「ふー、できたぁ」
器に山盛りになった食材。
散らばった皮の残骸。
見るも無惨なキッチン。
「アンタ……」
ママの冷ややかな視線がわたしに刺さる。
「不器用にもほどがあるでしょうよ」
「うっ……!」
「なんなの、この細かいじゃがいも。不揃いなにんじん。タマネギ四等分にしただけって、アンタ舐めてんの?」
ママに言われたとおり、できあがりは散々なものだった。一口大がどんなものかわからずにこれくらいかな、これくらいかなと切っているうちに小さくなっていったし、にんじんは手を切るのが怖くて大きめに切っちゃったし、たまねぎは目が痛くて切りたくなくなったし。
「だってぇ、包丁難しいんだもん」
可愛く頬を膨らませてみたけれど、ママの冷ややかな視線は弱まるところを知らない。さすがにわたしも落ち込む。
「……ごめんなさい。食材無駄にしちゃったよね?」
しゅんと肩を落とすとようやくママは大きなため息とともに目元を緩めた。
「本当は肉じゃが作ろうと思ってたんだけど、メニュー変更ね。まったく、アンタは包丁の前からやり直しよ」
「にくじゃがって何……?」
「気にするところそこじゃないのよ。このおマヌケ娘が」
ママはじゃがいもをお鍋に入れて火をかける。ぐつぐつと茹でている間に、包丁を取り出しにんじんを薄く切っていく。たまねぎはみじん切りだ。トントンと包丁がまな板に当たる音が耳に心地良く響く。
「ママ、すごっ!」
「アンタだって練習すればこれくらいできるようになるわよ」
ママの包丁捌きをぼやっと見ていると、目の前に茹で上がったじゃがいもがドンと置かれた。湯気がくゆり、ホクホクと美味しそうな香りがする。
「包丁はできなくても潰すことくらいできるでしょ?」
はい、と渡されたそれは先が平らで無数の穴が空いていてマッシャーという道具らしい。マッシャーを使ってじゃがいもを潰している間に、ママはにんじんを湯がき、たまねぎに魔法の粉を揉み込んでいた。
器に山盛りになった食材。
散らばった皮の残骸。
見るも無惨なキッチン。
「アンタ……」
ママの冷ややかな視線がわたしに刺さる。
「不器用にもほどがあるでしょうよ」
「うっ……!」
「なんなの、この細かいじゃがいも。不揃いなにんじん。タマネギ四等分にしただけって、アンタ舐めてんの?」
ママに言われたとおり、できあがりは散々なものだった。一口大がどんなものかわからずにこれくらいかな、これくらいかなと切っているうちに小さくなっていったし、にんじんは手を切るのが怖くて大きめに切っちゃったし、たまねぎは目が痛くて切りたくなくなったし。
「だってぇ、包丁難しいんだもん」
可愛く頬を膨らませてみたけれど、ママの冷ややかな視線は弱まるところを知らない。さすがにわたしも落ち込む。
「……ごめんなさい。食材無駄にしちゃったよね?」
しゅんと肩を落とすとようやくママは大きなため息とともに目元を緩めた。
「本当は肉じゃが作ろうと思ってたんだけど、メニュー変更ね。まったく、アンタは包丁の前からやり直しよ」
「にくじゃがって何……?」
「気にするところそこじゃないのよ。このおマヌケ娘が」
ママはじゃがいもをお鍋に入れて火をかける。ぐつぐつと茹でている間に、包丁を取り出しにんじんを薄く切っていく。たまねぎはみじん切りだ。トントンと包丁がまな板に当たる音が耳に心地良く響く。
「ママ、すごっ!」
「アンタだって練習すればこれくらいできるようになるわよ」
ママの包丁捌きをぼやっと見ていると、目の前に茹で上がったじゃがいもがドンと置かれた。湯気がくゆり、ホクホクと美味しそうな香りがする。
「包丁はできなくても潰すことくらいできるでしょ?」
はい、と渡されたそれは先が平らで無数の穴が空いていてマッシャーという道具らしい。マッシャーを使ってじゃがいもを潰している間に、ママはにんじんを湯がき、たまねぎに魔法の粉を揉み込んでいた。