しかし、それも長く続かない。一ヶ月くらい経った頃、永から別れを切り出される。

 私たちは歪だったのだ。会えない分他の女の人で埋めていいと浮気を認めた私。永はしなかったが、越えられない壁のもどかしさと、日を追う事に惹かれてしまう苦しさに耐えられなかった。

 インターネットの壁を越えられていたら違っていたはず。

 どこまでも、私たちはお互いネットの住民。リアルの人間として会うことを恐れていた。

 だからあの日、再び戻ってきた永に私は言ってしまった。

──もう私は変わったんだよ。ただ受け入れることなんて出来ない。前の私じゃなくなった。会いたいし、声も聞きたい。それが出来ないなら戻ってこないで。辛いだけだよ。
──わかった。結局 お前も 他の女と一緒 だったんだな。

 それが最後。出会ってから二年の春。恋人になって別れを切り出された秋から年をまたぎ、冬が眠ったあとのこと。

「ショックだったけど、むしろ何度も裏切られていたのは夏菜子の方だった」
「そんな」
「お前に拒絶されてようやく分かったんだ。甘いお前に付け込んで甘えていたのは俺で、俺はその度にいなくなって、裏切っていたんだって。踏ん切りがついた」
「……うん……」