「ん、美味しい。そこ、写真撮ってないで早く食べなさい」
「はあい」

 行儀悪かったな。苦笑いを零して、ラーメンを啜る。美味しい。大好きな煮卵も入ってて嬉しいと口にすると、彼の方から一個くれた。嬉しい。

 俺たち本当にこの日本にいたんだな。さっき彼が言った言葉を心の中で反芻する。
 そうだ、私の気持ちも、今まさにこれ。あの時確かに同じ日本にいて、もしかしたら同じものを食す時間もあったかもしれない。

 私の中で、永はどこまでも遠かった。

──愛してる。

 付き合った当初は、そう言われることに喜びを感じていた。

──愛してる。

 けれど、それも束の間。瞬く間に私たちは苦しくなった。愛してると言う度に嘘になっていくような気がして、届いていない気がして、まるで画面の奥に本当に人がいるのか分からないほどに見失ってしまう。

──愛してるよ、私も。

 宇宙に送る交信のように一方的。
 付き合う前からそうだったはず。少なくとも、永はそれを感じていたから何度も別れたのだろう。
 しかし、付き合ってからはより一層その違和感が目立ち始める。