「あそこですね?」
「あぁ、報告通りだな……」
樹の陰に隠れてレオが覗き込むと、そこにはゴブリンたちが出入りしている洞窟が見えた。
ゴブリン討伐に加わったドナートもそれを確認して頷く。
ロイが発見して教えてくれたように、レオたちが前回調査したところから少し森の奥へ向かったところに存在していた。
「結構近場だったな……」
「ですね……」
ドナートと共に参加しているヴィートの言うように、レオたちの家がある所からはそんなに離れていない。
もしもゴブリンたちがレオたちのことを先に気付いていたら、攻め込んで来る可能性も考えられた。
こちらが先に動いたことは成功だったと言って良いだろう。
「中に入った訳ではないので分からないですが、約100といったところです」
「ゴブリンが100か……」
「まぁ、何とかなるだろ……」
ロイたちに交代で洞窟を見張ってもらったのだが、出入りする人数と運ばれる食料から簡単に計算した結果、100体ほどのゴブリンがこの洞窟を拠点にしているという結論になった。
ゴブリン1体ならたいしたことないが、数が多くなると話が変わる。
1人で何体も相手にするには相当な実力がないと、危険なために人数を揃えなくてはいけなくなる。
100体でも結構な数だが、今回はヴィートの言う通り何とかなりそうだ。
「作戦通り行動を開始します。2人はフォローをお願いします」
「おう!」「了解!」
ゴブリンとはいえ多くの魔物を相手にするのにもかかわらず、討伐に来ているのはたった3人。
とても100体相手にするのには少なすぎる。
しかし、この討伐のためにちゃんと作戦は練ってある。
その作戦実行のために、3人は行動を開始することにした。
「頼むよ? みんな!」
“コクッ!”
戦いに参戦しているのは3人だが、当然レオのスキルによる人形たちも参戦している。
ガイオの海賊狩りの船員たちが何とかしてくれると思うので、家周りの守備はクオーレに任せてきた。
そのため、常時動かしているロイたち4体を全部連れてきた。
武器を装備した4体は、戦力としてかなり期待している。
レオが小声で期待の言葉をかけると、ロイたち人形は頷きで返した。
「GO!!」
レオの合図で全員が動き出す。
作戦の最初は洞窟付近に散らばっているゴブリンたちの始末だ。
「ギッ!?」「ゲギャッ!!」
いきなりの襲撃にゴブリンたちは慌て始める。
しかし、洞窟内の仲間へ報告を行こうとする者もいたが、ドナートとヴィートの槍によってあっという間に始末された。
レオは戦闘をせず、ロイに守られながら洞窟入り口へ一直線に向かう。
魔法の指輪にあらかじめ用意しておいた燃えやすい木を出し、すぐさま着火する。
「よしっ! あとは出て来たのを順次撃退で……」
「あぁ!」「よし!」
洞窟の出入り口で焚火したことで、内部にいるゴブリンは入って来た煙で慌てて飛び出してくるはずだ。
内部が深ければ一酸化炭素中毒死するだろうし、慌てて出てきたとしても出入り口は一つ。
ここで待ち伏せしていれば列を組んで向かってくるはずだ。
出入口はまあまあ大きいが、ゴブリンが出て来られるのは2列ほど。
これなら人数が少なくても対応可能だろう。
それに、煙が充満しようと関係ないロイたち木製人形たちが洞窟内で数を減らすので、ドナートたちは漏らした敵を始末するだけの簡単な作業だ。
人が住んでいる所なら人質が連れ去られている可能性もあるが、ここは誰も住んでいないはず。
人質など気にしないでこの作戦を実行できる。
「……終わったか?」
内部からゴブリンのものらしき呻き声が聞こえなくなってきた。
煙を送り始めて数分経つし、中に居たとしても生きているのは難しいはずだ。
作戦が成功したような雰囲気に、ドナートは安堵したように呟いた。
「「「っ!?」」」
しかし、レオを含めた3人が終了したと思っていたところで、様子が変わってきた。
中に入っていたロイたちが慌てたように戻って来たのだ。
「どうしたの!? 何かあったの!?」
「何だ?」
「俺たちにも下がれって言ってんのか?」
出てきたロイたち4体の人形はロイとオルがレオを抱え、ラグがドナート、ドナがヴィートの腕を引っ張る。
まるで下がるように言っているかのようだ。
それに気付いた3人は、4体の行動に従って洞窟から離れる。
「グルッ……!!」
「「「っ!!」」」
洞窟内にまだ生き残りがいたらしく、呻くような声が聞こえて来た。
それを気が付いた3人が目を向けると、
「なっ!! オーガ!!」
身長2m以上の巨体をした鬼が洞窟内から姿を現した。
いきなりの危険な魔物の出現に、レオは驚きの声をあげる。
オーガは、ゴブリンなんて比べ物にならないほどの危険生物である。
大物の魔物の出現に慌ててしまうのも無理はない。
“ババッ!!”
「っ!! ドナートさん! ヴィートさん!!」
オーガが出たことで慌てているレオと違い、ドナートとヴィートは何故かオーガへ向かって駆け出した。
あまりに危険な行為に、レオは止めようと手を伸ばす。
しかし、その手が届くはずもなく、2人はオーガへ向かって行ってしまった。
「っ!! そうか!!」
オーガを相手にするのに2人では無謀すぎる。
しかし、2人は迷わず向かって行く。
レオがその理由が分からないでいたが、それがどうしてなのかを理解した。
「ロイたちも今のうちにオーガを攻撃するんだ!!」
“コクッ!”
2人の無謀な行動理由を理解したレオは、すぐにロイたちも攻めかかるように指示をする。
レオの命令に断る訳もなく、ロイたちは頷きを返すとドナートたちの後を追った。
「ハッ!!」
「ガアッ!!」
最初にドナートがオーガへと攻撃を開始する。
接近による速度を生かした槍による強力な突きが、オーガの右足へと突き刺さる。
その攻撃の痛みで、オーガは呻き声を上げる。
「もう一発!!」
「グァッ!!」
ドナートの攻撃を食らったすぐ近くへ、ヴィートの槍が突き刺さる。
強力な痛みにより、またも呻き声を上げたオーガは、左膝をついて座り込んだ。
「グッ!?」
足の痛みに呻いているオーガへ、今度はロイたちが襲い掛かる。
座ったことで下がった顔面目掛けて、ドナによる矢が高速で飛んで来る。
「グアァッ!!」
右目に突き刺さり、オーガはまた大きな声をあげる。
そして、ロイは剣で、オルは槍で、ラグは2本の短剣でオーガへ攻撃をする。
反射的に右目を抑えた右手は無視し、空いている左手をズタズタに斬り刻んだ。
「ナイス!!」
「止めだ!!」
ロイたちが攻撃をしている間に、ドナートとヴィートはオーガの背後へと回り込む。
そして、注意を引き付けてくれていたロイたちを褒めると、そのまま一気にオーガの背中から2人同時に攻めかかった。
「ガアァッ!!」
心臓のあると思われる場所を背中から突き刺し、一気に止めを刺した。
2本の槍が深々と刺さったオーガは、一瞬呻き声を上げるとそのまま前のめりに崩れ落ちて行った。
「すごい! さすが戦い慣れていますね……」
念のため倒れたオーガをそのままにして様子を見、死んでいることを確認した3人は改めて倒れているオーガへと近付いて行った。
そして倒れているオーガを眺めたレオは、思わずドナートたちの判断力の良さに感心した。
「オーガも煙でまともな状態じゃなかったんですね?」
「「その通り!」」
オーガが出て慌てたレオと違い、ドナートたちはオーガの足がふらつき目も焦点が合っていないことを瞬時に見抜いた。
煙による一酸化炭素中毒はゴブリンだけでなくオーガへもちゃんと通用していたのだ。
オーガも必死に外へ逃れて来たらしく、武器と呼べるものも所持していなかった。
武器もなく状態異常では、気を付けさえすればオーガですら何とかなる。
まずは念のために足を潰し、ロイたちが来てくれたことで止めを刺すために動くことができた。
強力な魔物の出現に慌てずに行動した勇敢さに、レオは尊敬した眼差しを2人に向けたのだった。
「あぁ、報告通りだな……」
樹の陰に隠れてレオが覗き込むと、そこにはゴブリンたちが出入りしている洞窟が見えた。
ゴブリン討伐に加わったドナートもそれを確認して頷く。
ロイが発見して教えてくれたように、レオたちが前回調査したところから少し森の奥へ向かったところに存在していた。
「結構近場だったな……」
「ですね……」
ドナートと共に参加しているヴィートの言うように、レオたちの家がある所からはそんなに離れていない。
もしもゴブリンたちがレオたちのことを先に気付いていたら、攻め込んで来る可能性も考えられた。
こちらが先に動いたことは成功だったと言って良いだろう。
「中に入った訳ではないので分からないですが、約100といったところです」
「ゴブリンが100か……」
「まぁ、何とかなるだろ……」
ロイたちに交代で洞窟を見張ってもらったのだが、出入りする人数と運ばれる食料から簡単に計算した結果、100体ほどのゴブリンがこの洞窟を拠点にしているという結論になった。
ゴブリン1体ならたいしたことないが、数が多くなると話が変わる。
1人で何体も相手にするには相当な実力がないと、危険なために人数を揃えなくてはいけなくなる。
100体でも結構な数だが、今回はヴィートの言う通り何とかなりそうだ。
「作戦通り行動を開始します。2人はフォローをお願いします」
「おう!」「了解!」
ゴブリンとはいえ多くの魔物を相手にするのにもかかわらず、討伐に来ているのはたった3人。
とても100体相手にするのには少なすぎる。
しかし、この討伐のためにちゃんと作戦は練ってある。
その作戦実行のために、3人は行動を開始することにした。
「頼むよ? みんな!」
“コクッ!”
戦いに参戦しているのは3人だが、当然レオのスキルによる人形たちも参戦している。
ガイオの海賊狩りの船員たちが何とかしてくれると思うので、家周りの守備はクオーレに任せてきた。
そのため、常時動かしているロイたち4体を全部連れてきた。
武器を装備した4体は、戦力としてかなり期待している。
レオが小声で期待の言葉をかけると、ロイたち人形は頷きで返した。
「GO!!」
レオの合図で全員が動き出す。
作戦の最初は洞窟付近に散らばっているゴブリンたちの始末だ。
「ギッ!?」「ゲギャッ!!」
いきなりの襲撃にゴブリンたちは慌て始める。
しかし、洞窟内の仲間へ報告を行こうとする者もいたが、ドナートとヴィートの槍によってあっという間に始末された。
レオは戦闘をせず、ロイに守られながら洞窟入り口へ一直線に向かう。
魔法の指輪にあらかじめ用意しておいた燃えやすい木を出し、すぐさま着火する。
「よしっ! あとは出て来たのを順次撃退で……」
「あぁ!」「よし!」
洞窟の出入り口で焚火したことで、内部にいるゴブリンは入って来た煙で慌てて飛び出してくるはずだ。
内部が深ければ一酸化炭素中毒死するだろうし、慌てて出てきたとしても出入り口は一つ。
ここで待ち伏せしていれば列を組んで向かってくるはずだ。
出入口はまあまあ大きいが、ゴブリンが出て来られるのは2列ほど。
これなら人数が少なくても対応可能だろう。
それに、煙が充満しようと関係ないロイたち木製人形たちが洞窟内で数を減らすので、ドナートたちは漏らした敵を始末するだけの簡単な作業だ。
人が住んでいる所なら人質が連れ去られている可能性もあるが、ここは誰も住んでいないはず。
人質など気にしないでこの作戦を実行できる。
「……終わったか?」
内部からゴブリンのものらしき呻き声が聞こえなくなってきた。
煙を送り始めて数分経つし、中に居たとしても生きているのは難しいはずだ。
作戦が成功したような雰囲気に、ドナートは安堵したように呟いた。
「「「っ!?」」」
しかし、レオを含めた3人が終了したと思っていたところで、様子が変わってきた。
中に入っていたロイたちが慌てたように戻って来たのだ。
「どうしたの!? 何かあったの!?」
「何だ?」
「俺たちにも下がれって言ってんのか?」
出てきたロイたち4体の人形はロイとオルがレオを抱え、ラグがドナート、ドナがヴィートの腕を引っ張る。
まるで下がるように言っているかのようだ。
それに気付いた3人は、4体の行動に従って洞窟から離れる。
「グルッ……!!」
「「「っ!!」」」
洞窟内にまだ生き残りがいたらしく、呻くような声が聞こえて来た。
それを気が付いた3人が目を向けると、
「なっ!! オーガ!!」
身長2m以上の巨体をした鬼が洞窟内から姿を現した。
いきなりの危険な魔物の出現に、レオは驚きの声をあげる。
オーガは、ゴブリンなんて比べ物にならないほどの危険生物である。
大物の魔物の出現に慌ててしまうのも無理はない。
“ババッ!!”
「っ!! ドナートさん! ヴィートさん!!」
オーガが出たことで慌てているレオと違い、ドナートとヴィートは何故かオーガへ向かって駆け出した。
あまりに危険な行為に、レオは止めようと手を伸ばす。
しかし、その手が届くはずもなく、2人はオーガへ向かって行ってしまった。
「っ!! そうか!!」
オーガを相手にするのに2人では無謀すぎる。
しかし、2人は迷わず向かって行く。
レオがその理由が分からないでいたが、それがどうしてなのかを理解した。
「ロイたちも今のうちにオーガを攻撃するんだ!!」
“コクッ!”
2人の無謀な行動理由を理解したレオは、すぐにロイたちも攻めかかるように指示をする。
レオの命令に断る訳もなく、ロイたちは頷きを返すとドナートたちの後を追った。
「ハッ!!」
「ガアッ!!」
最初にドナートがオーガへと攻撃を開始する。
接近による速度を生かした槍による強力な突きが、オーガの右足へと突き刺さる。
その攻撃の痛みで、オーガは呻き声を上げる。
「もう一発!!」
「グァッ!!」
ドナートの攻撃を食らったすぐ近くへ、ヴィートの槍が突き刺さる。
強力な痛みにより、またも呻き声を上げたオーガは、左膝をついて座り込んだ。
「グッ!?」
足の痛みに呻いているオーガへ、今度はロイたちが襲い掛かる。
座ったことで下がった顔面目掛けて、ドナによる矢が高速で飛んで来る。
「グアァッ!!」
右目に突き刺さり、オーガはまた大きな声をあげる。
そして、ロイは剣で、オルは槍で、ラグは2本の短剣でオーガへ攻撃をする。
反射的に右目を抑えた右手は無視し、空いている左手をズタズタに斬り刻んだ。
「ナイス!!」
「止めだ!!」
ロイたちが攻撃をしている間に、ドナートとヴィートはオーガの背後へと回り込む。
そして、注意を引き付けてくれていたロイたちを褒めると、そのまま一気にオーガの背中から2人同時に攻めかかった。
「ガアァッ!!」
心臓のあると思われる場所を背中から突き刺し、一気に止めを刺した。
2本の槍が深々と刺さったオーガは、一瞬呻き声を上げるとそのまま前のめりに崩れ落ちて行った。
「すごい! さすが戦い慣れていますね……」
念のため倒れたオーガをそのままにして様子を見、死んでいることを確認した3人は改めて倒れているオーガへと近付いて行った。
そして倒れているオーガを眺めたレオは、思わずドナートたちの判断力の良さに感心した。
「オーガも煙でまともな状態じゃなかったんですね?」
「「その通り!」」
オーガが出て慌てたレオと違い、ドナートたちはオーガの足がふらつき目も焦点が合っていないことを瞬時に見抜いた。
煙による一酸化炭素中毒はゴブリンだけでなくオーガへもちゃんと通用していたのだ。
オーガも必死に外へ逃れて来たらしく、武器と呼べるものも所持していなかった。
武器もなく状態異常では、気を付けさえすればオーガですら何とかなる。
まずは念のために足を潰し、ロイたちが来てくれたことで止めを刺すために動くことができた。
強力な魔物の出現に慌てずに行動した勇敢さに、レオは尊敬した眼差しを2人に向けたのだった。