「それにしても一体誰が倒したんだろう」
「発見した勇者たちによるとすでに倒されて一部剥ぎ取られた後だったらしいな」
「倒れる前に大きな魔方陣が現れたって話も聞いたぞ」
「貴重なサンプルだからな、すぐに皇帝直属の学術研究員によって回収されたらしい」
「マジかよ。おこぼれに預かりたかったなぁ」
そんな話がちらほら聞こえ、わたしはママをチラリと見る。
奥の倉庫には剥ぎ取って転送したコバルトファイヤードラゴンの素材がたんまり。SDGsとか言いながらある意味独り占めしているママ。 恐るべし。
「なんにせよ、町に被害が及ばなくてよかったよ」
「俺のじいちゃんから聞いてたのとは全然違うなぁ。本当は弱いんじゃないのか?」
「いや、でも勇者や魔法使いがバッタバッタと倒されたらしいじゃないか。お前も逃げてきた一人だろう?」
「何だっていいじゃない。アンタたちが無事でまたアタシの店で楽しく飯を食らう。最高でしょ」
ママがガハハと笑う。
お客さんたちも「違えねぇ」と明るく笑ってビールで乾杯をし、後からやってきたお客さんも陽気に歌い出したりなんかしちゃって、楽しく夜が更けていった。
閉店した店内はすっかりと静かで、わたしとママが黙々と後片付けに追われている。外からは夜行性のモンスターの遠吠えが聞こえて、緩んだ気をピリッと引き締めてくれた。
「ママ、二十二時過ぎてるよね?」
「それがどうかした?」
「わたし、二十二時過ぎたら働いちゃだめなんじゃないの?」
「それは向こうの世界のルール。こっちの世界に労働基準法なんてないでしょうが。しかも時間の概念も違うっての」
「何それ……」
「まったく、アンタは余計なことばっかり覚える」
いい加減疲れてきたから仕事を終わる良いきっかけかと思ったけれど、一蹴されてしまった。
「ねえ、今日も泊まってもいいよね?」
帰る場所がない(正確には実家はあるけど無職でノコノコ帰れない)ため、ママにお伺いを立てる。ほら、あたしだってそんな図々しい女じゃないからさ、やっぱり無理やりここに留まるのは気が引けるじゃない?
「発見した勇者たちによるとすでに倒されて一部剥ぎ取られた後だったらしいな」
「倒れる前に大きな魔方陣が現れたって話も聞いたぞ」
「貴重なサンプルだからな、すぐに皇帝直属の学術研究員によって回収されたらしい」
「マジかよ。おこぼれに預かりたかったなぁ」
そんな話がちらほら聞こえ、わたしはママをチラリと見る。
奥の倉庫には剥ぎ取って転送したコバルトファイヤードラゴンの素材がたんまり。SDGsとか言いながらある意味独り占めしているママ。 恐るべし。
「なんにせよ、町に被害が及ばなくてよかったよ」
「俺のじいちゃんから聞いてたのとは全然違うなぁ。本当は弱いんじゃないのか?」
「いや、でも勇者や魔法使いがバッタバッタと倒されたらしいじゃないか。お前も逃げてきた一人だろう?」
「何だっていいじゃない。アンタたちが無事でまたアタシの店で楽しく飯を食らう。最高でしょ」
ママがガハハと笑う。
お客さんたちも「違えねぇ」と明るく笑ってビールで乾杯をし、後からやってきたお客さんも陽気に歌い出したりなんかしちゃって、楽しく夜が更けていった。
閉店した店内はすっかりと静かで、わたしとママが黙々と後片付けに追われている。外からは夜行性のモンスターの遠吠えが聞こえて、緩んだ気をピリッと引き締めてくれた。
「ママ、二十二時過ぎてるよね?」
「それがどうかした?」
「わたし、二十二時過ぎたら働いちゃだめなんじゃないの?」
「それは向こうの世界のルール。こっちの世界に労働基準法なんてないでしょうが。しかも時間の概念も違うっての」
「何それ……」
「まったく、アンタは余計なことばっかり覚える」
いい加減疲れてきたから仕事を終わる良いきっかけかと思ったけれど、一蹴されてしまった。
「ねえ、今日も泊まってもいいよね?」
帰る場所がない(正確には実家はあるけど無職でノコノコ帰れない)ため、ママにお伺いを立てる。ほら、あたしだってそんな図々しい女じゃないからさ、やっぱり無理やりここに留まるのは気が引けるじゃない?