「さぁ、湖の魔物駆除作戦を開始しましょう!」
改善点の修正により、ようやく水中戦闘用の人形が完成した。
エトーレの作りだした布は、動物の皮を使った製品なんかとは比べ物にならないくらい性能が良く、人形の泳ぎがかなり改善された。
水の抵抗を少しでも減らそうと、最終的には全身のほとんどをこれで覆う形になっている。
頭の部分も少々改良し、イルカのような形へと作り変えた。
「これが……?」
「最初のマーマンのイメージからは変わっちゃいましたね……」
「マーマンというより、イルカに手の生えた人形といった感じだな……」
今回も湖の調査に同行してきたガイオは、前回聞いていたのとは違うイメージに出来上がった人形を見て唖然としながら呟いた。
レオも最初は男性人魚のマーマンをイメージしていたのだが、作り変えて行くうちにイルカに近い形へと変化してしまったのだから言いたいことはわかる。
尾がイルカのフィンなら、頭の方もそれにした方が良いのではないかと作り変えたら、思った通りスムーズに移動できるようになったので、こうするより仕方がなかった。
魚のような頭というのも考えたが、何だか愛着が持てなさそうなのでイルカにしたというのも理由の1つだ。
「見た目はともかく、海での実験は成功しているので、湖ならもっと早く泳げるかもしれないですね」
見た目は最初とは変わったが、泳ぎ自体は問題なくなった。
湖で試す前に海での実験をおこなったが、最初の失敗が嘘のように素早い動きができるようになっていた。
やはり何といってもエトーレのお陰だろう。
水の抵抗を減らせるということを知って、服屋の主人には水着の製作用に作ってくれと頼まれていたため、エトーレには無理しない程度に頑張るように言ってある。
「10体だけで大丈夫か?」
「もっと増やす予定ですが、無理せず少しずつ魔物を減らせる数と考えると、まずはこれくらいかと……」
ガイオの言うように、出来上がった人形たちは10体。
湖の大きさを考えると、少し物足りなく感じるかもしれない。
しかし、どんな水生魔物がいるのかも分からないし、一気に全部というのは無理がある。
島の開拓と同様に、地道にコツコツが成功の近道だと考えると、まずはこの数から始めることにした。
それに、陸地戦闘用の人形とは違い、まだ作り慣れていないこの人形を作るのにはまだ多少時間がかかる。
なので、数体ができたら随時増やしていくつもりだ。
「それに、最初の内は岸付近の魔物を退治してもらうつもりです」
「何でだ?」
「岸に近付ければ、ロイたちの援護も得られますから」
「そういや、そうか……」
10体ではもしかしたら倒すのが難しい魔物もいるかもしれない。
そのため、いつでも逃げ帰れる程度の距離から魔物退治を始めてもらうつもりだ。
理由はそれだけではなく、岸付近にはロイたち陸上班が待機している。
陸上班が戦闘中でなければ魔法などで援護することも出来るため、彼らの援護を受けつつ戦えるためにも岸付近から始めてもらうのだ。
「盾4の槍6? 随分防御重視だな?」
マーマン型人形からイルカ型人形へと変わったが、戦闘用に作られた人形だ。
当然武器が必要となる。
彼らに持たせたのは盾と槍で、表面が金属で裏が木製となるべく軽量した丸盾を装備したのが4体。
円錐状の刺突型の槍、いわゆるランスと呼ばれる形状の槍を持ったのが6体だ。
武器に関しては特に文句はないが、ガイオが言うように盾4体は防御を重視し過ぎなように思える。
「水中での戦いとなると、泳ぎの速度を利用しての刺突攻撃がメインです。中にはちょっと刺しただけでは死なないのもいるかもしれないので、まずは防御重視で敵の攻撃を防ぐのを優先させます」
「なるほど……」
水中の魔物の種類は、調査がしにくいことから陸の魔物よりも知られていない。
毎年のように魔物の新種が発見されているが、大体は水中の魔物の割合が高い。
つまりは、未知の魔物も多いということなので、戦闘するのにもどんな攻撃をしてくるか分からない。
しかも、水生魔物といっても魚類系だけでなく虫系統の魔物もなかにはいる。
そういった場合、1回、2回刺しても死なない可能性もあるため、まずは防御で様子を見るためにも盾持ちを多くしているのが理由だ。
「魔物の退治と並行に、水深や生体の調査もおこなってもらうつもりです」
湖水浴場とするにしても、あまり深いようなら整備なども考えないといけない。
その場合、整備規模など次第では近くに人工的な施設を作ってしまうという策も考えられる。
どちらにしても、調査全般もおこなってもらうつもりだ。
「そういや、前回の魚は美味かったからな」
「はい。クオーレたちも気にいってました」
前回レオはたいして釣れなかったが、ガイオは4匹釣っていた。
レオの従魔たちも気にいっていたが、町の治安維持をおこなう領兵の宿舎で分け合った料理を食べたガイオも、ここの魚はかなり気にいったようだ。
そのため、他にも美味そうな魚でもいないか期待しているようだ。
レオとしても島の食材として売りにできるかもしれないため、大量に生息しているということを期待している。
「魔物でも食えるんならありなんだがな……」
「そうですね。そういうのが多ければ釣り場として開発するのも良いですね」
魔物の肉でも、毒さえなければ食材として利用できるのは分かっている。
魚類系の魔物も食べられるのだが、見た目がグロいものばかりだ。
ただ、見た目が悪いからといっても中身は美味かったりするので、調理してみないと何とも言えないところが多い。
もし魔物でも食材として利用できるものが存在していたら、その魔物は残すということもあり得る。
その場で食べるというのも釣りの醍醐味といえるので、釣り場としての開発を視野に入れておいてもいいかもしれない。
「そういや、ロイも強化完了したのか?」
「えぇ、パーツを付け替えた感じなので、そこまで時間はかからなかったです」
フェリーラ領の盗賊退治に利用した強化型の人形たち。
見た目は初期のロイたちと変わりはない。
ただ、全身の中心部を鉄製に変えたことで、防御力が向上した。
それ自体は鉄が採取できた頃から考えていたことだが、大量には取れないので地道にパーツ部分を作ることしかできなかったが、組み立てと実戦投入も成功したので、ロイたち初期人形たちにも同じような強化を施すことにした。
「魔石の内蔵も施しているので、稼働時間もだいぶ伸びました」
「……ますます恐ろしい集団になっちまったな」
盗賊退治に使った人形に施した細工はそれだけではない。
ロイたちが行動する持続時間の向上もできないかと考えた時、レオは魔石を使うことを思いついた。
魔石は魔物から取れて、そこに内包されている魔力を電池代わりに使って魔道具などを使用している。
魔力を使い終わればすぐに買い替えるということはなく、魔力を注ぎ込めば数回は再利用可能だ。
そのことを人形たちに利用すれば、最初に与えられた魔力だけでなくても動き続けることができるのではないかと考えたのだ。
背中部分に、空の魔石へレオの魔力を補充したものを設置してみたところ、実験は成功した。
持続時間が長くなったということは、使える魔力も増えたことになり、全魔力を使っての強力な一撃が必殺技になりつつある。
1体だけならまだしも、それを数十体に同時に向けられた時のことを考えると、ガイオですら気分が良くない。
「早速調査兼討伐を任せて、僕たちは帰りましょうか?」
「あぁ」
色々と話したが、レオたちは結果を待つだけだ。
ロイたちもいることだし、ここはイルカ型人形たちに任せ、レオたちは数日後に様子を確認しにくることにした。
改善点の修正により、ようやく水中戦闘用の人形が完成した。
エトーレの作りだした布は、動物の皮を使った製品なんかとは比べ物にならないくらい性能が良く、人形の泳ぎがかなり改善された。
水の抵抗を少しでも減らそうと、最終的には全身のほとんどをこれで覆う形になっている。
頭の部分も少々改良し、イルカのような形へと作り変えた。
「これが……?」
「最初のマーマンのイメージからは変わっちゃいましたね……」
「マーマンというより、イルカに手の生えた人形といった感じだな……」
今回も湖の調査に同行してきたガイオは、前回聞いていたのとは違うイメージに出来上がった人形を見て唖然としながら呟いた。
レオも最初は男性人魚のマーマンをイメージしていたのだが、作り変えて行くうちにイルカに近い形へと変化してしまったのだから言いたいことはわかる。
尾がイルカのフィンなら、頭の方もそれにした方が良いのではないかと作り変えたら、思った通りスムーズに移動できるようになったので、こうするより仕方がなかった。
魚のような頭というのも考えたが、何だか愛着が持てなさそうなのでイルカにしたというのも理由の1つだ。
「見た目はともかく、海での実験は成功しているので、湖ならもっと早く泳げるかもしれないですね」
見た目は最初とは変わったが、泳ぎ自体は問題なくなった。
湖で試す前に海での実験をおこなったが、最初の失敗が嘘のように素早い動きができるようになっていた。
やはり何といってもエトーレのお陰だろう。
水の抵抗を減らせるということを知って、服屋の主人には水着の製作用に作ってくれと頼まれていたため、エトーレには無理しない程度に頑張るように言ってある。
「10体だけで大丈夫か?」
「もっと増やす予定ですが、無理せず少しずつ魔物を減らせる数と考えると、まずはこれくらいかと……」
ガイオの言うように、出来上がった人形たちは10体。
湖の大きさを考えると、少し物足りなく感じるかもしれない。
しかし、どんな水生魔物がいるのかも分からないし、一気に全部というのは無理がある。
島の開拓と同様に、地道にコツコツが成功の近道だと考えると、まずはこの数から始めることにした。
それに、陸地戦闘用の人形とは違い、まだ作り慣れていないこの人形を作るのにはまだ多少時間がかかる。
なので、数体ができたら随時増やしていくつもりだ。
「それに、最初の内は岸付近の魔物を退治してもらうつもりです」
「何でだ?」
「岸に近付ければ、ロイたちの援護も得られますから」
「そういや、そうか……」
10体ではもしかしたら倒すのが難しい魔物もいるかもしれない。
そのため、いつでも逃げ帰れる程度の距離から魔物退治を始めてもらうつもりだ。
理由はそれだけではなく、岸付近にはロイたち陸上班が待機している。
陸上班が戦闘中でなければ魔法などで援護することも出来るため、彼らの援護を受けつつ戦えるためにも岸付近から始めてもらうのだ。
「盾4の槍6? 随分防御重視だな?」
マーマン型人形からイルカ型人形へと変わったが、戦闘用に作られた人形だ。
当然武器が必要となる。
彼らに持たせたのは盾と槍で、表面が金属で裏が木製となるべく軽量した丸盾を装備したのが4体。
円錐状の刺突型の槍、いわゆるランスと呼ばれる形状の槍を持ったのが6体だ。
武器に関しては特に文句はないが、ガイオが言うように盾4体は防御を重視し過ぎなように思える。
「水中での戦いとなると、泳ぎの速度を利用しての刺突攻撃がメインです。中にはちょっと刺しただけでは死なないのもいるかもしれないので、まずは防御重視で敵の攻撃を防ぐのを優先させます」
「なるほど……」
水中の魔物の種類は、調査がしにくいことから陸の魔物よりも知られていない。
毎年のように魔物の新種が発見されているが、大体は水中の魔物の割合が高い。
つまりは、未知の魔物も多いということなので、戦闘するのにもどんな攻撃をしてくるか分からない。
しかも、水生魔物といっても魚類系だけでなく虫系統の魔物もなかにはいる。
そういった場合、1回、2回刺しても死なない可能性もあるため、まずは防御で様子を見るためにも盾持ちを多くしているのが理由だ。
「魔物の退治と並行に、水深や生体の調査もおこなってもらうつもりです」
湖水浴場とするにしても、あまり深いようなら整備なども考えないといけない。
その場合、整備規模など次第では近くに人工的な施設を作ってしまうという策も考えられる。
どちらにしても、調査全般もおこなってもらうつもりだ。
「そういや、前回の魚は美味かったからな」
「はい。クオーレたちも気にいってました」
前回レオはたいして釣れなかったが、ガイオは4匹釣っていた。
レオの従魔たちも気にいっていたが、町の治安維持をおこなう領兵の宿舎で分け合った料理を食べたガイオも、ここの魚はかなり気にいったようだ。
そのため、他にも美味そうな魚でもいないか期待しているようだ。
レオとしても島の食材として売りにできるかもしれないため、大量に生息しているということを期待している。
「魔物でも食えるんならありなんだがな……」
「そうですね。そういうのが多ければ釣り場として開発するのも良いですね」
魔物の肉でも、毒さえなければ食材として利用できるのは分かっている。
魚類系の魔物も食べられるのだが、見た目がグロいものばかりだ。
ただ、見た目が悪いからといっても中身は美味かったりするので、調理してみないと何とも言えないところが多い。
もし魔物でも食材として利用できるものが存在していたら、その魔物は残すということもあり得る。
その場で食べるというのも釣りの醍醐味といえるので、釣り場としての開発を視野に入れておいてもいいかもしれない。
「そういや、ロイも強化完了したのか?」
「えぇ、パーツを付け替えた感じなので、そこまで時間はかからなかったです」
フェリーラ領の盗賊退治に利用した強化型の人形たち。
見た目は初期のロイたちと変わりはない。
ただ、全身の中心部を鉄製に変えたことで、防御力が向上した。
それ自体は鉄が採取できた頃から考えていたことだが、大量には取れないので地道にパーツ部分を作ることしかできなかったが、組み立てと実戦投入も成功したので、ロイたち初期人形たちにも同じような強化を施すことにした。
「魔石の内蔵も施しているので、稼働時間もだいぶ伸びました」
「……ますます恐ろしい集団になっちまったな」
盗賊退治に使った人形に施した細工はそれだけではない。
ロイたちが行動する持続時間の向上もできないかと考えた時、レオは魔石を使うことを思いついた。
魔石は魔物から取れて、そこに内包されている魔力を電池代わりに使って魔道具などを使用している。
魔力を使い終わればすぐに買い替えるということはなく、魔力を注ぎ込めば数回は再利用可能だ。
そのことを人形たちに利用すれば、最初に与えられた魔力だけでなくても動き続けることができるのではないかと考えたのだ。
背中部分に、空の魔石へレオの魔力を補充したものを設置してみたところ、実験は成功した。
持続時間が長くなったということは、使える魔力も増えたことになり、全魔力を使っての強力な一撃が必殺技になりつつある。
1体だけならまだしも、それを数十体に同時に向けられた時のことを考えると、ガイオですら気分が良くない。
「早速調査兼討伐を任せて、僕たちは帰りましょうか?」
「あぁ」
色々と話したが、レオたちは結果を待つだけだ。
ロイたちもいることだし、ここはイルカ型人形たちに任せ、レオたちは数日後に様子を確認しにくることにした。