……そうするとね、不思議なことに、より気持ちが強くなっていった。ついに私たちは恋として認め、付き合うんだけれど、すぐに破綻した。画面の向こうに手を伸ばす勇気がなかったから。
 ……今まで色んな人と付き合ったけれど、初めて身を焦がすような恋をした。……世界で一番大切だった、と思う」
「そう」
「高三の春に、私が突き放したことで彼とはもう会わなくなった。終わった恋だったけれど、今でも大切な人。……恋をしてるとかじゃないの、初めて愛した人なの」
「……わかった」

 わかった、と言いながら、俯いてしまった夫の頭にかける言葉もなかった。こんな言われ方をしたら、私なら身が焼けそうなくらい腹が立つ。嫉妬に煮えくり返るだろう。

 好きじゃないと言われたって納得出来ない。やっぱり今でもその人が好きなんじゃないか、と思えてしまうから。

 だから、ごめん、とも言えなかった。謝ってしまえばそうだと言っているような気がして……。