「私……本当は、SNSで君のこと探したんだよ」
「へえ?」
「色んなSNSに登録して、君の名前や好きなもの、誕生日で検索しまくった。でもネットの世界は広くて」
「どうして?」
「へ?」
「もし、見つけられても俺は返さないよ」

 あんなことがあったのに。

 続けられたその言葉が、重くのしかかって、頭がクラクラした。聴覚が遠くなっていき、上手く口にできない舌が、痺れるように震える。目の前が白くなっていき、遠くなっていく背中に手を伸ばした。

 私が次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上。傍らには……喜一が眠っている。窓の外は紅く、日が沈む時間らしい。

 長い時間気を失っていた。心当たりはある。暑さにやられた。ため息が零れ、喜一の頭に視線を落とす。穏やかな寝息に笑みがこぼれた。

 永は、覚えていた。当たり前だけれど、私たちの最後を。
 初めて別れた日のことを思い出す。

 私たちは、瞬く間に恋に落ちた。