「ニャ~!」
“ポスッ! ポスッ!”
「……ん? あぁ……おはようクオーレ!」
柔らかい感触によってレオは目を覚ました。
相変わらずクオーレの肉球スタンプによる目覚ましによって起こされている。
もうこれがレオにとっての習慣と言って良いだろう。
夜行性のため朝まで起きていることが多いクオーレも、レオを起こすのが日課になっているようだ。
「おはよう。エトーレ!」
“スッ!”
起こしてくれたお礼にクオーレの頭を撫でてあげた後、レオはベッドから起きてもう1匹の従魔の所へ向かう。
レオが朝の挨拶をすると、蜘蛛のエトーレはいつものように前足の片方を上げて返事をしてきた。
その反応が面白く、レオはエトーレのことも撫でてあげた。
そして、ふとエトーレはいつ寝ているのか気になった。
しかし、夜寝る時に見ると動かないでいる時があるため、レオは夜寝ているのだろうと思うことにした。
「さてと、今日も1日がんばりますか!」
フェリーラ領のことがひとまず解決し、レオは島へと戻ってきた。
今日からはまた島の開拓や畑仕事などをして、のんびり過ごすつもりだ。
のんびりと言っても、レオにはやることはある。
人形たちによる開拓作業の進展具合の確認だ。
「レオ!」
「どうしました? ガイオさん」
進展の確認に行こうとしていたレオに対し、ガイオが待ったをかけるように呼び止めてきた。
レオがフェリーラ領の問題を解決するために出ていた間、ロイたちには継続して魔物退治を頼んでいた。
レオがいない間、ガイオにはロイたちの監督役を任せていたので、何か報告でもあるのだろうか。
「お前が島から出ている時、ロイたちの班と湖を見つけたんだ」
「湖……ですか?」
「あぁ」
レオが島から出ている間に、ロイを主軸とした人形たちに付いて行ったガイオが湖を発見するに至った。
とりあえず発見したはいいが、折角なら領主であるレオも確認した方が良いと思い、ガイオはその周辺や湖の調査はひとまず中断していた。
レオも帰ってきたことだし、魔物討伐の進展具合を見に行くというのなら、折角だからその湖から見てもらうことにした。
「ロイが進めていたのは南南西の方角ですね?」
「あぁ、あそこら辺はやたらと鳥系の魔物が出るんで変に思っていたんだが、どうやらその湖が目的なのかもしれない」
「鳥系の魔物ですか……」
ロイ、オル、ドナ、ラグの初期4体は、今ではそれぞれが多くの人形兵たちを従えて開拓のための魔物討伐をおこなっている。
西、西南西、南西、南南西の4方向へ向けて少しずつ進攻しているのだが、ロイに向かわせていたのは南南西の方角だ。
いつも帰ってくると、ロイたちの部隊は鳥肉を仕入れて来ていた。
それが毎日続いたので、何か鳥の魔物が多くいる理由でもあるのかと、ガイオはロイたちに付いて行くことにし、そこで発見したのが湖なのだそうだ。
「もしもそこの湖が綺麗なら、貯水池として使えるかもしれないですね。夏には湖水浴場と言う手もありますね!」
「湖水浴場?」
開拓作業も進み、少しずつ住人は増えてきている。
畑に使う水も近くの川だけでは足りなくなるかもしれないため、どこかに水場を確保するものを造ろうかと考えてもいた。
しかし、湖があるというなら、それを利用するのが手っ取り早いため、そこを貯水池代わりに使うのが良いとレオは考えた。
水があるなら作物を育てるのに使えるため、ガイオも貯水池と言う考えは分からなくも無い。
だが、聞きなれない言葉が出たため、ガイオは首柄を傾げつつその説明を求めた。
「はい。湖水浴は、そのまま海水浴の湖版です。海の場合波が荒れたりしますが、湖ならそんな事はありません。その分安全に水遊びができると思うんですよ!」
「……たしかに良いな」
海賊狩りなどと言う事を以前はおこなっていたガイオ。
そのため、海の恐ろしさというものは理解している。
夏には波に呑まれて亡くなる人が必ず現れる。
そのことを考えると、確かに湖の方がまだ穏やかで事故に遭う確率は低くなる気がする。
レオの説明を聞き、ガイオは言葉の意味を理解した。
「そのうえ、淡水なら海水と違って泳いでもベタベタすることもないです」
「あぁ、なんとなくあれは嫌だからな」
夏の海水浴は気持ちいいが、ネックとなるのが海水によるベタつきだ。
あれがあるせいで、必ず水浴びをしないと気持ち悪くて仕方がない。
それが無いというのはたしかにいいかもしれない。
特に女性は、海水で髪がキシキシするのが嫌だという人が多い。
それがないのなら、もっと女性たちも泳ぐのを楽しめるかもしれない。
「早速調査に向かいましょう」
「おうっ! しかし、馬まで人形とはな……」
ロイの案内の下、レオはガイオと共に発見した湖へと向かうことにした。
移動手段はレオの作った馬型人形。
商会のアルヴァロを通して馬も手に入れてはいるが、まだ少数。
そのため、増えるまでの間はこの馬型人形を足としている。
開拓も広がり、離れた所へ向かう場合の足が市民にはないため、領の運営で町中の一定ルートに馬車を走らせるという考えが上がっている。
それをおこなうにも馬が増えるまでは無理なため、それまでは馬型人形で代用するつもりだ。
ちゃんと走るため文句はないが、ガイオはやはり馬型人形に違和感を抱いているようだ。
「この周辺ですね?」
「あぁ……」
馬型人形で数十分向かったところ、鳥系の魔物が現れ始めた。
とは言っても、魔法の指輪から出したロイの部下たちが発見次第弓で仕留めてしまうので、身を隠すだけでレオたちはすることがない。
大抵の鳥は食用として使えるので、仕留めた鳥は血抜きをして魔法の指輪に入れておく。
馬型人形は収納し、ここからは歩いて進むことにした。
「念のため出しておきましょう」
ここまで来られたのだから、ロイたちだけでも充分だとは思う。
しかし、どんな魔物がいるか分からないため、レオは自分たちの身を守るためにもう少し人形兵を出しておくことにした。
「これが新作の人形なのか?」
「はい。実験は予想通りの結果を出したので、安心してください」
フェリーラ領の盗賊相手にも優秀な成果を発揮した新型人形たちを見て、ガイオは興味深そうに呟く。
見た目はロイたちと同じだが、強化と活動時間の長期化に成功した人形だ。
彼らなら余程強力な魔物でも出ない限りは問題ないだろう。
「そのうち農業まで全部人形たちだけで出来るようになっちまうかもな」
「やろうと思えばできますけど、そんなことはやりませんね」
「何でだ?」
レオの人形は兵としても使えるが、多くの職場で人の代わりに働いている。
島に人は増えていっているといっても、人材不足の所は多々あるのでしょうがないことだ。
多くの人形を町中で発見すると、人が働かなくても良いのではないかと思えることがガイオにはあった。
その考えも分からなくはない。
人間は誰しも、大なり小なり怠けたいと思う気持ちを持っているものだ。
人形で足りるなら、人間が働かなくてもいいという思いが浮かんでくるのは当然だ。
全部人形が代わりに働くということも出来なくはないが、レオとしてはそうすることは反対だ。
「もしも、僕が死んだときに人形たちが動かなくなったら、もうその時点でこの島は終わりですからね。極力人間の力で発展させないと、そのしわ寄せは次の世代が被ることになってしまいますから」
「なるほど先の先を見ての考えか……」
人形ばかりに頼っていると、人形無しでは生きていけない島になってしまうかもしれない。
レオが生きている間はいいが、もしも死んでしまったら島の人間はそこから立て直すのにかなり苦労することになってしまう。
そうならないためにも必要最低限しか人形は使わず、出来る限り自分たち人間の力で島を発展させていくしかないとレオは思っている。
レオの未来を見据えた政策に、ガイオは納得して頷いた。
“ポスッ! ポスッ!”
「……ん? あぁ……おはようクオーレ!」
柔らかい感触によってレオは目を覚ました。
相変わらずクオーレの肉球スタンプによる目覚ましによって起こされている。
もうこれがレオにとっての習慣と言って良いだろう。
夜行性のため朝まで起きていることが多いクオーレも、レオを起こすのが日課になっているようだ。
「おはよう。エトーレ!」
“スッ!”
起こしてくれたお礼にクオーレの頭を撫でてあげた後、レオはベッドから起きてもう1匹の従魔の所へ向かう。
レオが朝の挨拶をすると、蜘蛛のエトーレはいつものように前足の片方を上げて返事をしてきた。
その反応が面白く、レオはエトーレのことも撫でてあげた。
そして、ふとエトーレはいつ寝ているのか気になった。
しかし、夜寝る時に見ると動かないでいる時があるため、レオは夜寝ているのだろうと思うことにした。
「さてと、今日も1日がんばりますか!」
フェリーラ領のことがひとまず解決し、レオは島へと戻ってきた。
今日からはまた島の開拓や畑仕事などをして、のんびり過ごすつもりだ。
のんびりと言っても、レオにはやることはある。
人形たちによる開拓作業の進展具合の確認だ。
「レオ!」
「どうしました? ガイオさん」
進展の確認に行こうとしていたレオに対し、ガイオが待ったをかけるように呼び止めてきた。
レオがフェリーラ領の問題を解決するために出ていた間、ロイたちには継続して魔物退治を頼んでいた。
レオがいない間、ガイオにはロイたちの監督役を任せていたので、何か報告でもあるのだろうか。
「お前が島から出ている時、ロイたちの班と湖を見つけたんだ」
「湖……ですか?」
「あぁ」
レオが島から出ている間に、ロイを主軸とした人形たちに付いて行ったガイオが湖を発見するに至った。
とりあえず発見したはいいが、折角なら領主であるレオも確認した方が良いと思い、ガイオはその周辺や湖の調査はひとまず中断していた。
レオも帰ってきたことだし、魔物討伐の進展具合を見に行くというのなら、折角だからその湖から見てもらうことにした。
「ロイが進めていたのは南南西の方角ですね?」
「あぁ、あそこら辺はやたらと鳥系の魔物が出るんで変に思っていたんだが、どうやらその湖が目的なのかもしれない」
「鳥系の魔物ですか……」
ロイ、オル、ドナ、ラグの初期4体は、今ではそれぞれが多くの人形兵たちを従えて開拓のための魔物討伐をおこなっている。
西、西南西、南西、南南西の4方向へ向けて少しずつ進攻しているのだが、ロイに向かわせていたのは南南西の方角だ。
いつも帰ってくると、ロイたちの部隊は鳥肉を仕入れて来ていた。
それが毎日続いたので、何か鳥の魔物が多くいる理由でもあるのかと、ガイオはロイたちに付いて行くことにし、そこで発見したのが湖なのだそうだ。
「もしもそこの湖が綺麗なら、貯水池として使えるかもしれないですね。夏には湖水浴場と言う手もありますね!」
「湖水浴場?」
開拓作業も進み、少しずつ住人は増えてきている。
畑に使う水も近くの川だけでは足りなくなるかもしれないため、どこかに水場を確保するものを造ろうかと考えてもいた。
しかし、湖があるというなら、それを利用するのが手っ取り早いため、そこを貯水池代わりに使うのが良いとレオは考えた。
水があるなら作物を育てるのに使えるため、ガイオも貯水池と言う考えは分からなくも無い。
だが、聞きなれない言葉が出たため、ガイオは首柄を傾げつつその説明を求めた。
「はい。湖水浴は、そのまま海水浴の湖版です。海の場合波が荒れたりしますが、湖ならそんな事はありません。その分安全に水遊びができると思うんですよ!」
「……たしかに良いな」
海賊狩りなどと言う事を以前はおこなっていたガイオ。
そのため、海の恐ろしさというものは理解している。
夏には波に呑まれて亡くなる人が必ず現れる。
そのことを考えると、確かに湖の方がまだ穏やかで事故に遭う確率は低くなる気がする。
レオの説明を聞き、ガイオは言葉の意味を理解した。
「そのうえ、淡水なら海水と違って泳いでもベタベタすることもないです」
「あぁ、なんとなくあれは嫌だからな」
夏の海水浴は気持ちいいが、ネックとなるのが海水によるベタつきだ。
あれがあるせいで、必ず水浴びをしないと気持ち悪くて仕方がない。
それが無いというのはたしかにいいかもしれない。
特に女性は、海水で髪がキシキシするのが嫌だという人が多い。
それがないのなら、もっと女性たちも泳ぐのを楽しめるかもしれない。
「早速調査に向かいましょう」
「おうっ! しかし、馬まで人形とはな……」
ロイの案内の下、レオはガイオと共に発見した湖へと向かうことにした。
移動手段はレオの作った馬型人形。
商会のアルヴァロを通して馬も手に入れてはいるが、まだ少数。
そのため、増えるまでの間はこの馬型人形を足としている。
開拓も広がり、離れた所へ向かう場合の足が市民にはないため、領の運営で町中の一定ルートに馬車を走らせるという考えが上がっている。
それをおこなうにも馬が増えるまでは無理なため、それまでは馬型人形で代用するつもりだ。
ちゃんと走るため文句はないが、ガイオはやはり馬型人形に違和感を抱いているようだ。
「この周辺ですね?」
「あぁ……」
馬型人形で数十分向かったところ、鳥系の魔物が現れ始めた。
とは言っても、魔法の指輪から出したロイの部下たちが発見次第弓で仕留めてしまうので、身を隠すだけでレオたちはすることがない。
大抵の鳥は食用として使えるので、仕留めた鳥は血抜きをして魔法の指輪に入れておく。
馬型人形は収納し、ここからは歩いて進むことにした。
「念のため出しておきましょう」
ここまで来られたのだから、ロイたちだけでも充分だとは思う。
しかし、どんな魔物がいるか分からないため、レオは自分たちの身を守るためにもう少し人形兵を出しておくことにした。
「これが新作の人形なのか?」
「はい。実験は予想通りの結果を出したので、安心してください」
フェリーラ領の盗賊相手にも優秀な成果を発揮した新型人形たちを見て、ガイオは興味深そうに呟く。
見た目はロイたちと同じだが、強化と活動時間の長期化に成功した人形だ。
彼らなら余程強力な魔物でも出ない限りは問題ないだろう。
「そのうち農業まで全部人形たちだけで出来るようになっちまうかもな」
「やろうと思えばできますけど、そんなことはやりませんね」
「何でだ?」
レオの人形は兵としても使えるが、多くの職場で人の代わりに働いている。
島に人は増えていっているといっても、人材不足の所は多々あるのでしょうがないことだ。
多くの人形を町中で発見すると、人が働かなくても良いのではないかと思えることがガイオにはあった。
その考えも分からなくはない。
人間は誰しも、大なり小なり怠けたいと思う気持ちを持っているものだ。
人形で足りるなら、人間が働かなくてもいいという思いが浮かんでくるのは当然だ。
全部人形が代わりに働くということも出来なくはないが、レオとしてはそうすることは反対だ。
「もしも、僕が死んだときに人形たちが動かなくなったら、もうその時点でこの島は終わりですからね。極力人間の力で発展させないと、そのしわ寄せは次の世代が被ることになってしまいますから」
「なるほど先の先を見ての考えか……」
人形ばかりに頼っていると、人形無しでは生きていけない島になってしまうかもしれない。
レオが生きている間はいいが、もしも死んでしまったら島の人間はそこから立て直すのにかなり苦労することになってしまう。
そうならないためにも必要最低限しか人形は使わず、出来る限り自分たち人間の力で島を発展させていくしかないとレオは思っている。
レオの未来を見据えた政策に、ガイオは納得して頷いた。