「寒いな……」
収穫祭を終え、季節は一気に冬へと移行していった。
この時期朝の畑仕事はなくなったが、レオはこの時期も色々やることがある。
主な仕事は、スキルで動かす人形たちの作成だ。
数を増やして、魔物の駆除を早めるためだ。
それとは別に、自分自身の訓練も欠かさない。
ガイオによる剣術訓練と、ジーノの魔法指導を交互に受けている。
「フンッ! フンッ!」
「剣が下がっているぞ!」
「はい!」
今日は剣術の訓練で、ガイオの指導を受けている最中だ。
流石にドナートたちと同じ訓練とは言わないが、いつも腕がパンパンになるまで剣を振らされている。
今日も素振りを何度もさせられ、腕がプルプルと悲鳴を上げてきた。
「今日は終了だ」
「ハァ、ハァ……、ありがとうございました」
一通りの訓練が終了し、今日の訓練は終了した。
その疲労に息を切らしつつ、レオはガイオへと礼を述べる。
「風邪を引かないように、汗はちゃんと拭けよ」
「はい」
最近寒くなって来たこともあって心配になったのか、ガイオはレオにタオルを投げて渡してきた。
1年前までは病弱だったというのを、レオから聞いて知っているからだろう。
「ガイオさんは大丈夫ですか?」
「あぁ、薪や炭があるからな」
レオも一緒になって手伝った炭窯で、ベネデットが炭を作るようになった。
材料となる木や竹は大量にあるので、結構な量の炭が確保できている。
冬に間に合ったのは良かった。
どの家にも暖炉は作ってあるので、暖房用にも使えてレオも重宝している。
「……以前忍び込んだ奴らのことだが、冬だからと言って油断するなよ」
「……そういったものなのですか?」
小さい範囲だが、島の状況はある程度安定している。
問題があるとすれば、収穫祭の時に忍び込んだ者の仲間が侵入してくるのではないかという心配だ。
冬の間は止めているが、この島の住人として送られてくる者の中に侵入者がいる可能性は低い。
ファウストが、ギルドの保証付きでここへ送ることを許可した者たちだからだ。
冬になれば闇の者でも大人しくしているだろうと、レオはどことなく思っていた部分がある。
どうやらそれは間違いだったようだ。
「大勢で攻め込んでくるようなことはないだろう。偵察も兼ねて少数を送り込んでくるかもしれない」
「なるほど、分かりました。注意しておきます」
闇の者たちの特性としては少数で動くことが多いそうだ。
大勢で攻め込む場合、偵察を送った上で判断するらしい。
冬だからと油断していると、いつの間にか侵入されている可能性がある。
そのため、レオはガイオの忠告を受け入れ、気を引き締めることにした。
◆◆◆◆◆
「ドゥーの奴が最後に来たのはこの島だ。ここには何か情報があるはずだ」
夜の闇に紛れるように、4人の人間がヴェントレ島に上陸した。
彼らの狙いは、コードネームをドゥーという仲間の消息が途絶えた島の調査。
消息を絶ったということは、仕事柄何かしらの情報を得たことで始末された可能性が高い。
始末した側が自分たちの方にたどり着いていないということは、ドゥーが身元をバレないようにしたということだろう。
殺されたのか自害したのか分からないが、何かしらの情報がこの島にはある可能性が高い。
そのため、数人の隊を編成して、この島の潜入を開始することになった。
「人にも魔物にも気を付けろよ。ドゥーが何にやられたのか分からない」
「「「あぁ!」」」
ドゥーからの情報が途絶えたこの島へ潜入することになり、フェリーラ領でこの島の情報を調査することになった。
ヴェントレ島と言う名で、魔物が多くて危険な島だという情報が大半だった。
最近になって新しい領主が来たことで、開拓がはじまっている島だという話だ。
その領主がどこの誰だかは分からないようだが、そんなことになっているとは聞いたことがなかった。
魔物が多いということなので、もしかしたらドゥーは魔物にやられたという可能性もある。
人にだけ注意を向けている様では、自分たちも危険な目に遭うかもしれないため、リーダーらしき男は仲間に注意を促した。
「海岸を離れたら散開して拠点の捜索だ」
「「「了解!」」」
海岸から離れたら、4人は一旦どこかに拠点となる場所を探すために散開することにした。
情報収集は、その後に開始をするということになる。
いつもの段取りだが、他の3人もしっかりと頷いて返事をする。
「そうはさせねえよ!」
「「「「っ!?」」」」
侵入した4人が海岸から離れることはできなかった。
音を立てずに行動していたというのに、侵入者が現れたことを確認してきたのか多くの男たちがこの場に向かって来ていた。
「お前ら! 行け!」
「「「「「おうっ!」」」」」
この場に来たのはガイオ率いる元海賊狩り、元海賊の者たちだった。
レオの領兵という立場になり、侵入者を察知した彼らがこの場に駆け付けたのだ。
ガイオの掛け声によって、暗闇で全身黒い服装に身を包んだ4人に対し、多くの男たちが攻めかかって行った。
「くっ! この人数では……」
1人、1人の実力は高くても、数に勝るガイオの兵たちに対抗する事が出来る訳がない。
バラバラに分断されて囲まれた闇の者たちは、捕まる危険性を感じると、ドゥーと同様に毒を飲んで自害をして倒れていった。
「くそっ! 今回も死に逃げやがって!」
遺体となった4人に、ガイオはいら立つように呟いた。
レオかエレナのどちらを狙ってきているのかだけでも分かれば良かったのだが、これではまた刺客を送られてくるかもしれない。
「次は更に増やして来るかもな……」
何度も刺客がいなくなる所なんて、仲間が調査をしない訳がない。
そうなると、次は本腰入れて調査をしに人を送ってくる可能性が高い。
今回はすぐに対応したので誰も傷つくことはなかったが、次はどうなるか分からない。
ガイオとしても、次の襲撃に対して若干不安になってきていた。
「くそっ! 全員やられたか……」
ガイオたちが4人の遺体を処分して海岸から去っていくのを、一人の男が眺めていた。
闇の4人の男と同じ格好をしている所を見ると、彼らの仲間なのだろう。
この男が後から潜入することは、さっきの4人も知らされていなかった。
ヴェントレ島は危険な地ということで、そこに暮らす者の中には相当な実力の持ち主もいるのではないか。
そう考え警戒したた上役が、確認として向かうように指示を出したのだ。
案の定、さっき兵を指揮していた男の醸し出す雰囲気は危険なものだと直感的に分かる。
あんなのを相手にするとなったら、組織のほとんどの者を投入した方が良いのではないかと思えてくるくらいだ。
「しかし、潜入阻止した後に1人だけ別で来たなんて気づかないだろう」
「そうでもないですよ」
「っ!!」
さっきの男たちも、4人の侵入を防いだ事で今は安心しているはず。
安心して警戒の薄れた隙に、侵入をしてしまえばバレることはないだろう。
そう考えていた男だが、急に背後から声をかけられて慌てて武器を構えた。
「ガキ1人でっ……」
「ちゃんといますよ。このように仲間が……」
見てみると成人したばかりのような少年。
しかし、自分の姿を見られたのなら始末するしかない。
そう考えた男が構えた武器で攻めかかろうとしたところ、急に体が動かなくなった。
そして、次の瞬間には糸が何重にも巻き付けられ、自害することすらできない状態で捕獲されてしまった。
「ありがとうクオーレ! エトーレ!」
「ニャッ!」“スッ!”
男を制圧したのは、クオーレの影魔法と、エトーレの魔力糸だ。
2匹の従魔の連携によって、レオは侵入者の1人を生け捕りにすることに成功したのだ。
褒められた2匹は、それぞれいつものように返事をする。
「皆の所に連れて行こう!」
「ニャッ!」“スッ!”
糸でぐるぐる巻きにされて身動きできなくなった男をクオーレの背に乗せて、レオたちはガイオたちの所へと向かうことにしたのだった。
収穫祭を終え、季節は一気に冬へと移行していった。
この時期朝の畑仕事はなくなったが、レオはこの時期も色々やることがある。
主な仕事は、スキルで動かす人形たちの作成だ。
数を増やして、魔物の駆除を早めるためだ。
それとは別に、自分自身の訓練も欠かさない。
ガイオによる剣術訓練と、ジーノの魔法指導を交互に受けている。
「フンッ! フンッ!」
「剣が下がっているぞ!」
「はい!」
今日は剣術の訓練で、ガイオの指導を受けている最中だ。
流石にドナートたちと同じ訓練とは言わないが、いつも腕がパンパンになるまで剣を振らされている。
今日も素振りを何度もさせられ、腕がプルプルと悲鳴を上げてきた。
「今日は終了だ」
「ハァ、ハァ……、ありがとうございました」
一通りの訓練が終了し、今日の訓練は終了した。
その疲労に息を切らしつつ、レオはガイオへと礼を述べる。
「風邪を引かないように、汗はちゃんと拭けよ」
「はい」
最近寒くなって来たこともあって心配になったのか、ガイオはレオにタオルを投げて渡してきた。
1年前までは病弱だったというのを、レオから聞いて知っているからだろう。
「ガイオさんは大丈夫ですか?」
「あぁ、薪や炭があるからな」
レオも一緒になって手伝った炭窯で、ベネデットが炭を作るようになった。
材料となる木や竹は大量にあるので、結構な量の炭が確保できている。
冬に間に合ったのは良かった。
どの家にも暖炉は作ってあるので、暖房用にも使えてレオも重宝している。
「……以前忍び込んだ奴らのことだが、冬だからと言って油断するなよ」
「……そういったものなのですか?」
小さい範囲だが、島の状況はある程度安定している。
問題があるとすれば、収穫祭の時に忍び込んだ者の仲間が侵入してくるのではないかという心配だ。
冬の間は止めているが、この島の住人として送られてくる者の中に侵入者がいる可能性は低い。
ファウストが、ギルドの保証付きでここへ送ることを許可した者たちだからだ。
冬になれば闇の者でも大人しくしているだろうと、レオはどことなく思っていた部分がある。
どうやらそれは間違いだったようだ。
「大勢で攻め込んでくるようなことはないだろう。偵察も兼ねて少数を送り込んでくるかもしれない」
「なるほど、分かりました。注意しておきます」
闇の者たちの特性としては少数で動くことが多いそうだ。
大勢で攻め込む場合、偵察を送った上で判断するらしい。
冬だからと油断していると、いつの間にか侵入されている可能性がある。
そのため、レオはガイオの忠告を受け入れ、気を引き締めることにした。
◆◆◆◆◆
「ドゥーの奴が最後に来たのはこの島だ。ここには何か情報があるはずだ」
夜の闇に紛れるように、4人の人間がヴェントレ島に上陸した。
彼らの狙いは、コードネームをドゥーという仲間の消息が途絶えた島の調査。
消息を絶ったということは、仕事柄何かしらの情報を得たことで始末された可能性が高い。
始末した側が自分たちの方にたどり着いていないということは、ドゥーが身元をバレないようにしたということだろう。
殺されたのか自害したのか分からないが、何かしらの情報がこの島にはある可能性が高い。
そのため、数人の隊を編成して、この島の潜入を開始することになった。
「人にも魔物にも気を付けろよ。ドゥーが何にやられたのか分からない」
「「「あぁ!」」」
ドゥーからの情報が途絶えたこの島へ潜入することになり、フェリーラ領でこの島の情報を調査することになった。
ヴェントレ島と言う名で、魔物が多くて危険な島だという情報が大半だった。
最近になって新しい領主が来たことで、開拓がはじまっている島だという話だ。
その領主がどこの誰だかは分からないようだが、そんなことになっているとは聞いたことがなかった。
魔物が多いということなので、もしかしたらドゥーは魔物にやられたという可能性もある。
人にだけ注意を向けている様では、自分たちも危険な目に遭うかもしれないため、リーダーらしき男は仲間に注意を促した。
「海岸を離れたら散開して拠点の捜索だ」
「「「了解!」」」
海岸から離れたら、4人は一旦どこかに拠点となる場所を探すために散開することにした。
情報収集は、その後に開始をするということになる。
いつもの段取りだが、他の3人もしっかりと頷いて返事をする。
「そうはさせねえよ!」
「「「「っ!?」」」」
侵入した4人が海岸から離れることはできなかった。
音を立てずに行動していたというのに、侵入者が現れたことを確認してきたのか多くの男たちがこの場に向かって来ていた。
「お前ら! 行け!」
「「「「「おうっ!」」」」」
この場に来たのはガイオ率いる元海賊狩り、元海賊の者たちだった。
レオの領兵という立場になり、侵入者を察知した彼らがこの場に駆け付けたのだ。
ガイオの掛け声によって、暗闇で全身黒い服装に身を包んだ4人に対し、多くの男たちが攻めかかって行った。
「くっ! この人数では……」
1人、1人の実力は高くても、数に勝るガイオの兵たちに対抗する事が出来る訳がない。
バラバラに分断されて囲まれた闇の者たちは、捕まる危険性を感じると、ドゥーと同様に毒を飲んで自害をして倒れていった。
「くそっ! 今回も死に逃げやがって!」
遺体となった4人に、ガイオはいら立つように呟いた。
レオかエレナのどちらを狙ってきているのかだけでも分かれば良かったのだが、これではまた刺客を送られてくるかもしれない。
「次は更に増やして来るかもな……」
何度も刺客がいなくなる所なんて、仲間が調査をしない訳がない。
そうなると、次は本腰入れて調査をしに人を送ってくる可能性が高い。
今回はすぐに対応したので誰も傷つくことはなかったが、次はどうなるか分からない。
ガイオとしても、次の襲撃に対して若干不安になってきていた。
「くそっ! 全員やられたか……」
ガイオたちが4人の遺体を処分して海岸から去っていくのを、一人の男が眺めていた。
闇の4人の男と同じ格好をしている所を見ると、彼らの仲間なのだろう。
この男が後から潜入することは、さっきの4人も知らされていなかった。
ヴェントレ島は危険な地ということで、そこに暮らす者の中には相当な実力の持ち主もいるのではないか。
そう考え警戒したた上役が、確認として向かうように指示を出したのだ。
案の定、さっき兵を指揮していた男の醸し出す雰囲気は危険なものだと直感的に分かる。
あんなのを相手にするとなったら、組織のほとんどの者を投入した方が良いのではないかと思えてくるくらいだ。
「しかし、潜入阻止した後に1人だけ別で来たなんて気づかないだろう」
「そうでもないですよ」
「っ!!」
さっきの男たちも、4人の侵入を防いだ事で今は安心しているはず。
安心して警戒の薄れた隙に、侵入をしてしまえばバレることはないだろう。
そう考えていた男だが、急に背後から声をかけられて慌てて武器を構えた。
「ガキ1人でっ……」
「ちゃんといますよ。このように仲間が……」
見てみると成人したばかりのような少年。
しかし、自分の姿を見られたのなら始末するしかない。
そう考えた男が構えた武器で攻めかかろうとしたところ、急に体が動かなくなった。
そして、次の瞬間には糸が何重にも巻き付けられ、自害することすらできない状態で捕獲されてしまった。
「ありがとうクオーレ! エトーレ!」
「ニャッ!」“スッ!”
男を制圧したのは、クオーレの影魔法と、エトーレの魔力糸だ。
2匹の従魔の連携によって、レオは侵入者の1人を生け捕りにすることに成功したのだ。
褒められた2匹は、それぞれいつものように返事をする。
「皆の所に連れて行こう!」
「ニャッ!」“スッ!”
糸でぐるぐる巻きにされて身動きできなくなった男をクオーレの背に乗せて、レオたちはガイオたちの所へと向かうことにしたのだった。