「飼ったことないじゃん」

 一度言ったことがあった。

「あるよ。ジャンガリアンのパールホワイト。名前はモチ」

 モチ……。どこかで聞いた話に、いやまさか、と否定した。本当に飼ったことがあるのだ、今まで忘れていただけで思い出したのだと無理やり納得させた。

 でも、と、私はスマートフォンに視線を送る。
 でも、これは、どうなのだろう。考えられることは、喜一があの人の友人で、私たちの関係を聞いた旦那の悪ふざけ。

 それしか考えられないが、喜一という男がそんなことをするだろうか、と疑問にも思う。

 彼はさっぱりした性格で、嫉妬という嫉妬をしたことがない。それはひとえに、彼には、自信の起伏、というものがないからだ、と私は思っている。
 あるがままを受け止める懐の広さ。それは自分自身にも適用され、コンプレックスはコンプレックスとして、それ以上卑下をしない。自信が一定した人間だから、私もそこに惹かれた。

 喜一といると安心する。そういう男女の駆け引きなど絶対しないし、私自身卑下しがちだから彼の言動に何度も救われた。