「これから防壁の外の魔物の調査に向かいますが、皆さん充分注意しつつ行動してください!」
「「「「「おうっ!!」」」」」
元海賊の者たちが来てから数日経ち、グラドとガンデに頼んでいた防壁作りも終了した。
それに伴い、レオは開拓を進めるために防壁の外側を調査することにした。
色々あって、この島の住民には戦闘自慢は何人もいる。
調査に協力してくれるという彼らを編成して、レオ班、ドナート班、ヴィート班の3班に分かれて調査に向かうことにした。
強力な魔物に遭遇しては逃げきることもできないかもしれないので、防壁内に逃げ込めるように森の深くには行かないように警告してある。
レオよりも戦闘経験豊富な者たちばかりなので、それを破るようなことはしないだろう。
「みんなも頼むよ?」
“コクッ!!”
主人であるレオに頼まれて、人形たちは了解したように頭を下げる。
スキルで動くロイたち木製人形たちも分かれてもらった。
レオ班にはロイ、護衛という訳でもないが、ドナート班にオル、ヴィート班にラグを付け、 元々は戦闘用に作ったわけではないのだが、グラドとガンデは防御役にできると思い、ドナート班とヴィートの班に盾役としてそれぞれ付いて行ってもらうことにした。
ロイだけだと領主であるレオが手薄になると、もう少し護衛を増やした方が良いのではないかと言われたが、調査範囲を一番狭くすることで納得してもらった。
「クオーレは残った住人のみんなを守ってね?」
「ニャッ!」
レオの従魔で、闇猫のクオーレには念のため残ってもらうことにした。
頭を撫でられながら頼まれたクオーレは、任せてと言わんばかりに鳴き声を上げる。
「こっちにはセバスやエドモンドに、ジーノのじいさんていう戦力も残っている。安心して行ってこい」
「はい」
足が完治していないガイオは当然だが、年齢的なものを考慮してエルフのジーノには残ってもらう。
エレナの執事のセバスティアーノも実は強いようだし、片腕とは言ってもドワーフのエドモンドも鉄鎚を使った戦闘ができるらしいので、むしろ残ってもらう人間の方が強いのではないかと思える。
そのため、レオは安心して調査に出られるというものだ。
「皆さん気を付けてくださいね?」
「「「「「はい!」」」」」
今でも充分ここの生活を楽しんでいるようだが、ここの発展はエレナの生活をより良くすることに繋がる。
そのため、元ルイゼン領の面々は、エレナの言葉に気合いが入っているようだ。
なるべく危険を冒さないという基本的な方針での調査とは言っても、どんな魔物が潜んでいるか分からないので、エレナは心配そうにしている。
クオーレを残すのは、実はそんなエレナの気を紛らわせるという役割のためでもある。
「では、出発しましょう!!」
「「「「「おうっ!!」」」」」
他の住民の見送りを受けながら、レオたちは住宅地から防壁の方へと向かって行った。
「っ!! ルマーカ!?」
北西へドナート班、西へレオ班、南西にヴィート班に分かれ、防壁の外の調査を始めたのだが、レオたちはすぐに魔物に遭遇することになった。
ルマーカという、成人男性程度の大きさをしたナメクジの魔物が出現したのだ。
これまで良く遭遇していたゴブリンや一角兎なんかの魔物よりも、この魔物の方が危険性は一段上だ。
「くっ! 斬っても意味がない!」
仲間の一人がルマーカを斬りつけるが、すぐに治ってしまった。
この魔物の厄介な所は、スライムという魔物同様に斬撃は意味がない所だ。
スライムならば、透ける体のせいで急所となる魔石の部分が分かっているのだが、ルマーカの場合それが分からないというのも面倒な理由だ。
「落ち着いて下さい! 塩を持ってきているので安心してください!」
「お、おうっ!」
最近は塩を作る仕事をする人間もいるため作っていないが、レオはこの島に着いてから毎日のように塩を作っていた。
調味料として使うため、余るぐらいにあっても困らないからだ。
売ってもたいした金額にもならないため魔法の指輪に保管していたが、今回はそれが役に立つ。
ナメクジには塩が有効。
魔物であってもそれは同じため、レオは塩をルマーカへ振りかけた。
「持っていてよかった!」
塩を浴びたルマーカは浸透圧で体の水分が抜けていき、どんどん小さくなって動かなくなった。
そうなってしまえば、後は魔石を取り出してしまって退治完了だ。
余っているからといって、塩を捨ててしまわず良かったとレオは安堵した。
「他のみんなは大丈夫っすかね?」
「ドナートさんたちなら大丈夫じゃないですか?」
ルマーカの対処法として塩があるのが理想的だが、レオとは違ってドナートたちは塩なんて持って出かけていない。
そのことに心配している人間がいたが、オーガ相手にも怯まず突っ込んで行った彼らなら、ルマーカを相手にするのも大丈夫だろうとレオは思っている。
塩がなくても、ルマーカは熱に弱いので、火を使えば何とかなるはずだ。
森の中なのでレオは火事になるのを心配したが、燃え広がらない所に誘導すれば火を使って倒せるはず。
ドナートたちならそう言った方法で倒せるのではないだろうか。
「粘液を食らわなくてよかったですね」
「あぁ……」
ルマーカは、粘液を吐きだして敵をそのネバネバで動けなくして踏み潰すという攻撃を得意とする。
今回はその攻撃を受ける前に倒せたので、そういった面でもラッキーだった。
「では、調査を続けましょう!」
開始早々に魔物に遭うくらいだ。
きっとこの先も頻繁に遭遇することだろう。
元々慎重に進むつもりでいた面々だったが、より気を引き締めることになった。
「これまでとはワンランク上の危険度で、虫系の魔物が多いですね……」
ルマーカ以降、出現した魔物を思い返してレオは独り言のように呟く。
ムカデ、ミミズ、イモムシと、虫が魔物化して巨大なった魔物がレオたちの前に出現していた。
危険といえば危険だが、どれも単体で出てきたため、みんなで囲んでしまえばそれほど難しくなく退治ができた。
そんなことする人間はいないと思うが、無防備に一人で出歩くなんてことをしなければ、とりあえず何とかなるだろう。
「もうすぐお昼になるようですし、これ以上進んで危険な目に遭う前に引き返しましょう」
「「「「「了解」」」」」
ノルマの範囲も調べられたし、時間的にもそろそろ戻った方が良いだろう。
そう思ったレオは皆と共に防壁の方へと戻ることにした。
範囲も狭く、慎重に進んでいたため、誰も怪我をすることなく終えられそうだ。
「……あれっ? ドナートさんの班が戻ってこないですね?」
「そうだな……」
調査範囲の関係上、遠くまで行っていないレオたちが最初に防壁の所へ戻って来られた。
他の班が戻ってくるのを待っていたら、少しして南西に向かったヴィート班も戻ってきた。
南西側を調査した結果を受けると、レオたちが調査した西側と同様に虫系の魔物の出現が目立ったそうだ。
人形たちだけでも隊を編成すれば数を減らせるだろう。
これまで通り人形たちに任せて、数が減らせたら防壁を広げることを検討しようと思う。
調査結果のやり取りも終わり、後はドナートが戻ってくるのを待つことにした。
しかし、昼食を取って待っているのだが、彼らはいつまで経っても戻ってこない。
たしかに、一番範囲の広い北西を任せたが、ここまで遅いと不安になってきた。
「あっ! 戻ってきた!」
「……様子が変だな?」
予定の集合時間から1時間以上経ち、流石に心配になって捜索に向かおうかと思っていたところで、ようやくドナートの班が戻ってきたのが確認できた。
しかし、ヴィートが言うように戻ってきたドナートたちの雰囲気が暗いように感じる。
「すまん。レオ……」
着くと同時に、ドナートはレオに謝ってきた。
魔物と戦ったためか、みんな細かい怪我を負っている。
しかし、誰も重傷には至っていないため安心したのだが、ドナートが背負ってきたものを見て暗かった理由がすぐに分かった。
「……オル?」
ドナートたちに付いて行ったレオの人形であるオルが、ボロボロの状態で動かなくなっていたのだ。
「仲間を庇って魔物の攻撃を受けちまって……」
「そうですか……」
話によると、ドナートたちが向かった北西も虫の魔物が多かったそうだ。
しかし、戻ろうとしたところでミミズの魔物の集団に囲まれてしまったそうだ。
みんなの奮闘でなんとか倒していたのだが、仲間の1人に魔物2体で襲い掛かってきたそうだ。
1人では対処できない攻撃を防ぐために、オルが身を挺して守ったらしい。
それにより、仲間は助かったがオルは動かなくなってしまったそうだ。
「……偉いぞ! オル! 何とか直してやるからな……」
仲間を救って動かなくなってしまったオルを、レオは優しく褒めてあげ、魔法の指輪に収納した。
人形なので直せばまた動かせるが、ボロボロなので元に戻せるかは微妙だ。
「みんな無事でよかったです。調査は終了して戻りましょう」
「あぁ……」
暗い雰囲気になってしまったが、誰も死なずに済んだのだ。
それを良しとして、レオたちは住宅地へと戻っていったのだった。
「「「「「おうっ!!」」」」」
元海賊の者たちが来てから数日経ち、グラドとガンデに頼んでいた防壁作りも終了した。
それに伴い、レオは開拓を進めるために防壁の外側を調査することにした。
色々あって、この島の住民には戦闘自慢は何人もいる。
調査に協力してくれるという彼らを編成して、レオ班、ドナート班、ヴィート班の3班に分かれて調査に向かうことにした。
強力な魔物に遭遇しては逃げきることもできないかもしれないので、防壁内に逃げ込めるように森の深くには行かないように警告してある。
レオよりも戦闘経験豊富な者たちばかりなので、それを破るようなことはしないだろう。
「みんなも頼むよ?」
“コクッ!!”
主人であるレオに頼まれて、人形たちは了解したように頭を下げる。
スキルで動くロイたち木製人形たちも分かれてもらった。
レオ班にはロイ、護衛という訳でもないが、ドナート班にオル、ヴィート班にラグを付け、 元々は戦闘用に作ったわけではないのだが、グラドとガンデは防御役にできると思い、ドナート班とヴィートの班に盾役としてそれぞれ付いて行ってもらうことにした。
ロイだけだと領主であるレオが手薄になると、もう少し護衛を増やした方が良いのではないかと言われたが、調査範囲を一番狭くすることで納得してもらった。
「クオーレは残った住人のみんなを守ってね?」
「ニャッ!」
レオの従魔で、闇猫のクオーレには念のため残ってもらうことにした。
頭を撫でられながら頼まれたクオーレは、任せてと言わんばかりに鳴き声を上げる。
「こっちにはセバスやエドモンドに、ジーノのじいさんていう戦力も残っている。安心して行ってこい」
「はい」
足が完治していないガイオは当然だが、年齢的なものを考慮してエルフのジーノには残ってもらう。
エレナの執事のセバスティアーノも実は強いようだし、片腕とは言ってもドワーフのエドモンドも鉄鎚を使った戦闘ができるらしいので、むしろ残ってもらう人間の方が強いのではないかと思える。
そのため、レオは安心して調査に出られるというものだ。
「皆さん気を付けてくださいね?」
「「「「「はい!」」」」」
今でも充分ここの生活を楽しんでいるようだが、ここの発展はエレナの生活をより良くすることに繋がる。
そのため、元ルイゼン領の面々は、エレナの言葉に気合いが入っているようだ。
なるべく危険を冒さないという基本的な方針での調査とは言っても、どんな魔物が潜んでいるか分からないので、エレナは心配そうにしている。
クオーレを残すのは、実はそんなエレナの気を紛らわせるという役割のためでもある。
「では、出発しましょう!!」
「「「「「おうっ!!」」」」」
他の住民の見送りを受けながら、レオたちは住宅地から防壁の方へと向かって行った。
「っ!! ルマーカ!?」
北西へドナート班、西へレオ班、南西にヴィート班に分かれ、防壁の外の調査を始めたのだが、レオたちはすぐに魔物に遭遇することになった。
ルマーカという、成人男性程度の大きさをしたナメクジの魔物が出現したのだ。
これまで良く遭遇していたゴブリンや一角兎なんかの魔物よりも、この魔物の方が危険性は一段上だ。
「くっ! 斬っても意味がない!」
仲間の一人がルマーカを斬りつけるが、すぐに治ってしまった。
この魔物の厄介な所は、スライムという魔物同様に斬撃は意味がない所だ。
スライムならば、透ける体のせいで急所となる魔石の部分が分かっているのだが、ルマーカの場合それが分からないというのも面倒な理由だ。
「落ち着いて下さい! 塩を持ってきているので安心してください!」
「お、おうっ!」
最近は塩を作る仕事をする人間もいるため作っていないが、レオはこの島に着いてから毎日のように塩を作っていた。
調味料として使うため、余るぐらいにあっても困らないからだ。
売ってもたいした金額にもならないため魔法の指輪に保管していたが、今回はそれが役に立つ。
ナメクジには塩が有効。
魔物であってもそれは同じため、レオは塩をルマーカへ振りかけた。
「持っていてよかった!」
塩を浴びたルマーカは浸透圧で体の水分が抜けていき、どんどん小さくなって動かなくなった。
そうなってしまえば、後は魔石を取り出してしまって退治完了だ。
余っているからといって、塩を捨ててしまわず良かったとレオは安堵した。
「他のみんなは大丈夫っすかね?」
「ドナートさんたちなら大丈夫じゃないですか?」
ルマーカの対処法として塩があるのが理想的だが、レオとは違ってドナートたちは塩なんて持って出かけていない。
そのことに心配している人間がいたが、オーガ相手にも怯まず突っ込んで行った彼らなら、ルマーカを相手にするのも大丈夫だろうとレオは思っている。
塩がなくても、ルマーカは熱に弱いので、火を使えば何とかなるはずだ。
森の中なのでレオは火事になるのを心配したが、燃え広がらない所に誘導すれば火を使って倒せるはず。
ドナートたちならそう言った方法で倒せるのではないだろうか。
「粘液を食らわなくてよかったですね」
「あぁ……」
ルマーカは、粘液を吐きだして敵をそのネバネバで動けなくして踏み潰すという攻撃を得意とする。
今回はその攻撃を受ける前に倒せたので、そういった面でもラッキーだった。
「では、調査を続けましょう!」
開始早々に魔物に遭うくらいだ。
きっとこの先も頻繁に遭遇することだろう。
元々慎重に進むつもりでいた面々だったが、より気を引き締めることになった。
「これまでとはワンランク上の危険度で、虫系の魔物が多いですね……」
ルマーカ以降、出現した魔物を思い返してレオは独り言のように呟く。
ムカデ、ミミズ、イモムシと、虫が魔物化して巨大なった魔物がレオたちの前に出現していた。
危険といえば危険だが、どれも単体で出てきたため、みんなで囲んでしまえばそれほど難しくなく退治ができた。
そんなことする人間はいないと思うが、無防備に一人で出歩くなんてことをしなければ、とりあえず何とかなるだろう。
「もうすぐお昼になるようですし、これ以上進んで危険な目に遭う前に引き返しましょう」
「「「「「了解」」」」」
ノルマの範囲も調べられたし、時間的にもそろそろ戻った方が良いだろう。
そう思ったレオは皆と共に防壁の方へと戻ることにした。
範囲も狭く、慎重に進んでいたため、誰も怪我をすることなく終えられそうだ。
「……あれっ? ドナートさんの班が戻ってこないですね?」
「そうだな……」
調査範囲の関係上、遠くまで行っていないレオたちが最初に防壁の所へ戻って来られた。
他の班が戻ってくるのを待っていたら、少しして南西に向かったヴィート班も戻ってきた。
南西側を調査した結果を受けると、レオたちが調査した西側と同様に虫系の魔物の出現が目立ったそうだ。
人形たちだけでも隊を編成すれば数を減らせるだろう。
これまで通り人形たちに任せて、数が減らせたら防壁を広げることを検討しようと思う。
調査結果のやり取りも終わり、後はドナートが戻ってくるのを待つことにした。
しかし、昼食を取って待っているのだが、彼らはいつまで経っても戻ってこない。
たしかに、一番範囲の広い北西を任せたが、ここまで遅いと不安になってきた。
「あっ! 戻ってきた!」
「……様子が変だな?」
予定の集合時間から1時間以上経ち、流石に心配になって捜索に向かおうかと思っていたところで、ようやくドナートの班が戻ってきたのが確認できた。
しかし、ヴィートが言うように戻ってきたドナートたちの雰囲気が暗いように感じる。
「すまん。レオ……」
着くと同時に、ドナートはレオに謝ってきた。
魔物と戦ったためか、みんな細かい怪我を負っている。
しかし、誰も重傷には至っていないため安心したのだが、ドナートが背負ってきたものを見て暗かった理由がすぐに分かった。
「……オル?」
ドナートたちに付いて行ったレオの人形であるオルが、ボロボロの状態で動かなくなっていたのだ。
「仲間を庇って魔物の攻撃を受けちまって……」
「そうですか……」
話によると、ドナートたちが向かった北西も虫の魔物が多かったそうだ。
しかし、戻ろうとしたところでミミズの魔物の集団に囲まれてしまったそうだ。
みんなの奮闘でなんとか倒していたのだが、仲間の1人に魔物2体で襲い掛かってきたそうだ。
1人では対処できない攻撃を防ぐために、オルが身を挺して守ったらしい。
それにより、仲間は助かったがオルは動かなくなってしまったそうだ。
「……偉いぞ! オル! 何とか直してやるからな……」
仲間を救って動かなくなってしまったオルを、レオは優しく褒めてあげ、魔法の指輪に収納した。
人形なので直せばまた動かせるが、ボロボロなので元に戻せるかは微妙だ。
「みんな無事でよかったです。調査は終了して戻りましょう」
「あぁ……」
暗い雰囲気になってしまったが、誰も死なずに済んだのだ。
それを良しとして、レオたちは住宅地へと戻っていったのだった。