「おいっ! 本当にもうすぐ馬車が通るんだろうな?」
「あぁ!」
侵入者を護送するため、フェリーラ領の領都フォンカンポへ向かうレオたち。
町までもう少しと言う所まで迫って来ていた頃、ある人間が話し合っていた。
口ぶりから、フォンカンポに向かう馬車を待ち受けているかのような会話をしている。
「もうすぐ数台の馬車が通る。そこには貴族の子息が通る」
話している男の1人は、カロージェロからレオの暗殺を指示されていた男だ。
依頼者に一番近い位置にいることから、レオたちを狙った組織のトップとなる男だろう。
総力を結集してレオの暗殺に挑んだが、全員護衛の冒険者たちに制圧されてしまったが、彼1人生き残っていた。
「予定通り積んでいるお宝は、全部俺らがもらっちまって良いんだよな?」
「構わない」
彼1人生き残ったのは、総力戦が失敗した場合でも依頼の達成を図るためだ。
しかし、自分1人では不可能と判断した彼は、他の人間を使うことにした。
それが隣にいる男とその仲間たちだ。
「その代わり、全員殺すことが条件だ」
「そんなの最初からそのつもりだ」
依頼達成を図るための最後の機会はここしかない。
最初はここで総力を尽くすという策も考えられたが、護送の時が危険なのは分かっていることなので、フェリーラ領の領主の方をオヴェストコリナの町へ呼び寄せるという可能性があった。
そのため総力戦で挑んだのだが、それが失敗した今ではもう作戦を精査している暇も人員もいない。
組織の人間でなくても、依頼達成を図るしかない。
狙いは捕まった仲間を含めての皆殺し。
その考えに同意するように、隣の男は笑みを浮かべる。
「おっ来た! 5台か……」
「赤(せき)斧(ふ)の盗賊団がまさか怖気づいていないよな?」
「ハッ! なめんじゃねえ!」
最後の機会に組織の男が利用したのは、この周辺で名を馳せる盗賊団だった。
赤斧とは、この盗賊団のリーダーの持つ斧のことで、返り血で真っ赤に染まった斧を表現したことによるものらしい。
所詮は数が多いだけの盗賊の頭にすぎないため、闇の組織の彼からしたら笑ってしまいそうになる2つ名だ。
しかし、念のため以前に顔合わせをしておいて正解だった。
実際レオは実家とは縁を切られているので貴族ではないのだが、貴族の子なのは間違いない。
貴族の子息が通るという情報を提供しただけで、上手く話しに乗ってくれたのは短絡的で助かった。
今も、冒険者たちが護衛している馬車を見て躊躇うような素振りを見せたが、ちょっと煽るだけで都合よく反発してくれた。
「行くぞ!! 野郎ども!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
盗賊のリーダーの言葉に、部下の男たちが返事と共に動き出した。
狙いは馬車の側面からの攻撃ため、街道の左右に分かれて潜む予定だ。
「何としてもここで潰す!!」
ここで失敗すれば、組織だけでなく自分も終わりだ。
そのため、組織の男も盗賊たちと共にレオたちの暗殺に向かった。
「「「「っ!!」」」」
「盗賊だ!!」
いち早く馬が異変に反応して足を止めてしまった。
急に馬車が停止したことでレオたちも驚くと、外から冒険者が叫ぶ声が聞こえてきた。
その声に反応し、中に居た全員が外へと飛び出した。
「レオはここにいろ!」
「クオーレ! レオを頼むぞ!」
「ニャッ!」
馬車を挟むようにして、左右から盗賊たちらしき者たちが襲い掛かってきた。
護衛の冒険者たちは、それに対応しようと馬車から降りて武器を構えた。
レオと同乗していたドナートとヴィートも武器となる槍を構え、ドナートがレオに動かないように指示し、ヴィートが馬車の屋根に乗っていたクオーレにレオを守るように指示を出した。
指示されなくても主人を守ると、クオーレはレオの側で周囲を警戒した。
「待ってください!」
「何だ!?」
盗賊を迎え撃とうとしているファウストたちに、レオは待ったをかける。
その声に、ファウストは理由を問いかける。
「僕も助力します!」
「何っ!?」
盗賊たちが迫って来るが、かなりの数だ。
連れてきた冒険者は、先日同様ファウストとリヴィオが用意した高ランクの冒険者たちだ。
しかし、彼らでも多勢に無勢となり怪我を負ってしまうかもしれない。
そうならないためにも、レオは数には数で対抗することを決断した。
何をする気か分からず、ファウストは止めようとしたが、それより早くレオが動く。
「操り軍隊!!」
「「「なっ!?」」」
「行け!!」
レオの言葉と共に、突如木製人形たちが大量に出現した。
その出現した人形の数の多さに、ファウスト、ドナート、ヴィートは面食らう。
左右から迫り来る盗賊の総数は約50。
それと同数程の人形たち全員が槍を構え、レオの指示と共に迫り来る盗賊たちへと攻めかかって行った。
「「「「「何だこれはっ!?」」」」」
自分たちが襲い掛かろうとしていた馬車の周辺にいきなり人形が出現したため、盗賊たちは慌てた。
しかもどういう原理か分からないが、人間のように動いている。
レオのスキルを知らない者は、初めてこれを見たら驚くのも仕方がない。
「うがっ!!」「ギャッ!!」
迫り来る人形に驚き慌てているうちに、盗賊たちは槍の攻撃を受けて悲鳴が連鎖していった。
それにより、この人形が危険な存在なのだと理解したのか、盗賊たちはようやく抵抗を始めた。
「冒険者の方たちは人形の援護をお願いします!!」
「……あ、あぁ!」
盗賊たちも驚いたが、護衛の冒険者たちも人形たちの出現に驚いた。
しかし、レオの言葉を聞いて味方なのだと分かった彼らは、戸惑いつつもその指示に従うことにした。
盗賊の数を見た時は、怪我をする可能性が頭をよぎっていたが、これだけの人数の仲間がいれば考える必要もない。
レオの指示通り冒険者たちは人形たちの援護をおこない、どんどん盗賊の数を減らしていった。
「ふざけんな!! 何だこの人形どもは!!」
「おっと! お前は俺が相手してやる!」
想定外となる大量の人形に、盗賊の頭は怒りに震える。
そして、邪魔な人形を壊そうと乱戦状態の部下たちの所へ向かおうとした。
しかし、その盗賊の頭の前にファウストが立ち塞がった。
「お前ら赤斧の盗賊団だな?」
「だったら何だ!! 邪魔をするな!!」
自分たちのことを知られていることはたいしたことではない。
全員殺してしまえば関係ないからだ。
そのため、盗賊の頭は立ち塞がったファウストに、自慢の斧で襲い掛かった。
「生死不問の懸賞首だ。小遣い稼ぎさせてもらうぜ!」
「がっ!!」
ファウストが言葉を返すが、その頃にはもう盗賊の頭の首が体から転がり落ちていた。
盗賊の頭の斧が振り下ろされるよりも早く、ファウストが長剣で斬り落としたのだ。
多くの部下を率いる有名な盗賊団の頭で、その腕力はたしかにすごいだろうが、当たらなければ意味がない。
速度自慢のファウストにとって、こういった力自慢の敵はカモでしかなかった。
『ここだ!!』
盗賊団の頭が殺られ、その部下たちも数を減らしていくなか、レオ暗殺を企てている組織の男は動きだした。
盗賊の相手に護衛が減ったレオを狙い、全速力で背後から攻めかかったのだ。
思惑通り、護衛は全員盗賊に目が行き、レオの側には従魔らしき闇猫と蜘蛛しかいない。
闇猫は夜でなければただのでかい猫、蜘蛛も糸以外は警戒する必要はないだろう。
足音を立てずに接近しつつ武器の短剣を抜いた男は、自分の接近に気付き驚いた表情をしているレオに斬りかかった。
「「レオ!!」」
近くにいたドナートとヴィートが気付いた時には、もう敵がレオに迫っていた。
襲撃が盗賊だけでなかったことにようやく気が付いたのだ。
2人は慌ててレオを守りに動くが、敵の移動速度から考えると、敵を抑えることは間に合いそうにない。
“ドサッ!!”
「「っ!!」」
2人が間に合わずにレオと敵が交錯した。
間に合わなかったと思ったら、襲いかかった敵が崩れるように地面に倒れた。
何が起きたのかと驚きつつも近付くと、レオの手には血に染まった剣が手に握られていた。
「……お前がやったのか?」
「えぇ……」
ドナートとヴィートはレオに近付くと、倒れた男の生死を確認する。
剣で腹を貫かれたのか、大量に出血して事切れていた。
何をどうしたのか分からないが、どうやらレオが倒したらしい。
「終わったぞ!!」
レオが襲撃者を返り討ちしてすぐに、冒険者から大きな声が上がった。
どうやら盗賊たちを倒し終わったようだ。
「あぁ!」
侵入者を護送するため、フェリーラ領の領都フォンカンポへ向かうレオたち。
町までもう少しと言う所まで迫って来ていた頃、ある人間が話し合っていた。
口ぶりから、フォンカンポに向かう馬車を待ち受けているかのような会話をしている。
「もうすぐ数台の馬車が通る。そこには貴族の子息が通る」
話している男の1人は、カロージェロからレオの暗殺を指示されていた男だ。
依頼者に一番近い位置にいることから、レオたちを狙った組織のトップとなる男だろう。
総力を結集してレオの暗殺に挑んだが、全員護衛の冒険者たちに制圧されてしまったが、彼1人生き残っていた。
「予定通り積んでいるお宝は、全部俺らがもらっちまって良いんだよな?」
「構わない」
彼1人生き残ったのは、総力戦が失敗した場合でも依頼の達成を図るためだ。
しかし、自分1人では不可能と判断した彼は、他の人間を使うことにした。
それが隣にいる男とその仲間たちだ。
「その代わり、全員殺すことが条件だ」
「そんなの最初からそのつもりだ」
依頼達成を図るための最後の機会はここしかない。
最初はここで総力を尽くすという策も考えられたが、護送の時が危険なのは分かっていることなので、フェリーラ領の領主の方をオヴェストコリナの町へ呼び寄せるという可能性があった。
そのため総力戦で挑んだのだが、それが失敗した今ではもう作戦を精査している暇も人員もいない。
組織の人間でなくても、依頼達成を図るしかない。
狙いは捕まった仲間を含めての皆殺し。
その考えに同意するように、隣の男は笑みを浮かべる。
「おっ来た! 5台か……」
「赤(せき)斧(ふ)の盗賊団がまさか怖気づいていないよな?」
「ハッ! なめんじゃねえ!」
最後の機会に組織の男が利用したのは、この周辺で名を馳せる盗賊団だった。
赤斧とは、この盗賊団のリーダーの持つ斧のことで、返り血で真っ赤に染まった斧を表現したことによるものらしい。
所詮は数が多いだけの盗賊の頭にすぎないため、闇の組織の彼からしたら笑ってしまいそうになる2つ名だ。
しかし、念のため以前に顔合わせをしておいて正解だった。
実際レオは実家とは縁を切られているので貴族ではないのだが、貴族の子なのは間違いない。
貴族の子息が通るという情報を提供しただけで、上手く話しに乗ってくれたのは短絡的で助かった。
今も、冒険者たちが護衛している馬車を見て躊躇うような素振りを見せたが、ちょっと煽るだけで都合よく反発してくれた。
「行くぞ!! 野郎ども!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
盗賊のリーダーの言葉に、部下の男たちが返事と共に動き出した。
狙いは馬車の側面からの攻撃ため、街道の左右に分かれて潜む予定だ。
「何としてもここで潰す!!」
ここで失敗すれば、組織だけでなく自分も終わりだ。
そのため、組織の男も盗賊たちと共にレオたちの暗殺に向かった。
「「「「っ!!」」」」
「盗賊だ!!」
いち早く馬が異変に反応して足を止めてしまった。
急に馬車が停止したことでレオたちも驚くと、外から冒険者が叫ぶ声が聞こえてきた。
その声に反応し、中に居た全員が外へと飛び出した。
「レオはここにいろ!」
「クオーレ! レオを頼むぞ!」
「ニャッ!」
馬車を挟むようにして、左右から盗賊たちらしき者たちが襲い掛かってきた。
護衛の冒険者たちは、それに対応しようと馬車から降りて武器を構えた。
レオと同乗していたドナートとヴィートも武器となる槍を構え、ドナートがレオに動かないように指示し、ヴィートが馬車の屋根に乗っていたクオーレにレオを守るように指示を出した。
指示されなくても主人を守ると、クオーレはレオの側で周囲を警戒した。
「待ってください!」
「何だ!?」
盗賊を迎え撃とうとしているファウストたちに、レオは待ったをかける。
その声に、ファウストは理由を問いかける。
「僕も助力します!」
「何っ!?」
盗賊たちが迫って来るが、かなりの数だ。
連れてきた冒険者は、先日同様ファウストとリヴィオが用意した高ランクの冒険者たちだ。
しかし、彼らでも多勢に無勢となり怪我を負ってしまうかもしれない。
そうならないためにも、レオは数には数で対抗することを決断した。
何をする気か分からず、ファウストは止めようとしたが、それより早くレオが動く。
「操り軍隊!!」
「「「なっ!?」」」
「行け!!」
レオの言葉と共に、突如木製人形たちが大量に出現した。
その出現した人形の数の多さに、ファウスト、ドナート、ヴィートは面食らう。
左右から迫り来る盗賊の総数は約50。
それと同数程の人形たち全員が槍を構え、レオの指示と共に迫り来る盗賊たちへと攻めかかって行った。
「「「「「何だこれはっ!?」」」」」
自分たちが襲い掛かろうとしていた馬車の周辺にいきなり人形が出現したため、盗賊たちは慌てた。
しかもどういう原理か分からないが、人間のように動いている。
レオのスキルを知らない者は、初めてこれを見たら驚くのも仕方がない。
「うがっ!!」「ギャッ!!」
迫り来る人形に驚き慌てているうちに、盗賊たちは槍の攻撃を受けて悲鳴が連鎖していった。
それにより、この人形が危険な存在なのだと理解したのか、盗賊たちはようやく抵抗を始めた。
「冒険者の方たちは人形の援護をお願いします!!」
「……あ、あぁ!」
盗賊たちも驚いたが、護衛の冒険者たちも人形たちの出現に驚いた。
しかし、レオの言葉を聞いて味方なのだと分かった彼らは、戸惑いつつもその指示に従うことにした。
盗賊の数を見た時は、怪我をする可能性が頭をよぎっていたが、これだけの人数の仲間がいれば考える必要もない。
レオの指示通り冒険者たちは人形たちの援護をおこない、どんどん盗賊の数を減らしていった。
「ふざけんな!! 何だこの人形どもは!!」
「おっと! お前は俺が相手してやる!」
想定外となる大量の人形に、盗賊の頭は怒りに震える。
そして、邪魔な人形を壊そうと乱戦状態の部下たちの所へ向かおうとした。
しかし、その盗賊の頭の前にファウストが立ち塞がった。
「お前ら赤斧の盗賊団だな?」
「だったら何だ!! 邪魔をするな!!」
自分たちのことを知られていることはたいしたことではない。
全員殺してしまえば関係ないからだ。
そのため、盗賊の頭は立ち塞がったファウストに、自慢の斧で襲い掛かった。
「生死不問の懸賞首だ。小遣い稼ぎさせてもらうぜ!」
「がっ!!」
ファウストが言葉を返すが、その頃にはもう盗賊の頭の首が体から転がり落ちていた。
盗賊の頭の斧が振り下ろされるよりも早く、ファウストが長剣で斬り落としたのだ。
多くの部下を率いる有名な盗賊団の頭で、その腕力はたしかにすごいだろうが、当たらなければ意味がない。
速度自慢のファウストにとって、こういった力自慢の敵はカモでしかなかった。
『ここだ!!』
盗賊団の頭が殺られ、その部下たちも数を減らしていくなか、レオ暗殺を企てている組織の男は動きだした。
盗賊の相手に護衛が減ったレオを狙い、全速力で背後から攻めかかったのだ。
思惑通り、護衛は全員盗賊に目が行き、レオの側には従魔らしき闇猫と蜘蛛しかいない。
闇猫は夜でなければただのでかい猫、蜘蛛も糸以外は警戒する必要はないだろう。
足音を立てずに接近しつつ武器の短剣を抜いた男は、自分の接近に気付き驚いた表情をしているレオに斬りかかった。
「「レオ!!」」
近くにいたドナートとヴィートが気付いた時には、もう敵がレオに迫っていた。
襲撃が盗賊だけでなかったことにようやく気が付いたのだ。
2人は慌ててレオを守りに動くが、敵の移動速度から考えると、敵を抑えることは間に合いそうにない。
“ドサッ!!”
「「っ!!」」
2人が間に合わずにレオと敵が交錯した。
間に合わなかったと思ったら、襲いかかった敵が崩れるように地面に倒れた。
何が起きたのかと驚きつつも近付くと、レオの手には血に染まった剣が手に握られていた。
「……お前がやったのか?」
「えぇ……」
ドナートとヴィートはレオに近付くと、倒れた男の生死を確認する。
剣で腹を貫かれたのか、大量に出血して事切れていた。
何をどうしたのか分からないが、どうやらレオが倒したらしい。
「終わったぞ!!」
レオが襲撃者を返り討ちしてすぐに、冒険者から大きな声が上がった。
どうやら盗賊たちを倒し終わったようだ。