「お前にも同じことが言えるんじゃないかって思った。最後に会った夏菜子を差し置いても、今まで俺と一緒にいてくれた夏菜子の言葉は嘘じゃないって。あれが全部無くなるわけじゃない。本当の別れが来たんだと受け入れたよ。だから、復讐なんかじゃない。恨んでないんだ」

 彼の言葉に、ついに涙がこぼれる。すっかり冷めたココアをテーブルの上に置いて、ぼろぼろ落ちてくる涙を手のひらで受け止めるように顔を覆った。

「ごめん、ごめんね」
「何でだよ」

 私とは反対に笑い声が聞こえる。
 でもこれは本心。喜一のことを乗っ取ろうとしているなんて、あらぬ誤解をかけたこと。あの日のこともそう。全部、全部、謝りたくて、でももうこれ以上謝ると彼を困らせてしまうから、代わりに嗚咽が出てきてしまう。

 例えば、あの時、私が怒れたらまた違っていたのかもしれない。

──ただいま。やっぱり 戻ってきた。

 初めての別れを経験したが、一週間後に永は戻ってきた。その間の私は抜け殻のように過ごしていて、彼の名前を見た時、血が沸騰する、という感覚を本当に味わった。寂しかったし、いきなりなんで、と抗議をしたかったのに。

──良かった。また会えて嬉しい。

 これも間違いなく本音。ただ、弱音を吐くことは放棄した。