今日も朝から暑い。蝉がミ~ンミ~ンと鳴くと暑さが2割増しになる気がする。
ここは山間のお寺なので木が沢山あって割合涼しいと思うが、それでも暑い。
こんな時は霊水を飲むに限る。一年中一定の温度なので夏は冷たくて冬は温かい。
ミネラルがたっぷりで熱中症や疲労回復にうってつけ。しかも無料で飲み放題。
本当に恵まれた環境だと思う。
今日は瑠衣と結芽が来る日だ。この霊水で麦茶を沢山作ってキンキンに冷やしておこう。
約束の時間は11時にした。お昼ご飯を一緒に食べたいし、夕方までゆっくり話したかったから。
私が二人の紹介して、こんな事言おうとか、あんなこと話そうとか考えたら昨夜眠れなかった。
一番考えたのは颯さんの事を結芽に話す事だ。彼女ならきっと受け入れてくれるという確信はあったが普通では考えられない事だから、彼女がどういう受け止め方をするのか、怖くもあったからだ。
瑠衣がこの間の電話で吃驚するような紹介の仕方を提案した。その案に乗って見ようと思ったが、果たして本当に良いのか疑問も残っていた。
颯さんは了承してくれたが、私はまだ迷っていた。これって、結芽の事をまだ信用していないと云う事なのかも知れない。
瑠衣から10時に来たいと電話があったので了承した。
家にやってきた瑠衣は革の手提げバッグと一緒に紙袋を持っていた。
「いらっしゃい、瑠衣。」
「急に一時間早めてごめん。これ見せたかったから。」
そう言って紙袋に入っていたB4サイズの封筒からA4の用紙を取り出した。
用紙は20枚以上の束になっていて、そこには漫画が描かれていた。
「!!これ!!!」
「うん。どうかな?」
「すごい!素敵!!瑠衣はやっぱり天才だね。」
その言葉に瑠衣は恥ずかしそうに俯いた。
結芽に我が家の秘密を伝える為にどんな方法が良いか悩んでいた私に、瑠衣は漫画を提案してきた。
瑠衣はどんなスタイルの絵も描ける。日本画、水彩画、イラスト、抽象画、油絵、版画、アクリル画は言うに及ばず、漫画も描ける天才。生まれ持ったものだと思う。
瑠衣は漫画原稿用紙に、緻密に繊細に漫画を描いてくれた。
その出来は素晴らしく、漫画家になれば絶対大成するだろうと思うが、瑠衣は日本画家を目指して勉強しているのできっとそっちの道に行くのだろう。でも、なんでも描ける瑠衣は、もしかしたら独自の手法を見つけて描いていくのかもしれない。兎に角将来が楽しみだ。
漫画は颯さんとの過去世、現在の出会いから結婚式、今まで協力して浄化した魔物の事。
今までのことが漫画として描いてあった。勿論結芽の体験したことも含めて。
漫画の主人公二人の名前も私と颯さんそのまんま。絵も私と颯さんの姿そのもの。
その完成度の高さに眼を瞠った。
素晴らしい出来に感心しきりで、タイトルがあることに気づいたのは暫くしてからだった。
タイトルは”七百年の恋”。
え?!何これ~!!
私は急に恥ずかしくなって、顔が真っ赤になってしまった。
瑠衣はそんな私を見てにやにや笑っていた。
「瑠衣!漫画だけで良かったのに!このタイトル恥ずかしすぎて辛い!」と叫んだ私に、
「良いじゃない。本当の事なんだから。今更照れることないでしょ。」と一蹴されてしまった。
「もう!知らない!!イジワル瑠衣。」と、真っ赤になったほっぺたを膨らませてそっぽを向いた
私だった。
***
そんなやり取りをしていたら、あっという間に11時になり、結芽がやって来た。
「結芽いらっしゃい。なんか久しぶり?って感じだね」と、さっきまで赤かった顔を隠すように
ちょっとだけ作り笑いを浮かべて結芽を迎え入れた。
結芽はいつもと若干違っていた私を見つめていたが、何も言わなかった。
「お邪魔します。ホントに久しぶりって感じだね。実家に帰ったから、ゆっくりして来ようと思ったんだけどね。こっちの暮らしが恋しくなって早々に帰ってきちゃったんだよね。それに、ここに泊まらせてもらって、余計こっちの生活が気に入ったからね!こっちは涼しいし。」と、これ以上無い位の笑顔で言われた。
「そっか。結芽にそう言ってもらえて嬉しい。今日は沢山おしゃべりしようね。何なら泊まっていって?あ、早速だけど紹介するね。瑠衣、彼女は如月結芽ちゃん。ピアノ専攻なんだよ。」と、瑠衣に紹介した。
「結芽、彼女は白羽根瑠衣ちゃん。この子は都会の美大に行ってね。凄く絵が上手で、将来は日本画家になりたいんだって。」
と、二人を取り持った。二人はお互い「初めまして」と挨拶を交わすとすぐに打ち解けたようで、
それから3人のおしゃべりが止まらなくなってしまったのは言うまでもない。
”女三人寄れば姦しい”とは言い得て妙だと思う。
因みに、”三人寄れば文殊の知恵”という仏教の諺もあるけど。それはこれからの私達次第です。
ここは山間のお寺なので木が沢山あって割合涼しいと思うが、それでも暑い。
こんな時は霊水を飲むに限る。一年中一定の温度なので夏は冷たくて冬は温かい。
ミネラルがたっぷりで熱中症や疲労回復にうってつけ。しかも無料で飲み放題。
本当に恵まれた環境だと思う。
今日は瑠衣と結芽が来る日だ。この霊水で麦茶を沢山作ってキンキンに冷やしておこう。
約束の時間は11時にした。お昼ご飯を一緒に食べたいし、夕方までゆっくり話したかったから。
私が二人の紹介して、こんな事言おうとか、あんなこと話そうとか考えたら昨夜眠れなかった。
一番考えたのは颯さんの事を結芽に話す事だ。彼女ならきっと受け入れてくれるという確信はあったが普通では考えられない事だから、彼女がどういう受け止め方をするのか、怖くもあったからだ。
瑠衣がこの間の電話で吃驚するような紹介の仕方を提案した。その案に乗って見ようと思ったが、果たして本当に良いのか疑問も残っていた。
颯さんは了承してくれたが、私はまだ迷っていた。これって、結芽の事をまだ信用していないと云う事なのかも知れない。
瑠衣から10時に来たいと電話があったので了承した。
家にやってきた瑠衣は革の手提げバッグと一緒に紙袋を持っていた。
「いらっしゃい、瑠衣。」
「急に一時間早めてごめん。これ見せたかったから。」
そう言って紙袋に入っていたB4サイズの封筒からA4の用紙を取り出した。
用紙は20枚以上の束になっていて、そこには漫画が描かれていた。
「!!これ!!!」
「うん。どうかな?」
「すごい!素敵!!瑠衣はやっぱり天才だね。」
その言葉に瑠衣は恥ずかしそうに俯いた。
結芽に我が家の秘密を伝える為にどんな方法が良いか悩んでいた私に、瑠衣は漫画を提案してきた。
瑠衣はどんなスタイルの絵も描ける。日本画、水彩画、イラスト、抽象画、油絵、版画、アクリル画は言うに及ばず、漫画も描ける天才。生まれ持ったものだと思う。
瑠衣は漫画原稿用紙に、緻密に繊細に漫画を描いてくれた。
その出来は素晴らしく、漫画家になれば絶対大成するだろうと思うが、瑠衣は日本画家を目指して勉強しているのできっとそっちの道に行くのだろう。でも、なんでも描ける瑠衣は、もしかしたら独自の手法を見つけて描いていくのかもしれない。兎に角将来が楽しみだ。
漫画は颯さんとの過去世、現在の出会いから結婚式、今まで協力して浄化した魔物の事。
今までのことが漫画として描いてあった。勿論結芽の体験したことも含めて。
漫画の主人公二人の名前も私と颯さんそのまんま。絵も私と颯さんの姿そのもの。
その完成度の高さに眼を瞠った。
素晴らしい出来に感心しきりで、タイトルがあることに気づいたのは暫くしてからだった。
タイトルは”七百年の恋”。
え?!何これ~!!
私は急に恥ずかしくなって、顔が真っ赤になってしまった。
瑠衣はそんな私を見てにやにや笑っていた。
「瑠衣!漫画だけで良かったのに!このタイトル恥ずかしすぎて辛い!」と叫んだ私に、
「良いじゃない。本当の事なんだから。今更照れることないでしょ。」と一蹴されてしまった。
「もう!知らない!!イジワル瑠衣。」と、真っ赤になったほっぺたを膨らませてそっぽを向いた
私だった。
***
そんなやり取りをしていたら、あっという間に11時になり、結芽がやって来た。
「結芽いらっしゃい。なんか久しぶり?って感じだね」と、さっきまで赤かった顔を隠すように
ちょっとだけ作り笑いを浮かべて結芽を迎え入れた。
結芽はいつもと若干違っていた私を見つめていたが、何も言わなかった。
「お邪魔します。ホントに久しぶりって感じだね。実家に帰ったから、ゆっくりして来ようと思ったんだけどね。こっちの暮らしが恋しくなって早々に帰ってきちゃったんだよね。それに、ここに泊まらせてもらって、余計こっちの生活が気に入ったからね!こっちは涼しいし。」と、これ以上無い位の笑顔で言われた。
「そっか。結芽にそう言ってもらえて嬉しい。今日は沢山おしゃべりしようね。何なら泊まっていって?あ、早速だけど紹介するね。瑠衣、彼女は如月結芽ちゃん。ピアノ専攻なんだよ。」と、瑠衣に紹介した。
「結芽、彼女は白羽根瑠衣ちゃん。この子は都会の美大に行ってね。凄く絵が上手で、将来は日本画家になりたいんだって。」
と、二人を取り持った。二人はお互い「初めまして」と挨拶を交わすとすぐに打ち解けたようで、
それから3人のおしゃべりが止まらなくなってしまったのは言うまでもない。
”女三人寄れば姦しい”とは言い得て妙だと思う。
因みに、”三人寄れば文殊の知恵”という仏教の諺もあるけど。それはこれからの私達次第です。