そんな大好きな人が、こういった悪ふざけをするとは到底思えない。私はうんうん悩みながら、止めていた家事を再開することにした。

 あの人とは、高校一年の夏に出会った。直接じゃない、インターネットで。当時付き合っていた人がハマっていたチャットサイト。アバターという自分の人形を好きに作り上げるのがメインだが、そのサイト内にいる人達ともお話ができる。

 初めてチャットというものを使い、私は憧れだった人と付き合えたことよりも、そのチャットにのめり込んでいった。

 そこで出会ったかっこいいアバターに惹かれたのがきっかけだった。かっこいいのにうさぎの耳を付けたギャップに思わず話しかけた。

 なんてことない会話だ。けれど、どうしてか、彼との会話はテンポよく心地いいもので、私たちは次第にチャットではなく、サイト内にあるメール機能を使うようになった。そうすることでチャットのような不特定多数が見れるものとは違い、二人だけの会話を楽しんだ。

 とはいえ、これもなんてことない会話……。もう十年も経ってしまったから、ほとんど覚えていないというのが本音。