穏やかな一日 其の三

今日は春の日差しがとても暖かい。こんな穏やかな日は野草を摘みに行きたくなる。
道端に何気なく生えている草にも食べられるものは沢山あるのだ。

近くの田んぼに行こうと思って魚籠(びく)と鎌を持って出掛けようとしたら颯さんが声を掛けてきた。
「どこに行くの?!」
「近くの田んぼで野草摘もうと思って。」
「そうか。ならば私も行こう。」
「いいんですか?」
「うん。大丈夫。」

何だかすごく嬉しくて、ウキウキしてしまった。

近所には見渡す限り田んぼが広がっている。
水田になるまでの間、田んぼにはいろんな野草が生えている。

土手にはヨモギ、フキノトウ、ノビル。田んぼにはナズナ、タンポポ、セリが山ほど生えてる。
夕飯は野草祭りだあ!とにやにやしながら採っていた。
あ、でも颯さんは野草なんて食べないよね・・・。
なんて思っていたら、「美味しそうな野草ばかりだね。今夜が楽しみだ。」と言ってくれた。
「野草食べられるんですか?」
「うん、食べるよ。肉ばかりじゃ胃がもたれちゃうしね。」と冗談とも本気とも取れる声で言った。
「そうなんですね。じゃ、今夜はオール野草料理です!」

という事で、ヨモギは鶏肉やニンジンと一緒に炊き込みご飯とてんぷら、フキノトウはてんぷらとフキ味噌、ナズナとタンポポの葉はおひたし、タンポポの根は炒ってコーヒー、セリとノビルは酢味噌和えとなった。夕飯は見事に野草料理で埋まったのだった。