朝というのはやはりいつものようにやって来る。
例え隣にアンジェリカとラウス様がいようとも関係なく。
これでラウス様とベッドを共にするのも三度目だ。
アンジェリカの願いを叶えたいという気持ちが先走ったとはいえ、結婚前にこんなこと、恥じることなど何もなかったとはいえ節操がないと後ろ指を指されても仕方ないだろう。
「はぁ……」
隣で気持ちよさそうに眠るアンジェリカの顔にかかる髪を指でなぞるように落としながら自己嫌悪に浸っていた。だがその反面で、まだこの場に居続けたいと願う自分もいるのもまた事実で、目などとっくに覚めているというのに布団から出られずにいた。
「ん……モリア?」
「ラウス様、おはようございます」
「もう朝、か」
「いえ、時間も早いのでまだお休みになられて居ても大丈夫ですよ」
「そうか……。ではもう少しこのままで」
指の腹で目を撫でるとラウス様はまだ眠そうではあるが、そこにある幸せを大切にするように優しく笑った。何も話さずとも温かさを実感できるその時を噛みしめているともう一人、この空間には欠かせないアンジェリカが目を開いた。
「ふぁ、ん……お兄様、お義姉様」
あくびを噛みしめたアンジェリカは眠気まなこを擦って、隣に私たちがいるのをゆっくりと確認すると左右に手を伸ばした。卵を掴むように指先の丸まったその手を私が握り返すと遅れてラウス様も反対の手を握った。
「おはようございます」
居場所を見つけた手をアンジェリカは嬉しそうに眺めた。そしてしばらくそこに固定し続けた視線を何かを思い切ったように頷いてから私たちに移すとゆっくりと口を開き、そして胸のうちを語った。
「私、今日、王子の元へ行ってきますわ」
その言葉は何を意味するのか、私にはわからない。けれどその決断は彼女にとっての一大決心であるというのだけはよくわかるのだ。そんな私に出来るのは無力にも抱きしめてあげること、そしてこの屋敷で彼女の帰りを待っていてあげることだけなのだ。
「アンジェリカ」
私とラウス様、二人に抱きしめられたアンジェリカは一層幸せを噛みしめるように目を細めた。
「お義姉様、この子を預かってはいただけませんか?」
アンジェリカは相棒のテディベアをそっと私の胸元へと差し出すと真っ直ぐに私の目を見つめた。
「わかったわ。この子と一緒に、アンジェリカの帰りを待っているわね」
「はい!」
アンジェリカはハッキリと返事を返すとベッドから降りて、ネグリジェ姿のまま駆け出した。
「シェード、シェード」
廊下で元気そうにシェードの名を呼ぶ声がする。やがて聞こえなくなったそれはおそらく嬉しそうに駆け寄った彼の胸へと吸い込まれていったのだろう。
「頑張って、アンジェリカ」
彼女が、そして不器用な彼が出す答えを私はまだ知らない。だが私は何があろうともかわいいかわいいアンジェリカを応援するのだ。それは私の肩を抱いて、アンジェリカが飛び出して行ったドアを見つめるラウス様も、そして私の腕の中でいい子にしているテディベアも同じことだろう。
例え隣にアンジェリカとラウス様がいようとも関係なく。
これでラウス様とベッドを共にするのも三度目だ。
アンジェリカの願いを叶えたいという気持ちが先走ったとはいえ、結婚前にこんなこと、恥じることなど何もなかったとはいえ節操がないと後ろ指を指されても仕方ないだろう。
「はぁ……」
隣で気持ちよさそうに眠るアンジェリカの顔にかかる髪を指でなぞるように落としながら自己嫌悪に浸っていた。だがその反面で、まだこの場に居続けたいと願う自分もいるのもまた事実で、目などとっくに覚めているというのに布団から出られずにいた。
「ん……モリア?」
「ラウス様、おはようございます」
「もう朝、か」
「いえ、時間も早いのでまだお休みになられて居ても大丈夫ですよ」
「そうか……。ではもう少しこのままで」
指の腹で目を撫でるとラウス様はまだ眠そうではあるが、そこにある幸せを大切にするように優しく笑った。何も話さずとも温かさを実感できるその時を噛みしめているともう一人、この空間には欠かせないアンジェリカが目を開いた。
「ふぁ、ん……お兄様、お義姉様」
あくびを噛みしめたアンジェリカは眠気まなこを擦って、隣に私たちがいるのをゆっくりと確認すると左右に手を伸ばした。卵を掴むように指先の丸まったその手を私が握り返すと遅れてラウス様も反対の手を握った。
「おはようございます」
居場所を見つけた手をアンジェリカは嬉しそうに眺めた。そしてしばらくそこに固定し続けた視線を何かを思い切ったように頷いてから私たちに移すとゆっくりと口を開き、そして胸のうちを語った。
「私、今日、王子の元へ行ってきますわ」
その言葉は何を意味するのか、私にはわからない。けれどその決断は彼女にとっての一大決心であるというのだけはよくわかるのだ。そんな私に出来るのは無力にも抱きしめてあげること、そしてこの屋敷で彼女の帰りを待っていてあげることだけなのだ。
「アンジェリカ」
私とラウス様、二人に抱きしめられたアンジェリカは一層幸せを噛みしめるように目を細めた。
「お義姉様、この子を預かってはいただけませんか?」
アンジェリカは相棒のテディベアをそっと私の胸元へと差し出すと真っ直ぐに私の目を見つめた。
「わかったわ。この子と一緒に、アンジェリカの帰りを待っているわね」
「はい!」
アンジェリカはハッキリと返事を返すとベッドから降りて、ネグリジェ姿のまま駆け出した。
「シェード、シェード」
廊下で元気そうにシェードの名を呼ぶ声がする。やがて聞こえなくなったそれはおそらく嬉しそうに駆け寄った彼の胸へと吸い込まれていったのだろう。
「頑張って、アンジェリカ」
彼女が、そして不器用な彼が出す答えを私はまだ知らない。だが私は何があろうともかわいいかわいいアンジェリカを応援するのだ。それは私の肩を抱いて、アンジェリカが飛び出して行ったドアを見つめるラウス様も、そして私の腕の中でいい子にしているテディベアも同じことだろう。