「ヴェントレ島へようこそ!」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
商会を立ち上げフェリーラ領へ船を送るようになり、レオはようやく住人を迎えることになった。
みんなディステ領から逃れてきた者たちで、店を持ちたいという者たちを先に連れて来てもらった。
そこに行けば大体の物が揃うようにするため、商店街のような場所を作るつもりだ。
どの場所で、どんな間取りが良いとかを聞いて、店舗を併設した住宅を建てるつもりだ。
それまでは仮設住宅に住んでいてもらうことになっている。
更に住人を増やすのは、店が開けるようになってからだ。
「ドワーフの方が監督してくれるのですか?」
「はい」
酒造をしてもらうために来てもらったドワーフのエドモンドだが、家の建築などにもかかわってもらっている。
ドワーフがかかわった建物は、同じ構造でも丈夫で長持ちするというジンクスがある。
そのため、新しく来た者たちも、自分の店舗がドワーフの監督によって建てられることが嬉しそうだ。
監督といっても、作業は他の者や人形にやってもらうので、細工が施された木材を組む順番を指示しているだけだ。
しかし、監督には変わりないので、そこにツッコミを入れるような者はいない。
「店の建設費用とかはどうなっているのですか?」
「住宅兼店舗の建設費は特別に無料です。開店費用は僕が無利子でお貸しするという形になります」
客となる住民もいない所に来てもらったのだから、住宅と店舗は無償で提供させてもらうつもりだ。
開店資金までも、全部を肩代わりするのは無理だが、利子無しの条件での貸すという条件なら何とかなるだろう。
これまでアルヴァロに魔物の素材を換金してもらい、貯めてきた資金を使えば何とかなるだろう。
先に住んでいた元ルイゼン領の者たちは、みんな領主であるレオの下に付くことになった。
みんなエレナについてきた者ばかりなので、半ば無理だと期待していなかったのだが、逃げて来たのが知られてはいけない海賊の者たちはともかく、エレナの下につくつもりなので断られると思っていたガイオたちまで付いてくれることになったのは意外だった。
エレナは客人として好きにしてもらうつもりだ。
基本レオと同様に野菜を育てたり、動物の世話をするのがメインとなるだろう。
それと、最近はハーブティーが作りたいと、畑の一画でハーブを育て始めている。
本当はそんなに働かずにのんびりしていて構わないのだが、エレナ自身がやりたいことのようなので、レオとしては止めるつもりはない。
「脚はどうですか? ガイオさん」
「痛みはない。落ちた筋肉さえ戻れば完治だな……」
長い間杖を突いて歩いていたガイオ。
しかし、今は杖もなく歩いても平気なようだ。
固定して動かさないようにしていたことで筋肉が落ちてしまったらしく、それを取り戻すように訓練を始めている。
「あんまり無理しないでくださいね……」
「あぁ……」
訓練相手に駆り出されたのは、ドナートとヴィートの兄弟だ。
1対1で棒と木剣による打ち合いをおこなったりしているのだが、脚が治ったばかりだというのに、ガイオの方が毎回勝利している。
体力も落ちていたせいか回数は少ないが、2人ともガイオに勝てないことで落ち込んでいるようだった。
万全の状態で怪我が治りたての人間に負けたのだから、しょうがないといえばしょうがない。
レオの場合、骨が付く前からやられているので、もう負けることにこだわらないようにしている。
毎回落ち込んでいたら、稽古なんてしなくなってしまいそうだからだ。
「普通ならもう少しかかるんだろうが、レオに魔法で治療してもらった結果だな……」
「ジーノさんの指導のお陰ですね」
ジーノの魔法指導で、レオは治療の魔法も教わった。
怪我や骨折を治す【回復】という魔法だ。
回復薬で怪我なら治すことはできるのだが、骨折までは治せない。
指導の一環としてレオがおこなったのだが、折れた患部に魔力を流し、【回復】の魔法をかけることで骨がくっつくのが早まった気がする。
ドナートとヴィートには悪いが、このまま訓練をして早いとこ元の強さに戻ってもらい、みんなの指導に当たって欲しいものだ。
ガイオをトップに置いて、ドナートとヴィートがその下につく形で、領兵として頑張ってもらうつもりだ。
ガイオたちがその役を受け入れたのは、レオのためというのもあるにはあるが、エレナのためでもある。
もしもムツィオにエレナが生存しているということを知られたら、後顧の憂いを絶つために刺客を仕向けてくるかもしれない。
その時に対処するためにも、隊として連携すればエレナへ手を出すことは阻止できるだろう。
そう言う思いもあって、ガイオたちはレオの申し出を受けることにしたのだ。
「エドモンドさんの方はいかがですか?」
「う~ん……、成果がいまいち分からないです」
ガイオと話していたところで、セバスティアーノが問いかけてきた。
エドモンドの方というのは、魔法で腕が再生できないかということだ。
ジーノの話だと、大和皇国の魔法使いに欠損した腕を治した者がいるという話だった。
治療が得意な魔法使いには、そういったことができるらしい。
しかし、それも一握りの人間で、貴重なため国のお抱えになっているそうだ。
それが【再生】という魔法らしい。
しかし、そのお抱えの魔法使いたちでさえ、長い期間【再生】の魔法を継続してかけることで治っていくという話だ。
多少治療の魔法が使えるからと言って、【再生】の魔法の訓練を始めて間もないレオがそう簡単に結果を出せるとは思わない。
ジーノですらもしかしたらということで教えたのだ。
教えたジーノの方は【回復】の魔法は使えても、【再生】の魔法は上手くないそうだ。
訓練と才能、それに性格が関わってくる魔法だといわれているため、人を選ぶ魔法なのかもしれない。
とりあえず、レオはエドモンドに全部説明したうえで魔法の練習相手になってもらっているが、答えたように成果は分からない。
「どうぞ!」
「あぁ、ありがとう!」
【再生】の魔法の成果が分からず、自分には才能がないのではないかと落ち込みそうになっているレオに、エレナが自家栽培のハーブを使ったお茶を出してくれた。
「ふ~……、落ち着くね……」
「ハーブティーはリラックス効果がありますから……」
出されたハーブティーを飲んで、レオは一息つく。
魔法の成長が感じられないでいた焦りが、どこかに飛んで行くかのようだ。
レオが落ち着いたような雰囲気になったのを感じ、エレナは自分のカップに注ぎながら微笑んだ。
「レオさんは考えることや、島のためにやらないといけないことが多いので、たまにはこうしてリラックスした方が良いですよ」
「……そうだね」
住人が増えた以上、領主として責任が増える。
なるべく彼らが楽しくのんびりと過ごしてもらいたいものだ。
そうなると、もっと開拓を進めて、田畑を広げて食料に困らないようにしたり、人を増やして経済を安定させたりとしなくてはならない。
これからどんどん書類仕事も増えていくことだろう。
それに加え、もしもの時の事を考えて自身の戦闘訓練や魔法の練習を続けなくてはならない。
領主は多くのことをしなくてはならない。
エレナは父や祖父を見てきたから、その苦労が分かるつもりだ。
そんな自分にできることと言ったら、今はレオの気分を落ち着かせるくらいしかない。
そう思い、エレナはハーブティーを用意したのだ。
「ありがとう。エレナ」
「……いいえ」
自分のためにハーブティーを用意してくれたのだと分かったレオは、エレナに感謝の言葉をかけた。
あまりにもまっすぐな目で言われたエレナは、照れくさそうに返事をしたのだった。
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
商会を立ち上げフェリーラ領へ船を送るようになり、レオはようやく住人を迎えることになった。
みんなディステ領から逃れてきた者たちで、店を持ちたいという者たちを先に連れて来てもらった。
そこに行けば大体の物が揃うようにするため、商店街のような場所を作るつもりだ。
どの場所で、どんな間取りが良いとかを聞いて、店舗を併設した住宅を建てるつもりだ。
それまでは仮設住宅に住んでいてもらうことになっている。
更に住人を増やすのは、店が開けるようになってからだ。
「ドワーフの方が監督してくれるのですか?」
「はい」
酒造をしてもらうために来てもらったドワーフのエドモンドだが、家の建築などにもかかわってもらっている。
ドワーフがかかわった建物は、同じ構造でも丈夫で長持ちするというジンクスがある。
そのため、新しく来た者たちも、自分の店舗がドワーフの監督によって建てられることが嬉しそうだ。
監督といっても、作業は他の者や人形にやってもらうので、細工が施された木材を組む順番を指示しているだけだ。
しかし、監督には変わりないので、そこにツッコミを入れるような者はいない。
「店の建設費用とかはどうなっているのですか?」
「住宅兼店舗の建設費は特別に無料です。開店費用は僕が無利子でお貸しするという形になります」
客となる住民もいない所に来てもらったのだから、住宅と店舗は無償で提供させてもらうつもりだ。
開店資金までも、全部を肩代わりするのは無理だが、利子無しの条件での貸すという条件なら何とかなるだろう。
これまでアルヴァロに魔物の素材を換金してもらい、貯めてきた資金を使えば何とかなるだろう。
先に住んでいた元ルイゼン領の者たちは、みんな領主であるレオの下に付くことになった。
みんなエレナについてきた者ばかりなので、半ば無理だと期待していなかったのだが、逃げて来たのが知られてはいけない海賊の者たちはともかく、エレナの下につくつもりなので断られると思っていたガイオたちまで付いてくれることになったのは意外だった。
エレナは客人として好きにしてもらうつもりだ。
基本レオと同様に野菜を育てたり、動物の世話をするのがメインとなるだろう。
それと、最近はハーブティーが作りたいと、畑の一画でハーブを育て始めている。
本当はそんなに働かずにのんびりしていて構わないのだが、エレナ自身がやりたいことのようなので、レオとしては止めるつもりはない。
「脚はどうですか? ガイオさん」
「痛みはない。落ちた筋肉さえ戻れば完治だな……」
長い間杖を突いて歩いていたガイオ。
しかし、今は杖もなく歩いても平気なようだ。
固定して動かさないようにしていたことで筋肉が落ちてしまったらしく、それを取り戻すように訓練を始めている。
「あんまり無理しないでくださいね……」
「あぁ……」
訓練相手に駆り出されたのは、ドナートとヴィートの兄弟だ。
1対1で棒と木剣による打ち合いをおこなったりしているのだが、脚が治ったばかりだというのに、ガイオの方が毎回勝利している。
体力も落ちていたせいか回数は少ないが、2人ともガイオに勝てないことで落ち込んでいるようだった。
万全の状態で怪我が治りたての人間に負けたのだから、しょうがないといえばしょうがない。
レオの場合、骨が付く前からやられているので、もう負けることにこだわらないようにしている。
毎回落ち込んでいたら、稽古なんてしなくなってしまいそうだからだ。
「普通ならもう少しかかるんだろうが、レオに魔法で治療してもらった結果だな……」
「ジーノさんの指導のお陰ですね」
ジーノの魔法指導で、レオは治療の魔法も教わった。
怪我や骨折を治す【回復】という魔法だ。
回復薬で怪我なら治すことはできるのだが、骨折までは治せない。
指導の一環としてレオがおこなったのだが、折れた患部に魔力を流し、【回復】の魔法をかけることで骨がくっつくのが早まった気がする。
ドナートとヴィートには悪いが、このまま訓練をして早いとこ元の強さに戻ってもらい、みんなの指導に当たって欲しいものだ。
ガイオをトップに置いて、ドナートとヴィートがその下につく形で、領兵として頑張ってもらうつもりだ。
ガイオたちがその役を受け入れたのは、レオのためというのもあるにはあるが、エレナのためでもある。
もしもムツィオにエレナが生存しているということを知られたら、後顧の憂いを絶つために刺客を仕向けてくるかもしれない。
その時に対処するためにも、隊として連携すればエレナへ手を出すことは阻止できるだろう。
そう言う思いもあって、ガイオたちはレオの申し出を受けることにしたのだ。
「エドモンドさんの方はいかがですか?」
「う~ん……、成果がいまいち分からないです」
ガイオと話していたところで、セバスティアーノが問いかけてきた。
エドモンドの方というのは、魔法で腕が再生できないかということだ。
ジーノの話だと、大和皇国の魔法使いに欠損した腕を治した者がいるという話だった。
治療が得意な魔法使いには、そういったことができるらしい。
しかし、それも一握りの人間で、貴重なため国のお抱えになっているそうだ。
それが【再生】という魔法らしい。
しかし、そのお抱えの魔法使いたちでさえ、長い期間【再生】の魔法を継続してかけることで治っていくという話だ。
多少治療の魔法が使えるからと言って、【再生】の魔法の訓練を始めて間もないレオがそう簡単に結果を出せるとは思わない。
ジーノですらもしかしたらということで教えたのだ。
教えたジーノの方は【回復】の魔法は使えても、【再生】の魔法は上手くないそうだ。
訓練と才能、それに性格が関わってくる魔法だといわれているため、人を選ぶ魔法なのかもしれない。
とりあえず、レオはエドモンドに全部説明したうえで魔法の練習相手になってもらっているが、答えたように成果は分からない。
「どうぞ!」
「あぁ、ありがとう!」
【再生】の魔法の成果が分からず、自分には才能がないのではないかと落ち込みそうになっているレオに、エレナが自家栽培のハーブを使ったお茶を出してくれた。
「ふ~……、落ち着くね……」
「ハーブティーはリラックス効果がありますから……」
出されたハーブティーを飲んで、レオは一息つく。
魔法の成長が感じられないでいた焦りが、どこかに飛んで行くかのようだ。
レオが落ち着いたような雰囲気になったのを感じ、エレナは自分のカップに注ぎながら微笑んだ。
「レオさんは考えることや、島のためにやらないといけないことが多いので、たまにはこうしてリラックスした方が良いですよ」
「……そうだね」
住人が増えた以上、領主として責任が増える。
なるべく彼らが楽しくのんびりと過ごしてもらいたいものだ。
そうなると、もっと開拓を進めて、田畑を広げて食料に困らないようにしたり、人を増やして経済を安定させたりとしなくてはならない。
これからどんどん書類仕事も増えていくことだろう。
それに加え、もしもの時の事を考えて自身の戦闘訓練や魔法の練習を続けなくてはならない。
領主は多くのことをしなくてはならない。
エレナは父や祖父を見てきたから、その苦労が分かるつもりだ。
そんな自分にできることと言ったら、今はレオの気分を落ち着かせるくらいしかない。
そう思い、エレナはハーブティーを用意したのだ。
「ありがとう。エレナ」
「……いいえ」
自分のためにハーブティーを用意してくれたのだと分かったレオは、エレナに感謝の言葉をかけた。
あまりにもまっすぐな目で言われたエレナは、照れくさそうに返事をしたのだった。