「……何でお前が動いたんだ? お前が狙われている可能性だってあっただろうが!」
「すいません……」
侵入者の討伐と捕獲が終わり、夜が明けるとレオはガイオから説教を受けていた。
それもそのはず、ガイオの言うようにレオを狙って侵入してきた者かもしれなかったからだ。
狙われているかもしれないのに張本人が、わざわざ自分から出向くなんて無謀も良いところだ。
レオを守る立場のガイオからすると、説教するのは当然のことだ。
「まぁ、捕まえられたのもお前だけだからな……」
もっと細かく説教したいところだが、制圧できたと言っても自害されてしまったガイオたちとは違い、レオは見事に捕獲してきてしまった。
一番成果を出したのがレオと言って良いため、あまり長いこと説教するのは躊躇われたのだ。
「捕まえた奴のことは俺たちに任せろ」
「はい。お願いします」
レオが捕まえた侵入者は、戻るとすぐガイオに引き渡した。
しかし、犯罪などが起きることなどこれまでなかったため、レオは牢屋などの製作が頭からすっかり抜け落ちていたため、どこに閉じ込めておくかが問題になった。
仕方がないので、移住してくる人間のために作って置いた空き家にひとまず閉じ込めておくことにした。
エトーレの糸で縛られているため、とても逃げ出せる状態ではないが、念のために数人の兵が見張ってくれている。
侵入者の狙いをどうにかして聞き出したいところだが、レオは尋問の仕方なんて全く分からない。
なので、ガイオの言葉にすぐに頷いたのだった。
「でも、話さないのでは?」
「適役に任せたから、少しくらいは情報が得られるだろう……」
「適役? ですか……?」
「あぁ!」
情報を話すくらいなら死を選ぶような連中だ。
いくら情報を得ようとしても、何も話さないのではないかと思える。
そんなレオに対し、ガイオは自信ありげに言葉を返した。
尋問が得意な人間に心当たりがないレオは、ガイオにその人間のことを聞こうといたのだが、ガイオの放つ空気でなんとなく聞いてはいけないような気がしたので、レオはその者のことを聞けなかった。
◆◆◆◆◆
「捕まえた奴から得た情報だと、奴の標的は……レオ、お前のようだ」
「そうですか……」
侵入者を捕まえて1日が経過した。
その侵入者の尋問をおこなったことで得られた情報を報告しに、レオの下へガイオがやってきた。
その情報によると、刺客の狙いはエレナではなく、自分だということだった。
「驚かないのか?」
「いえ、驚いていますよ。ただ、納得できないもので……」
ガイオは、報告をしてもレオがあまり反応を示さなかったことが気になった。
その反応を見ると、何か自分が狙いだと分かっていたのではないかと思えてくる。
「どこが納得できないんだ?」
「僕を狙う理由です。僕に刺客を送り込むとしたら、恐らく父や兄たち実家の人間くらいだと思えるのですが、今さら僕を殺そうとする理由が分からなくて……」
「そうか……」
レオも、僅かながら自分に刺客が送られてきているという可能性は感じていた。
父や兄からしたらすぐ死ぬと思っていた自分が、いつまでも死んだという情報が入って来ないので調査に送ったのかもしれない。
しかし、もう縁を切った自分が何をしようと、父たちには何の危害も加えている訳ではない。
なので、刺客を送り込んでくる理由が分からない。
「どういった命令をされたのでしょうか? いきなり襲い掛かってきたところを見ると、侵入者たちが僕の顔を知らないみたいですし……」
「そこまで聞き出すのは難しいな」
どういった尋問をおこなっているのかは分からないが、さすがにそこまでの情報は得られないようだ。
「あぁ、自室のベッドにずっといた僕の顔を知らなくても不思議ではないか……」
よく考えたら、自分は体調を良く崩すこともあって、父とは年に片手で数えられる回数しか会うことはなかった。
息子とは言っても、ほとんど存在していないような扱いをしてきたのだから、自分の手の者にも教える必要はないと判断していた可能性もある。
なので、自分の顔を知らないこともあり得るかと、レオは自分で思って自分で納得してしまった。
「お前を狙うなら、この島に来ていると思わなかったのか?」
「どこかで動けなくなっているとでも思ったんじゃないですかね……」
父や兄たちはレオの体調が悪いことは知っている。
領地の島へ行くことも出来ずに死ねばそれでよかったのだが、なかなか死なないことにイラ立ちでも募らせたのだろうか。
どこかの町で体調を崩して寝込み、無駄に生き延びているのが不愉快だったのだろうか。
領地を与えたのに、いつまでも島に行かないことにいちゃもんでもつけて始末するつもりもあったのではないか。
色々と考えられるが、ともかく狙いが自分なのはちょっと安心した。
エレナが危険な目に遭う可能性が回避できたからだ。
「今回も侵入者を潰したことで、本腰を入れて来るだろう。何とかしてそいつらを阻止しないとな……」
「ファウストさんからの報告があったから人数を揃えて何とかなりましたけど、次は数で制しきれるか分からないですからね……」
今回の侵入者たちがフェリーラ領から密かに出発したことは、ファウストが伝書鳥を使って教えてくれていた。
それもあって、侵入者をあっさり制圧できたのだ。
しかし、本腰入れた敵が次はどれほどの数で攻めて来るか分からない。
報告を受けても対処がしようもないかもしれない。
「……そういえば、お前はどうして侵入者を発見したんだ?」
「エトーレの糸です」
「こいつの……?」
ガイオたちはファウストの報告で動いたのだが、他にもう一人侵入しようとしていることなど気付かなかった。
しかし、レオはその者を捕まえてきた。
どうやって発見したのか気になったガイオが尋ねると、レオはエトーレを指差した。
エトーレのお陰と知って、ガイオは懐疑的な目でエトーレを見つめた。
「この子が魔力を込めた糸は特殊らしくて、生物が触れると探知できるようです。それで、その魔力の糸を防壁や周りや海岸付近に貼ってもらっていました。今回はそれが上手くいきましたね」
従魔2匹は魚好きなため、レオは魚釣りをすることが多い。
ある日、なかなか釣れないでいたレオの側で、エトーレが糸を垂らして釣り上げていた。
糸に針を刺しただけの物で釣り上げたのを見たレオは、不思議に思ってエトーレに色々問いかけた。
すると、糸に魔力を通して、それに触れたものがいると察知できるということが分かった。
これは使えると、魔物の侵入対策として防壁付近にエトーレの糸を張り巡らせてもらった。
今回のように侵入者のことも考えて海岸付近にも張っておいたのだが、それが上手くいった。
「今回はそれが役に立ったが、次はどうしたものか……」
「……捕まえた彼が、父から送られたのだと証明すれば王家に申し出ることも出来ますよね?」
「それはそうだが……」
たしかに捕まえた侵入者が命令した人間のことを吐けば、証拠として王家に何らかの処分をしてもらうように申し出ることはできるだろう。
しかし、侵入者がその命令した人間のことを話すとは思えないため、ガイオはレオの考えを否定しようとした。
「フェリーラ領の領主の方に頼みましょう」
「フェリーラ領の領主に……? そうか!」
「はい!」
捕まえた人間に尋問しても無理だが、彼をフェリーラ領に連れていけばもしかしたら話しをさせることができるかもしれない。
それにはフェリーラ領の領主に面会するしかない。
そのことを聞いたガイオは、少し考えてその理由に思い至った。
「強制隷属によって証言させます」
この国において、犯罪者以外を奴隷にするのは重犯罪だ。
しかし、貴族の場合、爵位と共に奴隷にしても良いという権利を得られる。
当然理由がある場合に限られる。
犯罪者の尋問の効率化としてだ。
その貴族の特権を利用して、捕まえた侵入者に命令した者の名前を吐かせることにしたのだ。
しかし、レオは爵位を持っていない。
そのため、フェリーラ領の領主に頼むことにしたのだ。
「すいません……」
侵入者の討伐と捕獲が終わり、夜が明けるとレオはガイオから説教を受けていた。
それもそのはず、ガイオの言うようにレオを狙って侵入してきた者かもしれなかったからだ。
狙われているかもしれないのに張本人が、わざわざ自分から出向くなんて無謀も良いところだ。
レオを守る立場のガイオからすると、説教するのは当然のことだ。
「まぁ、捕まえられたのもお前だけだからな……」
もっと細かく説教したいところだが、制圧できたと言っても自害されてしまったガイオたちとは違い、レオは見事に捕獲してきてしまった。
一番成果を出したのがレオと言って良いため、あまり長いこと説教するのは躊躇われたのだ。
「捕まえた奴のことは俺たちに任せろ」
「はい。お願いします」
レオが捕まえた侵入者は、戻るとすぐガイオに引き渡した。
しかし、犯罪などが起きることなどこれまでなかったため、レオは牢屋などの製作が頭からすっかり抜け落ちていたため、どこに閉じ込めておくかが問題になった。
仕方がないので、移住してくる人間のために作って置いた空き家にひとまず閉じ込めておくことにした。
エトーレの糸で縛られているため、とても逃げ出せる状態ではないが、念のために数人の兵が見張ってくれている。
侵入者の狙いをどうにかして聞き出したいところだが、レオは尋問の仕方なんて全く分からない。
なので、ガイオの言葉にすぐに頷いたのだった。
「でも、話さないのでは?」
「適役に任せたから、少しくらいは情報が得られるだろう……」
「適役? ですか……?」
「あぁ!」
情報を話すくらいなら死を選ぶような連中だ。
いくら情報を得ようとしても、何も話さないのではないかと思える。
そんなレオに対し、ガイオは自信ありげに言葉を返した。
尋問が得意な人間に心当たりがないレオは、ガイオにその人間のことを聞こうといたのだが、ガイオの放つ空気でなんとなく聞いてはいけないような気がしたので、レオはその者のことを聞けなかった。
◆◆◆◆◆
「捕まえた奴から得た情報だと、奴の標的は……レオ、お前のようだ」
「そうですか……」
侵入者を捕まえて1日が経過した。
その侵入者の尋問をおこなったことで得られた情報を報告しに、レオの下へガイオがやってきた。
その情報によると、刺客の狙いはエレナではなく、自分だということだった。
「驚かないのか?」
「いえ、驚いていますよ。ただ、納得できないもので……」
ガイオは、報告をしてもレオがあまり反応を示さなかったことが気になった。
その反応を見ると、何か自分が狙いだと分かっていたのではないかと思えてくる。
「どこが納得できないんだ?」
「僕を狙う理由です。僕に刺客を送り込むとしたら、恐らく父や兄たち実家の人間くらいだと思えるのですが、今さら僕を殺そうとする理由が分からなくて……」
「そうか……」
レオも、僅かながら自分に刺客が送られてきているという可能性は感じていた。
父や兄からしたらすぐ死ぬと思っていた自分が、いつまでも死んだという情報が入って来ないので調査に送ったのかもしれない。
しかし、もう縁を切った自分が何をしようと、父たちには何の危害も加えている訳ではない。
なので、刺客を送り込んでくる理由が分からない。
「どういった命令をされたのでしょうか? いきなり襲い掛かってきたところを見ると、侵入者たちが僕の顔を知らないみたいですし……」
「そこまで聞き出すのは難しいな」
どういった尋問をおこなっているのかは分からないが、さすがにそこまでの情報は得られないようだ。
「あぁ、自室のベッドにずっといた僕の顔を知らなくても不思議ではないか……」
よく考えたら、自分は体調を良く崩すこともあって、父とは年に片手で数えられる回数しか会うことはなかった。
息子とは言っても、ほとんど存在していないような扱いをしてきたのだから、自分の手の者にも教える必要はないと判断していた可能性もある。
なので、自分の顔を知らないこともあり得るかと、レオは自分で思って自分で納得してしまった。
「お前を狙うなら、この島に来ていると思わなかったのか?」
「どこかで動けなくなっているとでも思ったんじゃないですかね……」
父や兄たちはレオの体調が悪いことは知っている。
領地の島へ行くことも出来ずに死ねばそれでよかったのだが、なかなか死なないことにイラ立ちでも募らせたのだろうか。
どこかの町で体調を崩して寝込み、無駄に生き延びているのが不愉快だったのだろうか。
領地を与えたのに、いつまでも島に行かないことにいちゃもんでもつけて始末するつもりもあったのではないか。
色々と考えられるが、ともかく狙いが自分なのはちょっと安心した。
エレナが危険な目に遭う可能性が回避できたからだ。
「今回も侵入者を潰したことで、本腰を入れて来るだろう。何とかしてそいつらを阻止しないとな……」
「ファウストさんからの報告があったから人数を揃えて何とかなりましたけど、次は数で制しきれるか分からないですからね……」
今回の侵入者たちがフェリーラ領から密かに出発したことは、ファウストが伝書鳥を使って教えてくれていた。
それもあって、侵入者をあっさり制圧できたのだ。
しかし、本腰入れた敵が次はどれほどの数で攻めて来るか分からない。
報告を受けても対処がしようもないかもしれない。
「……そういえば、お前はどうして侵入者を発見したんだ?」
「エトーレの糸です」
「こいつの……?」
ガイオたちはファウストの報告で動いたのだが、他にもう一人侵入しようとしていることなど気付かなかった。
しかし、レオはその者を捕まえてきた。
どうやって発見したのか気になったガイオが尋ねると、レオはエトーレを指差した。
エトーレのお陰と知って、ガイオは懐疑的な目でエトーレを見つめた。
「この子が魔力を込めた糸は特殊らしくて、生物が触れると探知できるようです。それで、その魔力の糸を防壁や周りや海岸付近に貼ってもらっていました。今回はそれが上手くいきましたね」
従魔2匹は魚好きなため、レオは魚釣りをすることが多い。
ある日、なかなか釣れないでいたレオの側で、エトーレが糸を垂らして釣り上げていた。
糸に針を刺しただけの物で釣り上げたのを見たレオは、不思議に思ってエトーレに色々問いかけた。
すると、糸に魔力を通して、それに触れたものがいると察知できるということが分かった。
これは使えると、魔物の侵入対策として防壁付近にエトーレの糸を張り巡らせてもらった。
今回のように侵入者のことも考えて海岸付近にも張っておいたのだが、それが上手くいった。
「今回はそれが役に立ったが、次はどうしたものか……」
「……捕まえた彼が、父から送られたのだと証明すれば王家に申し出ることも出来ますよね?」
「それはそうだが……」
たしかに捕まえた侵入者が命令した人間のことを吐けば、証拠として王家に何らかの処分をしてもらうように申し出ることはできるだろう。
しかし、侵入者がその命令した人間のことを話すとは思えないため、ガイオはレオの考えを否定しようとした。
「フェリーラ領の領主の方に頼みましょう」
「フェリーラ領の領主に……? そうか!」
「はい!」
捕まえた人間に尋問しても無理だが、彼をフェリーラ領に連れていけばもしかしたら話しをさせることができるかもしれない。
それにはフェリーラ領の領主に面会するしかない。
そのことを聞いたガイオは、少し考えてその理由に思い至った。
「強制隷属によって証言させます」
この国において、犯罪者以外を奴隷にするのは重犯罪だ。
しかし、貴族の場合、爵位と共に奴隷にしても良いという権利を得られる。
当然理由がある場合に限られる。
犯罪者の尋問の効率化としてだ。
その貴族の特権を利用して、捕まえた侵入者に命令した者の名前を吐かせることにしたのだ。
しかし、レオは爵位を持っていない。
そのため、フェリーラ領の領主に頼むことにしたのだ。