「トマトがいっぱい取れたね」
「ニャ~!」
いつものように畑仕事に精を出すレオ。
近くには闇猫のクオーレが付いてきている。
少しの範囲であるが、人の暮らす範囲を広げるように防壁を造ることを開始した。
とは言っても、それはレオが新たに作った人形たちが担当しているので、レオとしてはこれまでとは特に生活は変わっていない。
住民のための家の建設も他のみんなで協力しているし、布人形たちが分散して細工することで速いペースで進んでいっている。
人形ばかり動かしてレオは何もしていないという訳ではなく、畑を広げることを担当している。
住民も増えたし、アルヴァロに頼んで種を手に入れ、野菜の種類を増やしている。
新たに広げた畑にはまだ芽が出たばかりだが、元々一人にしては大きめに作ってしまった畑には、トマトの実が沢山なっていた。
レオが好きな野菜だからといっても、植えすぎたために余ってしまいそうになるほどだ。
トマトが大量に採れたことを喜ぶレオに、クオーレも楽しそうだ。
「お昼はトマトを使ったスパゲッティにしよう!」
「フフ、レオさんは料理が好きですね?」
トマトを見て何の料理を作ろうかと考えて入ると、一緒に野菜の採取をしていたエレナは、そんなレオをおかしそうに笑みを浮かべながら問いかけてきた。
貴族でお嬢様育ちのエレナには、何か仕事を頼むのは気が引けていたのだが、畑仕事をずっとやってみたかったと言われて、手伝ってもらうようになっていた。
虫に怯えるところはあるが、本人も楽しそうだし、レオとしてはかなり助かっている。
「料理も楽しいよ」
「そうですか? 今度教えてもらおうかしら……」
「いいよ」
料理の楽しさは家を出てから知ったため、レオの調理の腕はそこまで上手いわけではない。
だが、色々な調理法を知っているおかげでバリエーションは豊富だ。
エレナについてきた料理担当の使用人もいることからたまにしか料理をしなくなったが、やっぱり料理をするのは楽しい。
レオの気持ちが伝わったのか、エレナも料理をやってみたくなってきたようだ。
趣味仲間を増やすことができそうな雰囲気に、レオも嬉しそうに調理指導を了承した。
「レオ殿、収穫終わりました!」
「……速いですね。セバスさん」
「恐縮です!」
レオとエレナが楽しそうに話しながら収穫をしていると、セバスティアーノが籠一杯に収穫した野菜を持って現れた。
収穫する範囲がかなりあったのにもかかわらず、あまりの手際の良さにレオは驚いた。
レオの能力や人となりを知って、エレナと少し仲良くなったからか、セバスティアーノからセバスと呼ぶように言われた。
有能な人のようなのはなんとなく分かっていたのだが、色々有能すぎる気がする。
「はい! 魔物のお肉にトマトを使ったミートソーススパゲッティだよ!」
トマトの料理と言ってレオが最初に思いついたのが、シンプルだがとても美味しいミートソーススパゲッティだ。
好きなので、レオは結構頻繁に作るため、一番自信がある料理かもしれない。
魔物の肉はロイたちが狩ってくれるので売るほど余っている。
そのため、結構多めに入れている。
「エレナにも手伝ってもらったサラダとトマトスープも作ってみた」
エレナにも協力してもらって盛りつけたサラダと、搾ったトマトの汁で数種類の野菜を煮込んだトマトスープも出す。
「手伝ったと言っても、ちぎって盛りつけただけですが……」
早速料理を手伝ってもらうことにしたレオは、エレナにサラダを作ることを頼んだ。
野菜をざっと切るだけなので、最初の料理にするには安全だと思ったためだ。
自分が作ったとちょっと言いにくいせいか、エレナは少し照れ臭そうだ。
「おぉ! なかなか美味いな……」
「美味え! けど肉がもっと欲しい!」
「肉が食いたいだけだろ?」
レオとエレナの料理にみんな好評なようだ。
ガイオの船に乗って来たのは海賊狩りの船員と家族、それとエレナについてきた使用人とその家族だ。
いつまでもみんな一緒の場所で暮らすのも気が休まらないかもしれないので、それぞれの家庭用に家を建てている。
それまでの間にと建てた大きな建物は、食堂の代わりとして使用中だ。
みんなで食べるのが楽しいということもあって、自然とこのような感じになっている。
「美味しいです!」
「それは良かった」
エレナにも喜んでもらえ、レオとしても作った甲斐がある。
みんなでの食事は、レオにはまだ新鮮に思える。
そのせいか、自分で作った料理が前よりも美味しく感じる。
「美味しいものが食べられるってことは大事なことだよ。僕は昔病弱だったからね」
「そうなのですか?」
レオがどういう経緯でこの島で領主をしているのかは、住民のみんなには話していない。
別に隠しているつもりはないので、レオは昔のことを少し話すことにした。
「そのせいで家から追い出されたんだけど……」
「そうですか……」
病弱で役に立たないと判断され、父や兄に邪魔者扱いされるようにこの島へ来たことを伝えると、聞いていたみんなは少し表情を暗くした。
こんな危険な地へ送られれば、もしもレオにスキルがなかったら初日の内に死んでいたことだろう。
つまりはそうなってもいいという思惑からここへ送ったことになるため、みんなはディステ家への不信感が強くなった。
「でも、今は健康そうですけど?」
「うん。スキルを手にいれてからちょっとずつ良くなったんだ」
暗くなりかけた空気を戻そうと、エレナは話を少し変えることにした。
レオとしても、その方が良いと思いその疑問に乗ることにした。
「魔物を倒すと能力が上がるって説があるでしょ?」
「えぇ、証明されていませんが……」
どうやらエレナも同じ説のことを知っていたらしく、レオの言葉に首を傾げる。
やはりこの説は立証されていないため、デマ扱いされているようだ。
「僕が証明になると思うよ。密かにロイに魔物の退治をさせていたら体調が改善されたから」
「へぇ~……、面白いなそれ!」
病弱だったのに、魔物を倒しただけでどうして健康になれたのかは分からないが、それ以外にレオが健康になった理由は思いつかない。
スキルを手に入れたからという考えもできるが、ロイに密かに魔物退治に行かせてから良くなったという自覚があるため、レオとしてはこの説をデマだとは思っていない。
そのことを話すと、エレナでなくガイオの方が強く反応した。
ここの開拓を進めるには脅威となる、未知の魔物がまだ潜んでいるかもしれない。
その時のために、ガイオは足が治ったら訓練代わりにロイたちと共に周辺の魔物退治に向かうことを予定している。
レオが言うように魔物を倒していれば強くなれるなら、一石二鳥だと思ったのだろう。
「ニャ~!」
「ん? お代わりかい?」
闇猫のクオーレは魚の料理が1番好きなようだが、レオが作った料理はどれもちゃんと食べる。
猫と言っても魔物なので、与えてはいけない食材を気にしなくていいのはありがたい。
成猫になったので少し多めに盛りつけたのだが、それでも足りなかったようだ。
「今度は魚料理にしようかな?」
「ニャッ!!」
「……今日じゃないよ」
お代わりを出してクオーレが食べるのを見ていると、ふと次の料理を何にするか考えてしまう。
クオーレを見ていたら、なんとなく魚料理が浮かんできた。
思わずそれを言うと、魚料理をおなか一杯食べたいと思ったのか、クオーレは急に食べるのをやめてしまった。
その思いを察したレオは、ツッコミを入れるように注意した。
「ニャ~!」
いつものように畑仕事に精を出すレオ。
近くには闇猫のクオーレが付いてきている。
少しの範囲であるが、人の暮らす範囲を広げるように防壁を造ることを開始した。
とは言っても、それはレオが新たに作った人形たちが担当しているので、レオとしてはこれまでとは特に生活は変わっていない。
住民のための家の建設も他のみんなで協力しているし、布人形たちが分散して細工することで速いペースで進んでいっている。
人形ばかり動かしてレオは何もしていないという訳ではなく、畑を広げることを担当している。
住民も増えたし、アルヴァロに頼んで種を手に入れ、野菜の種類を増やしている。
新たに広げた畑にはまだ芽が出たばかりだが、元々一人にしては大きめに作ってしまった畑には、トマトの実が沢山なっていた。
レオが好きな野菜だからといっても、植えすぎたために余ってしまいそうになるほどだ。
トマトが大量に採れたことを喜ぶレオに、クオーレも楽しそうだ。
「お昼はトマトを使ったスパゲッティにしよう!」
「フフ、レオさんは料理が好きですね?」
トマトを見て何の料理を作ろうかと考えて入ると、一緒に野菜の採取をしていたエレナは、そんなレオをおかしそうに笑みを浮かべながら問いかけてきた。
貴族でお嬢様育ちのエレナには、何か仕事を頼むのは気が引けていたのだが、畑仕事をずっとやってみたかったと言われて、手伝ってもらうようになっていた。
虫に怯えるところはあるが、本人も楽しそうだし、レオとしてはかなり助かっている。
「料理も楽しいよ」
「そうですか? 今度教えてもらおうかしら……」
「いいよ」
料理の楽しさは家を出てから知ったため、レオの調理の腕はそこまで上手いわけではない。
だが、色々な調理法を知っているおかげでバリエーションは豊富だ。
エレナについてきた料理担当の使用人もいることからたまにしか料理をしなくなったが、やっぱり料理をするのは楽しい。
レオの気持ちが伝わったのか、エレナも料理をやってみたくなってきたようだ。
趣味仲間を増やすことができそうな雰囲気に、レオも嬉しそうに調理指導を了承した。
「レオ殿、収穫終わりました!」
「……速いですね。セバスさん」
「恐縮です!」
レオとエレナが楽しそうに話しながら収穫をしていると、セバスティアーノが籠一杯に収穫した野菜を持って現れた。
収穫する範囲がかなりあったのにもかかわらず、あまりの手際の良さにレオは驚いた。
レオの能力や人となりを知って、エレナと少し仲良くなったからか、セバスティアーノからセバスと呼ぶように言われた。
有能な人のようなのはなんとなく分かっていたのだが、色々有能すぎる気がする。
「はい! 魔物のお肉にトマトを使ったミートソーススパゲッティだよ!」
トマトの料理と言ってレオが最初に思いついたのが、シンプルだがとても美味しいミートソーススパゲッティだ。
好きなので、レオは結構頻繁に作るため、一番自信がある料理かもしれない。
魔物の肉はロイたちが狩ってくれるので売るほど余っている。
そのため、結構多めに入れている。
「エレナにも手伝ってもらったサラダとトマトスープも作ってみた」
エレナにも協力してもらって盛りつけたサラダと、搾ったトマトの汁で数種類の野菜を煮込んだトマトスープも出す。
「手伝ったと言っても、ちぎって盛りつけただけですが……」
早速料理を手伝ってもらうことにしたレオは、エレナにサラダを作ることを頼んだ。
野菜をざっと切るだけなので、最初の料理にするには安全だと思ったためだ。
自分が作ったとちょっと言いにくいせいか、エレナは少し照れ臭そうだ。
「おぉ! なかなか美味いな……」
「美味え! けど肉がもっと欲しい!」
「肉が食いたいだけだろ?」
レオとエレナの料理にみんな好評なようだ。
ガイオの船に乗って来たのは海賊狩りの船員と家族、それとエレナについてきた使用人とその家族だ。
いつまでもみんな一緒の場所で暮らすのも気が休まらないかもしれないので、それぞれの家庭用に家を建てている。
それまでの間にと建てた大きな建物は、食堂の代わりとして使用中だ。
みんなで食べるのが楽しいということもあって、自然とこのような感じになっている。
「美味しいです!」
「それは良かった」
エレナにも喜んでもらえ、レオとしても作った甲斐がある。
みんなでの食事は、レオにはまだ新鮮に思える。
そのせいか、自分で作った料理が前よりも美味しく感じる。
「美味しいものが食べられるってことは大事なことだよ。僕は昔病弱だったからね」
「そうなのですか?」
レオがどういう経緯でこの島で領主をしているのかは、住民のみんなには話していない。
別に隠しているつもりはないので、レオは昔のことを少し話すことにした。
「そのせいで家から追い出されたんだけど……」
「そうですか……」
病弱で役に立たないと判断され、父や兄に邪魔者扱いされるようにこの島へ来たことを伝えると、聞いていたみんなは少し表情を暗くした。
こんな危険な地へ送られれば、もしもレオにスキルがなかったら初日の内に死んでいたことだろう。
つまりはそうなってもいいという思惑からここへ送ったことになるため、みんなはディステ家への不信感が強くなった。
「でも、今は健康そうですけど?」
「うん。スキルを手にいれてからちょっとずつ良くなったんだ」
暗くなりかけた空気を戻そうと、エレナは話を少し変えることにした。
レオとしても、その方が良いと思いその疑問に乗ることにした。
「魔物を倒すと能力が上がるって説があるでしょ?」
「えぇ、証明されていませんが……」
どうやらエレナも同じ説のことを知っていたらしく、レオの言葉に首を傾げる。
やはりこの説は立証されていないため、デマ扱いされているようだ。
「僕が証明になると思うよ。密かにロイに魔物の退治をさせていたら体調が改善されたから」
「へぇ~……、面白いなそれ!」
病弱だったのに、魔物を倒しただけでどうして健康になれたのかは分からないが、それ以外にレオが健康になった理由は思いつかない。
スキルを手に入れたからという考えもできるが、ロイに密かに魔物退治に行かせてから良くなったという自覚があるため、レオとしてはこの説をデマだとは思っていない。
そのことを話すと、エレナでなくガイオの方が強く反応した。
ここの開拓を進めるには脅威となる、未知の魔物がまだ潜んでいるかもしれない。
その時のために、ガイオは足が治ったら訓練代わりにロイたちと共に周辺の魔物退治に向かうことを予定している。
レオが言うように魔物を倒していれば強くなれるなら、一石二鳥だと思ったのだろう。
「ニャ~!」
「ん? お代わりかい?」
闇猫のクオーレは魚の料理が1番好きなようだが、レオが作った料理はどれもちゃんと食べる。
猫と言っても魔物なので、与えてはいけない食材を気にしなくていいのはありがたい。
成猫になったので少し多めに盛りつけたのだが、それでも足りなかったようだ。
「今度は魚料理にしようかな?」
「ニャッ!!」
「……今日じゃないよ」
お代わりを出してクオーレが食べるのを見ていると、ふと次の料理を何にするか考えてしまう。
クオーレを見ていたら、なんとなく魚料理が浮かんできた。
思わずそれを言うと、魚料理をおなか一杯食べたいと思ったのか、クオーレは急に食べるのをやめてしまった。
その思いを察したレオは、ツッコミを入れるように注意した。