は好きだよ、永遠とか、運命とか。
──好きそう。永遠なんてないし 運命も ないだろ。
──ないと思うよ、いつか死ぬし。でも、生きてる限り「永遠」って言いたいんだよね。