死人は蘇らない。眠って良かったんだ。私が呼び起こしてしまったから彼はゾンビのようになってしまった。あの日々を求める、ゾンビに。

「分かった。俺も……変な感覚があるのは嫌だから。でも、感謝はしてる。今も生きていられるのは彼の心臓のおかげだよね」
「うん。永も、救えて良かったって言ってた」

 喜一は私から手を離すと、自身の胸に手を当てた。目をつぶり、深呼吸をする。ありがとう、と呟き、目を開けた。

「次、会ったらありがとうって言っておいて。それから、かなを世界で一番幸せにするって」
「……うん」

 真摯な瞳と、最高の言葉に思わず照れてしまう。近くにあったブランケットで顔の半分を隠すと、ニヤア、と口元を歪め、肩をつんつんしてきた。

「うるさい!」
「何も言ってませーん」

 何も言っていないけれど明らかにからかいたいのだろう。そっぽを向くと「全く、可愛いなあ」と嬉しそうな声がする。

 本当は、からかいたくてたまらないニヤニヤした顔を見ていたい。喜一が笑うとずっと見ていたい。その顔が好きで、嬉しくて、可愛くて、でも今はうるさいから目を合わせちゃだめだ。

 こんな時間がずっと続いて欲しい。未来永劫に。私の肩を揺さぶる心地よい手の温もりに身を委ねてみた。