それから一週間。永が言ったように喜一じゃなく、永が起きてきた。あれ以来出てこなかったから本当に連勤後の休日が一番出てきやすいらしい。おはよ、と眠そうにリビングに来た。

 先に起きてコーヒーを啜っていた私は、ついにこの時が来た、とドキドキしながら挨拶を返す。

「俺もココア飲もうかな」

 座って、と言おうとしたが台所に消えてしまう。タイミングが難しい。緊張しながら待っているとココアを持って隣に腰掛けた。

「永、あのね」
「あーちょっと待って」

 外からセミの鳴き声がよく聞こえる。真っ黒なテレビ画面には一見喜一と、私が映っている。気持ちばかりが焦ってしまう。
 取り返さなきゃ。取り返さなきゃ。
 生唾を飲み込み、口を開こうとした時。

「夏菜子。今日は祭りに行くんだろ? それからでもいいんじゃね?」
「え……?」
「俺も……俺の心臓も、この身体に馴染んできてる。たぶん、俺の気持ち次第だよ。だから最後に祭りに行きたい。だめか?」

 最後。それに、この口振りは、きっと永は分かっている。私のしたいこと。落とし所を。