「だから、それが「つまらない」って言ってるんだよ。この瞬間、お前がどうしたいかを大事にしろよ」
「それは、子供の考えだよ」
秋雄は十二歳のまま。大人の世界を知らないから純粋でいられる。だけど私は二十二歳。もう大人になってしまった。
「そうか? いつ死ぬかわからないのは子供も大人も同じだろ?」
顔を上げると秋雄はシニカルな笑みを浮かべている。
何故、このタイミングに人の生死が関わってくるのか理解できない私はただその顔を見つめる。
「この瞬間はもう二度と戻らない。それは俺にもナツにも言えることだろ?」
それは秋雄が死んだ時に散々思い知ったことだ。
さっきまで、目の前で笑っていた人が一秒後には死んでしまうことだってある。そして二度と会えなくなることだってある。それは年齢も性別も関係ない。
一秒先は誰にとっても未知だ。だから確実に存在する「現在」を大切にしなければならない。
そんな人の命の儚さを、私はあの時に心に痛く刻み込んだはずなのに……。
「だから、ナツにはその瞬間を大事にして欲しい。 ナツだって明日、死ぬかもしれないんだぞ? それならダイエットなんて言ってんなよ。好きな物をたくさん食って、やりたいことは思う存分やって。そうじゃないと後悔するぞ?」
__後悔。
秋雄は知らない。
もはや私の人生は後悔ばかりだということを。だから今更、後悔が一つ二つ増えた所でたいして変わらない。けれどこれだけはわかる。
こんなことを幽霊に言わせるべきではなかった。
「……ごめん」
死んだ人間の気持ちは私にはわからない。わからないからこそ、今の秋雄が望んでも手に入れることのできない「生きている瞬間」を大事にしなければならなかったのに。幽霊に説教させるなんて最悪だ。
「素直な所は変わらないな」と、苦笑する秋雄に教えてあげたい。
人目を気にするようになった私はあの頃と比べたら、大分素直ではなくなった。なのに、そんな私に秋雄はあの頃と変わらぬ優しい笑顔を見せてくれる。
「ナツ。お前は今、俺と荷台に乗りたいか乗りたくないか。どっち?」
軽トラの荷台から純粋な瞳で尋ねられる。
__そんなの、今の私には簡単な問いだ。
「それは、子供の考えだよ」
秋雄は十二歳のまま。大人の世界を知らないから純粋でいられる。だけど私は二十二歳。もう大人になってしまった。
「そうか? いつ死ぬかわからないのは子供も大人も同じだろ?」
顔を上げると秋雄はシニカルな笑みを浮かべている。
何故、このタイミングに人の生死が関わってくるのか理解できない私はただその顔を見つめる。
「この瞬間はもう二度と戻らない。それは俺にもナツにも言えることだろ?」
それは秋雄が死んだ時に散々思い知ったことだ。
さっきまで、目の前で笑っていた人が一秒後には死んでしまうことだってある。そして二度と会えなくなることだってある。それは年齢も性別も関係ない。
一秒先は誰にとっても未知だ。だから確実に存在する「現在」を大切にしなければならない。
そんな人の命の儚さを、私はあの時に心に痛く刻み込んだはずなのに……。
「だから、ナツにはその瞬間を大事にして欲しい。 ナツだって明日、死ぬかもしれないんだぞ? それならダイエットなんて言ってんなよ。好きな物をたくさん食って、やりたいことは思う存分やって。そうじゃないと後悔するぞ?」
__後悔。
秋雄は知らない。
もはや私の人生は後悔ばかりだということを。だから今更、後悔が一つ二つ増えた所でたいして変わらない。けれどこれだけはわかる。
こんなことを幽霊に言わせるべきではなかった。
「……ごめん」
死んだ人間の気持ちは私にはわからない。わからないからこそ、今の秋雄が望んでも手に入れることのできない「生きている瞬間」を大事にしなければならなかったのに。幽霊に説教させるなんて最悪だ。
「素直な所は変わらないな」と、苦笑する秋雄に教えてあげたい。
人目を気にするようになった私はあの頃と比べたら、大分素直ではなくなった。なのに、そんな私に秋雄はあの頃と変わらぬ優しい笑顔を見せてくれる。
「ナツ。お前は今、俺と荷台に乗りたいか乗りたくないか。どっち?」
軽トラの荷台から純粋な瞳で尋ねられる。
__そんなの、今の私には簡単な問いだ。