「美味しいかい?」
「ニャ~♪」「♪」
出された魚料理を喜んで食べるレオの従魔のクオーレとエトーレ。
発見した湖で、レオが釣ってきた魚を調理したものだ。
魚なら海水、淡水に関わらず好きな2匹は、この魚もお気に召したようで、一心不乱といった感じで食べている。
ある程度食べた所でレオが問いかけると、嬉しそうな返事をしてきた。
「喜んでもらえてよかったよ。結構大きな魚でよかった」
釣れたのは1匹だけでどうしたものかと思っていたのだが、大きさ的にはかなりのものがあったので、半分ずつでも結構な量になっている。
レオも料理の味見として少しだけ食べたが、捌いた時の身の色などから恐らくマスの一種なのではないかと思う。
「これが釣れるんなら、余計にあの湖から魔物を駆除しないとだめだな……」
これだけの魚が頻繁に一定量手に入れられるとなると、食料として期待できる。
そうなると、この魚を守るためにもレオは魔物の駆除を急がないといけないと思った。
「試作品マーマン型人形です!」
「……随分早くできたな」
レオの出した試作品を見て、エドモンドは仕事の速さに感心した。
出された人形は最初にイメージしたものとは少々違うが、エドモンドの助言を受けた試作品がひとまず完成した。
上半身はロイたちと同じような木製の人間型で、魔物の皮を使って柔軟性を持たせた下半身を装着したものだ。
元々上半身部分はストックがあるので、それを利用しただけで時間がかかっていない。
時間を使用したのは、下半身部分の骨格を作ることくらいだろう。
「では試してみましょう!」
「……陸での戦闘は無理だな」
湖での実戦を前に、近くの海で泳ぎがどれほどのものか試作品を試してみることにした。
砂浜に出したマーマン型人形に魔力を込めてスキルを発動したのだが、なかなか海へと入って行かない。
というのも、陸だと立っていられないのか、両手を使って進んで行くためだいぶ遅いのだ。
その時点で、エドモンドはこの人形の陸地戦闘は諦めていた。
レオもその点については同意する。
しかし、陸はロイたちがいるので充分。
元々水中戦闘を任せるために作ったので、問題は水中での泳ぎがどんなものかだ。
「泳げているけどそんなに速くないですね?」
少し時間がかかったが、マーマン型人形が海中へと入って行く。
そして、近くを泳いでもらって動きを確認していると、そんなに速くない泳ぎに不満を呟いた。
魚のように左右に尾を振って泳ぐのではなく、イルカのように上下へ動かして推進力を付けるというように作ったつもりだ。
しかし、その推進力がいまいちで、普通に人間が泳ぐのと大差ない速度しか出ていないようだ。
「問題は素材だな」
「素材ですか?」
泳ぎが悪い原因を探そうとしていたレオより先に、エドモンドが原因となるものに気付いていた。
それが今回使った素材なのだそうだ。
「皮は皮でも、陸の生物の皮よりも水中の生物の皮を使った方が良いかもしれないな」
「なるほど」
言われて気が付いた。
水を弾くかと思って、オイルを塗った皮を使って下半身部分を作り上げたのだが、それが水を吸ってしまっているのか重そうに感じる。
それで無駄に力がかかって、泳ぎが鈍い原因になっているようだ。
ありあわせの素材を使い、突貫で作ったことが完全に失敗したということになる。
「水生の動物や魔物となると、ワニやサメとかの皮を使うのが良いですかね」
水の中の生物と考えると、レオがまず浮かんだのはワニやサメだ。
大きい個体の皮なら、この人形を作るのには充分だ。
「どちらでも防御力としても期待できるが、泳ぎのことを考えるとサメの方が良いんじゃないか?」
「……たしかにそうですね」
ワニでもサメでも頑丈そうで戦闘面することも考えると適しているように思えるが、エドモンドの言うように、泳ぎの速さを考えるとなんとなくサメの方が良い気がした。
「上半身も作り変えた方が良いですかね?」
「う~ん、水の抵抗を考えると上半身の素材も考えないといけないが、戦闘を考えるとあまり変えなくても良いような気もするしな……」
下半身部分に問題があったのは分かったが、上半身部分はどうだろうかとレオは問いかける。
それに対し、エドモンドは悩まし気な口調で答えを返してきた。
素材が木なのでこちらも水を吸ってしまい重くなる。
しかし、使っている木を考えると、そこまで重くなるようなものではないため、変更する必要性も感じられない。
そのため、変えるべきか変えざるべきか迷う所なのだろう。
「強いて変えるなら、もう少し水の抵抗を抑える形にするくらいかもな」
「あぁ、水中生物はだいたいそうですもんね」
水中で人間の形をした頭をしていると、水の抵抗で推進力を阻害してしまう。
そのため、泳ぐうえで抵抗を減らした形へと変えた方が良いのではないかということだ。
正面から見たら、魚も口から頭へと水が流れるような形になっている。
陸地での戦闘は無理っぽいので、どうせなら形もそのようにいじった方が良いかもしれない。
「改善点は多いですが、それさえ直せば何とかなりそうですね」
「そうだな。あとはまた改善してからだな」
「はい」
試作品は少々失敗だったが、改善点が見つかったので、レオは今後もこの路線のまま水中戦闘用の人形の製作を継続することにした。
「う~ん。サメの皮を大量に手に入れないとな……」
改善点も見つかり、自宅へ帰ったレオはすぐに人形作りをする工房へと向かった。
ここは人形の性能の向上や色々な試作品を作るために、後付けで建てたレオ専用の工房で、色々な工具や素材や試作品が所狭しと置かれている。
その工房で頭の部分を改良しながら、レオはサメの皮をどうやって入手するか考えていた。
単純に考えて、釣ったり獲ったりは難しいし危険だ。
なので、フェリーラ領で商会をしているアルヴァロに頼むのが一番早い。
元漁師ということもあり、たまたま漁に引っかかったサメの皮を手に入れるということも出来るのではないかと考えられた。
しかし、そう頻繁に引っかかる訳でもないので、量を求めると時間がかかってしまうのではないかと思えてきた。
「んっ? どうしたのエトーレ」
“スッ!”
サメの皮をどう手に入れるか考えていたレオのところへ、蜘蛛のエトーレが近寄ってきた。
何か用があるのかと思い手に乗せて問いかけると、エトーレがいつものとは違う布を取り出してきた。
「……何これ? エトーレが作ったの? 伸縮性もあって、つるつるしていて丈夫そうだけど……」
その布を受け取って近くのテーブルにエトーレを置くと、レオはその布の性能を確認し始めた。
どうやらエトーレが作った布らしく、若干の収縮性と耐久性が感じられる良い布だとは思える。
しかし、この布を渡してきた意味がよく分からない。
“スッ!”
「……もしかしてこれを下半身部分に使ったらどうかって事?」
“コクッ!”
首を傾げているレオに、エトーレは前足で製作中のマーマン型人形の下半身部分を指す。
それで何が言いたいかを理解したレオが問いかけると、エトーレは頷くような仕草で返答してきた。
「これ水にも強いの? おぉ!」
いい布だとは言っても、今欲しいのは水を弾くものだ。
試しに近くにあったバケツの水に浸して見た所、水を弾いてくれていた。
つるつるの触り心地は革のように思える。
とても糸を使って作ったとは思えないほどだ。
「すごいぞエトーレ! これで代用できるかもしれない!」
水を弾くならこれで下半身部分を作成できるかもしれない。
しかも、エトーレが作ってくれるのなら、1日1体分くらいはできそうだ。
たまに網にかかるサメを待つよりも計算しやすい。
しかも、タダ。
良いことずくめの提案に、嬉しくなったレオは思わずエトーレを撫でまわした。
エトーレも役に立てて何だか嬉しそうだ。
「じゃあ、エトーレはこの布の作成を頼むね。湖の魔物を倒せたら、あのマスの魚をいっぱいあげるからね」
“コクッ! コクッ!”
これで代用して成功すれば、エトーレのお陰という部分が大きい。
そのため、レオはお礼にと言っては何だが、あの釣ってきた魚をあげることを約束した。
美味しかった魚を、しかもいっぱいもらえると聞いて、エトーレは嬉しそうに頷き返したのだった。
「ニャ~♪」「♪」
出された魚料理を喜んで食べるレオの従魔のクオーレとエトーレ。
発見した湖で、レオが釣ってきた魚を調理したものだ。
魚なら海水、淡水に関わらず好きな2匹は、この魚もお気に召したようで、一心不乱といった感じで食べている。
ある程度食べた所でレオが問いかけると、嬉しそうな返事をしてきた。
「喜んでもらえてよかったよ。結構大きな魚でよかった」
釣れたのは1匹だけでどうしたものかと思っていたのだが、大きさ的にはかなりのものがあったので、半分ずつでも結構な量になっている。
レオも料理の味見として少しだけ食べたが、捌いた時の身の色などから恐らくマスの一種なのではないかと思う。
「これが釣れるんなら、余計にあの湖から魔物を駆除しないとだめだな……」
これだけの魚が頻繁に一定量手に入れられるとなると、食料として期待できる。
そうなると、この魚を守るためにもレオは魔物の駆除を急がないといけないと思った。
「試作品マーマン型人形です!」
「……随分早くできたな」
レオの出した試作品を見て、エドモンドは仕事の速さに感心した。
出された人形は最初にイメージしたものとは少々違うが、エドモンドの助言を受けた試作品がひとまず完成した。
上半身はロイたちと同じような木製の人間型で、魔物の皮を使って柔軟性を持たせた下半身を装着したものだ。
元々上半身部分はストックがあるので、それを利用しただけで時間がかかっていない。
時間を使用したのは、下半身部分の骨格を作ることくらいだろう。
「では試してみましょう!」
「……陸での戦闘は無理だな」
湖での実戦を前に、近くの海で泳ぎがどれほどのものか試作品を試してみることにした。
砂浜に出したマーマン型人形に魔力を込めてスキルを発動したのだが、なかなか海へと入って行かない。
というのも、陸だと立っていられないのか、両手を使って進んで行くためだいぶ遅いのだ。
その時点で、エドモンドはこの人形の陸地戦闘は諦めていた。
レオもその点については同意する。
しかし、陸はロイたちがいるので充分。
元々水中戦闘を任せるために作ったので、問題は水中での泳ぎがどんなものかだ。
「泳げているけどそんなに速くないですね?」
少し時間がかかったが、マーマン型人形が海中へと入って行く。
そして、近くを泳いでもらって動きを確認していると、そんなに速くない泳ぎに不満を呟いた。
魚のように左右に尾を振って泳ぐのではなく、イルカのように上下へ動かして推進力を付けるというように作ったつもりだ。
しかし、その推進力がいまいちで、普通に人間が泳ぐのと大差ない速度しか出ていないようだ。
「問題は素材だな」
「素材ですか?」
泳ぎが悪い原因を探そうとしていたレオより先に、エドモンドが原因となるものに気付いていた。
それが今回使った素材なのだそうだ。
「皮は皮でも、陸の生物の皮よりも水中の生物の皮を使った方が良いかもしれないな」
「なるほど」
言われて気が付いた。
水を弾くかと思って、オイルを塗った皮を使って下半身部分を作り上げたのだが、それが水を吸ってしまっているのか重そうに感じる。
それで無駄に力がかかって、泳ぎが鈍い原因になっているようだ。
ありあわせの素材を使い、突貫で作ったことが完全に失敗したということになる。
「水生の動物や魔物となると、ワニやサメとかの皮を使うのが良いですかね」
水の中の生物と考えると、レオがまず浮かんだのはワニやサメだ。
大きい個体の皮なら、この人形を作るのには充分だ。
「どちらでも防御力としても期待できるが、泳ぎのことを考えるとサメの方が良いんじゃないか?」
「……たしかにそうですね」
ワニでもサメでも頑丈そうで戦闘面することも考えると適しているように思えるが、エドモンドの言うように、泳ぎの速さを考えるとなんとなくサメの方が良い気がした。
「上半身も作り変えた方が良いですかね?」
「う~ん、水の抵抗を考えると上半身の素材も考えないといけないが、戦闘を考えるとあまり変えなくても良いような気もするしな……」
下半身部分に問題があったのは分かったが、上半身部分はどうだろうかとレオは問いかける。
それに対し、エドモンドは悩まし気な口調で答えを返してきた。
素材が木なのでこちらも水を吸ってしまい重くなる。
しかし、使っている木を考えると、そこまで重くなるようなものではないため、変更する必要性も感じられない。
そのため、変えるべきか変えざるべきか迷う所なのだろう。
「強いて変えるなら、もう少し水の抵抗を抑える形にするくらいかもな」
「あぁ、水中生物はだいたいそうですもんね」
水中で人間の形をした頭をしていると、水の抵抗で推進力を阻害してしまう。
そのため、泳ぐうえで抵抗を減らした形へと変えた方が良いのではないかということだ。
正面から見たら、魚も口から頭へと水が流れるような形になっている。
陸地での戦闘は無理っぽいので、どうせなら形もそのようにいじった方が良いかもしれない。
「改善点は多いですが、それさえ直せば何とかなりそうですね」
「そうだな。あとはまた改善してからだな」
「はい」
試作品は少々失敗だったが、改善点が見つかったので、レオは今後もこの路線のまま水中戦闘用の人形の製作を継続することにした。
「う~ん。サメの皮を大量に手に入れないとな……」
改善点も見つかり、自宅へ帰ったレオはすぐに人形作りをする工房へと向かった。
ここは人形の性能の向上や色々な試作品を作るために、後付けで建てたレオ専用の工房で、色々な工具や素材や試作品が所狭しと置かれている。
その工房で頭の部分を改良しながら、レオはサメの皮をどうやって入手するか考えていた。
単純に考えて、釣ったり獲ったりは難しいし危険だ。
なので、フェリーラ領で商会をしているアルヴァロに頼むのが一番早い。
元漁師ということもあり、たまたま漁に引っかかったサメの皮を手に入れるということも出来るのではないかと考えられた。
しかし、そう頻繁に引っかかる訳でもないので、量を求めると時間がかかってしまうのではないかと思えてきた。
「んっ? どうしたのエトーレ」
“スッ!”
サメの皮をどう手に入れるか考えていたレオのところへ、蜘蛛のエトーレが近寄ってきた。
何か用があるのかと思い手に乗せて問いかけると、エトーレがいつものとは違う布を取り出してきた。
「……何これ? エトーレが作ったの? 伸縮性もあって、つるつるしていて丈夫そうだけど……」
その布を受け取って近くのテーブルにエトーレを置くと、レオはその布の性能を確認し始めた。
どうやらエトーレが作った布らしく、若干の収縮性と耐久性が感じられる良い布だとは思える。
しかし、この布を渡してきた意味がよく分からない。
“スッ!”
「……もしかしてこれを下半身部分に使ったらどうかって事?」
“コクッ!”
首を傾げているレオに、エトーレは前足で製作中のマーマン型人形の下半身部分を指す。
それで何が言いたいかを理解したレオが問いかけると、エトーレは頷くような仕草で返答してきた。
「これ水にも強いの? おぉ!」
いい布だとは言っても、今欲しいのは水を弾くものだ。
試しに近くにあったバケツの水に浸して見た所、水を弾いてくれていた。
つるつるの触り心地は革のように思える。
とても糸を使って作ったとは思えないほどだ。
「すごいぞエトーレ! これで代用できるかもしれない!」
水を弾くならこれで下半身部分を作成できるかもしれない。
しかも、エトーレが作ってくれるのなら、1日1体分くらいはできそうだ。
たまに網にかかるサメを待つよりも計算しやすい。
しかも、タダ。
良いことずくめの提案に、嬉しくなったレオは思わずエトーレを撫でまわした。
エトーレも役に立てて何だか嬉しそうだ。
「じゃあ、エトーレはこの布の作成を頼むね。湖の魔物を倒せたら、あのマスの魚をいっぱいあげるからね」
“コクッ! コクッ!”
これで代用して成功すれば、エトーレのお陰という部分が大きい。
そのため、レオはお礼にと言っては何だが、あの釣ってきた魚をあげることを約束した。
美味しかった魚を、しかもいっぱいもらえると聞いて、エトーレは嬉しそうに頷き返したのだった。