どれだけ愛を囁いても、私たちは会えない。遠距離恋愛という形もあったはずなのに、どこまでいっても私たちはインターネットの枠から外れない。

 失望、されるのが恐かったのかもしれない。会ってこれまでの関係を失うのが恐ろしくて、交信を続ける。けれどそれも一ヶ月しかもたなかった。

──別れよう。

 その言葉を目にした時、私は家から飛び出し、海へ向かう。走って十分もかからない。海に辿り着くと、もう一度彼からのメッセージを見た。

 涙が、零れた。その日は満月で、涙で滲んだ視界に映る黄金の円は、私が生きてきた中で一番美しい月だった。キラキラ輝いて、静かにその光を落とす。

──永は月みたいだね。

 いつか自分で言った言葉に胸を打たれる。手を伸ばすが届かない。離れていく訳でも、意地悪をされている訳でもない。ずっと月はその位置で私を見守る。自由に、大きく。

 これが、私たちの愛が壊れ、彼を月に還した日のこと。

 ラーメンを食べ終えて店を出ると、祭り楽しみだな、と彼が零した。その奥で車が渋滞をしていて、もう一日が終わるのだと実感する。