10. 女子会


鎧武者を無事浄化して、毎日焼けつくような暑さにうんざりしながらも夏休みを満喫していた八月の初旬。結芽から”今実家に帰ってきてるけど、こっちはめっちゃ暑いから一週間後に帰る”とメールが来た。

結芽の実家は大都会の海沿いだ。湿気と熱風と熱帯夜でダメージが凄いらしい。N県はカラッとした暑さで夜も気温が下がる為、避暑に来る人は非常に多い。

”帰ってきたら家においで。霊水で作った麦茶やアイスコーヒーを飲めば暑さも吹っ飛ぶよ。”と返した。
すると”絶対行く!!”と速攻で返事が来た。

”待ってるね。それとね、結芽に私の幼馴染を紹介したいんだ。きっと気が合うと思うよ。”
”うん、楽しみにしてるね。”
そんなやり取りしてから携帯を閉じた。

瑠衣も夏休みで帰省しているし、いい機会かなと思ったのだ。
瑠衣とはメールと電話で連絡は取り合っていた。その時に結芽の事を話したら、今度帰った時に会わせて欲しいと言われていたのだ。

いつその機会を作ろうかと思案していたので丁度良かった。
瑠衣にも連絡して都合を聞かないと。また携帯電話に手を伸ばし電話した。
「もしもし、明日香。どうしたの?!」
「瑠衣、今結芽から一週間後に帰ってくるって連絡あったんだ。で、瑠衣が会いたいって言ってたから休み中に会わない?」
「私はいつでもいいから。その子の都合に合わせて。」
「分かった。じゃ、また連絡するね。」
「うん。それから、ひとつ確認したいけど、結芽ちゃん(て、呼んで良いよね?)は颯さんの事知っているの?!」
「ううん。まだ話してないんだけど、どう話していいのか分からなくて。ただね、この間結芽が魔物に取り憑かれてしまった時家に泊まりに来てもらったんだ。その時に、もしかしたら颯さんの姿を目撃したかもしれない。」
「そうなんだ。じゃ、私に良い考えがあるけど。」
「え?!どんな事?」
「うん。あのね。#%$#・・・」
「えぇ?!」
「明日香の家、お寺だし、丁度いいと思うけどね。」と悪戯っぽい声音が聞こえた。


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彼女は幼少期に受けた虐待のせいで、かなり警戒心が強く、心を許した相手以外はあまり笑顔を見せないし、無口。私達家族とは物凄く喋るし、よく笑うからそんなギャップに戸惑うこともある。

色白で切れ長の目元が知的で美しい分、冷たい印象に見えてしまい、誤解され敬遠されてしまうこともある。だから彼女が都会の大学へ行くと聞いたときは、彼女の事情を知る人などいないから、また傷付くことがあるかもしれないと思い非常に心配した。そして彼女に私の思いを話してみた。

すると、「それ、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんにも言われたし反対された。でもね、自分の人生だから自分で道を切り開かなきゃいけないと思ったのよね。本音を言えば怖いけど、どんな未来が来ても受け入れられるように一歩踏み出して、人生という旅の訓練(?!)みたいな事をしなきゃいけないって思ったから。だから大丈夫だよ。」そう言ってほほ笑んだその瞳の奥には強い意志が宿っていた。

「そっか。そう決めたんなら応援する。瑠衣、強くなったんだね。」
「明日香が友達になってくれたからそう思えるようになったんだよ。それに明日香は私なんか足元にも寄れない、凄い事してるじゃない。普通じゃ考えられないような運命を背負っているしね。だから私も明日香に恥じないように頑張らなきゃって思ったんだよね。」

そんな瑠衣の言葉に私は胸が熱くなり、改めて生涯の友だと実感したのだった。

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そんな彼女が自分から結芽に会いたいと言ったときは吃驚した反面、何故か、いつか会いたいと言ってくるかも・・という気もしていた。


私にとって瑠衣はかけがえのない友人で、瑠衣にとっても私はきっと大切な友人だと感じていると思う。
だから結芽の事を知りたいと思ったのかもしれない。



そして、結芽が実家から帰ってきた2日後、家に来ることになった。