今日は待ちに待った私とラウス様の結婚式。
式には私とラウス様の家族はもちろんのこと、ミリアール様とダイナス様、そしてダメ元で招待状を送ったマクベス王子も参加してくださっている。
「綺麗だよ」――とダイナス様。
「まぁ、センスは悪くないんじゃないかしら」――とダイナス様に続いて褒めてくれたミリアール様。
「俺を式に呼ぶとはお前も物好きだな。その……幸せになれよ」――とマクベス王子。
三者三様の祝いの言葉をかけられた私は涙を止めることのできないでいるお父様にエスコートされて、ラウス様の元へと旅立った。
この日のために用意されたドレスの胸元には真っ白なバラの生花が、そしてドレス全体にはバラの刺繍が散りばめられている。正真正銘私のウェディングドレスだ。
来てくれた方々の前で誓いを立て、ブーケのお披露目も終わった今、大きめの式場を用意してもらってよかったとしみじみと親戚の多さを実感している。
式場を用意してくれたラウス様もお姉様とお母様の言葉を事実だと受け入れきれていない部分があったのか、式が始まる前に集まった人の多さに私の隣でラウス様は目を見開いていた。
ちなみにこの式場のほとんどを占めるのは私の兄弟の身内さん達である。
長女のシトロンお姉様はその見た目の美しさと聡明さで東の大陸の国王様と王妃様に見初められ、今は第1側妃として大陸で暮らしている。今回、シトロンお姉様の妹の結婚式ということもあり国王様と王妃様、そしてボディーガードを100人近く引き連れて来てくださった。
その隣で久し振りに会ったシトロンお姉様と会話を楽しんでいるのは次女のミントお姉様。サンドレアからは遠く離れた森の中で暮らす旦那様に嫁いでいったお姉様は2人の子供と、旦那様の家族20人を引き連れて参加してくれた。
つい最近会ったばかりの三女のカロンお姉様は旦那様に運ばれたお茶を早速楽しんでいる。
長男のディランお兄様は奥様と、お父様とお母様の4人でこちらを優しく見守っている。
次男のケイトスお兄様は奥様と共に獲物を追いかけてくれる仲間達を全員引き連れて、三男のリュコスお兄様率いる商会の人達と何やら話に花を咲かせている。
その他にも次々親戚のみんなは私達の元に祝福の言葉をかけてくれる。
「おめでとう」と共に「良かったなぁ」と感慨深く声をかけて去っていくおじさん達も多く、私ってそんなに結婚できないと思われていたのかと少しだけ落ち込んだりもした。
そして会場内は結婚式というよりサンドリアの交流会となりつつある。そんな中で彼らが話すのは相変わらず冗談ばかり。
「いやぁ、モリアちゃんが借金のカタに取られたって聞いた時は焦ったよなぁ」
「親戚とはいえ、家を出た俺たちじゃサンドレアには介入出来ないから援助も出来ないしなぁ」
「うちなんか団長止めるの大変だったんすよ?」
「安心しろ、うちも火薬と武器の大量の仕入れをキャンセルするのに苦労した」
「ご長男のディラン様が穏やかな性格だったのが唯一の救いだよな……」
「なんでこう、男っていうのは血の気が多いやつばかりなのかしら?」
「そういうお前のとこだって一時は戦争でも仕掛けるんじゃないかって噂になってたぞ」
「国王たるもの、いついかなる時も万全の状態に備えておくものだ」
「シトちゃんの大事な妹だもの、何かあったらお約束を破らない程度に頑張るわよぉ〜」
「ともかく、何もしなくて良かったなぁ」
なぜこうもサンドレア家の親戚やその身内の誰もが冗談話が好きなのかはわからない。だが相変わらず親戚の関係が良好なのは喜ばしいことである。
「今日からモリア=サンドレアからモリア=カリバーンに変わるのか……」
嬉しそうにそう漏らすラウス様に寄り添いながら、私は愛とは何物にも代え難いものであると実感した。
そう感じるのはその身体にサンドレアの血が流れているからだろうか。
私の隣には愛するラウス様が、そしてこの場には愛する家族達がいる。
ああ、なんて幸せなことだろう。
胸いっぱいに幸せを抱え、来てくれたみんなに私の自慢の旦那様と彼との思い出が詰まったブーケをお披露目したのだった。
そしてそれは元気に産まれて来てくれた我が子達にも伝えて行く。
『愛とは他の何にも代え難いものである』――と私達の経験も踏まえて。
盛大に行われた結婚式から時は過ぎ、私の相棒、グスタフはシャロン様のお屋敷の子と結ばれて、今では立派な5匹のネコ達のお父さんである。
グスタフの子ども達は彼がいつも私の周りについていてくれたのと同様に私の子供達を見守ってくれている。
「グスタフ、これからもよろしくね」
「ぶにぁ」
「モリア、ここにいたのか」
「ラウス様、おかえりなさい!」
私の部屋へと一直線に駆けてきたラウス様の腕には白薔薇の花束が横たわっている。
今日で私達が結婚してから10年が経つ。
「モリア、私と結婚してくれてありがとう」
「ラウス様、私を選んでくださってありがとうございます」
食卓の真ん中には真っ白な薔薇が主体となった花束が一つ。
気高く咲き誇るその花はいつまでも私たち家族を見守ってくれている。
(完)
式には私とラウス様の家族はもちろんのこと、ミリアール様とダイナス様、そしてダメ元で招待状を送ったマクベス王子も参加してくださっている。
「綺麗だよ」――とダイナス様。
「まぁ、センスは悪くないんじゃないかしら」――とダイナス様に続いて褒めてくれたミリアール様。
「俺を式に呼ぶとはお前も物好きだな。その……幸せになれよ」――とマクベス王子。
三者三様の祝いの言葉をかけられた私は涙を止めることのできないでいるお父様にエスコートされて、ラウス様の元へと旅立った。
この日のために用意されたドレスの胸元には真っ白なバラの生花が、そしてドレス全体にはバラの刺繍が散りばめられている。正真正銘私のウェディングドレスだ。
来てくれた方々の前で誓いを立て、ブーケのお披露目も終わった今、大きめの式場を用意してもらってよかったとしみじみと親戚の多さを実感している。
式場を用意してくれたラウス様もお姉様とお母様の言葉を事実だと受け入れきれていない部分があったのか、式が始まる前に集まった人の多さに私の隣でラウス様は目を見開いていた。
ちなみにこの式場のほとんどを占めるのは私の兄弟の身内さん達である。
長女のシトロンお姉様はその見た目の美しさと聡明さで東の大陸の国王様と王妃様に見初められ、今は第1側妃として大陸で暮らしている。今回、シトロンお姉様の妹の結婚式ということもあり国王様と王妃様、そしてボディーガードを100人近く引き連れて来てくださった。
その隣で久し振りに会ったシトロンお姉様と会話を楽しんでいるのは次女のミントお姉様。サンドレアからは遠く離れた森の中で暮らす旦那様に嫁いでいったお姉様は2人の子供と、旦那様の家族20人を引き連れて参加してくれた。
つい最近会ったばかりの三女のカロンお姉様は旦那様に運ばれたお茶を早速楽しんでいる。
長男のディランお兄様は奥様と、お父様とお母様の4人でこちらを優しく見守っている。
次男のケイトスお兄様は奥様と共に獲物を追いかけてくれる仲間達を全員引き連れて、三男のリュコスお兄様率いる商会の人達と何やら話に花を咲かせている。
その他にも次々親戚のみんなは私達の元に祝福の言葉をかけてくれる。
「おめでとう」と共に「良かったなぁ」と感慨深く声をかけて去っていくおじさん達も多く、私ってそんなに結婚できないと思われていたのかと少しだけ落ち込んだりもした。
そして会場内は結婚式というよりサンドリアの交流会となりつつある。そんな中で彼らが話すのは相変わらず冗談ばかり。
「いやぁ、モリアちゃんが借金のカタに取られたって聞いた時は焦ったよなぁ」
「親戚とはいえ、家を出た俺たちじゃサンドレアには介入出来ないから援助も出来ないしなぁ」
「うちなんか団長止めるの大変だったんすよ?」
「安心しろ、うちも火薬と武器の大量の仕入れをキャンセルするのに苦労した」
「ご長男のディラン様が穏やかな性格だったのが唯一の救いだよな……」
「なんでこう、男っていうのは血の気が多いやつばかりなのかしら?」
「そういうお前のとこだって一時は戦争でも仕掛けるんじゃないかって噂になってたぞ」
「国王たるもの、いついかなる時も万全の状態に備えておくものだ」
「シトちゃんの大事な妹だもの、何かあったらお約束を破らない程度に頑張るわよぉ〜」
「ともかく、何もしなくて良かったなぁ」
なぜこうもサンドレア家の親戚やその身内の誰もが冗談話が好きなのかはわからない。だが相変わらず親戚の関係が良好なのは喜ばしいことである。
「今日からモリア=サンドレアからモリア=カリバーンに変わるのか……」
嬉しそうにそう漏らすラウス様に寄り添いながら、私は愛とは何物にも代え難いものであると実感した。
そう感じるのはその身体にサンドレアの血が流れているからだろうか。
私の隣には愛するラウス様が、そしてこの場には愛する家族達がいる。
ああ、なんて幸せなことだろう。
胸いっぱいに幸せを抱え、来てくれたみんなに私の自慢の旦那様と彼との思い出が詰まったブーケをお披露目したのだった。
そしてそれは元気に産まれて来てくれた我が子達にも伝えて行く。
『愛とは他の何にも代え難いものである』――と私達の経験も踏まえて。
盛大に行われた結婚式から時は過ぎ、私の相棒、グスタフはシャロン様のお屋敷の子と結ばれて、今では立派な5匹のネコ達のお父さんである。
グスタフの子ども達は彼がいつも私の周りについていてくれたのと同様に私の子供達を見守ってくれている。
「グスタフ、これからもよろしくね」
「ぶにぁ」
「モリア、ここにいたのか」
「ラウス様、おかえりなさい!」
私の部屋へと一直線に駆けてきたラウス様の腕には白薔薇の花束が横たわっている。
今日で私達が結婚してから10年が経つ。
「モリア、私と結婚してくれてありがとう」
「ラウス様、私を選んでくださってありがとうございます」
食卓の真ん中には真っ白な薔薇が主体となった花束が一つ。
気高く咲き誇るその花はいつまでも私たち家族を見守ってくれている。
(完)