「レオポルド様! これからよろしくお願いします!」
「敬語はいらないし、爵位もないから、レオでいいですよ」
この島に住まわせてほしいとガイオとセバスティアーノから頼まれ、レオは受け入れることを決定した。
翌日、エレナが代表として頭を下げてきた。
一応領主と言ってもレオには爵位がないため、あまり畏まられても困ってしまう。
そのため、レオはもっとフランクに接してくれるように頼んだ。
「でしたら、私もエレナでお願いします」
「分かったよ。エレナ」
エレナも叔父のムツィオから追っ手を送られるようなことになりたくはないので、世間的には死んだように見せたい。
そうなると、爵位がないも同然のため、レオと同じく特別扱いはしてほしくない。
その思いを受け、お互い敬称を付けないで呼び合うことにした。
「ここで暮らすとなると、みんなの家が必要だね」
総勢25人が住むにしても、今のままテント暮らしはあり得ない。
まずは雨風凌げて、全員が入って寝泊まりできるところを用意しないといけない。
そのため、レオはまずは大きな建物を1軒建てることにした。
「人手がいるなら力仕事は男共もいるし、造船の技術を持った彼らを使ってくれていいぞ?」
「それは助かります!」
みんなのための建物を建てることを告げると、ガイオが男性陣を使って良いと言ってくれた。
とりあえずとは言っても自分たちが寝床にする場所のため、みんな協力する気満々だ。
ガイオは足が折れているので、細かい手作業を手伝ってくれるらしい。
レオが住んでいる家よりも大きな建物を作らないといけないので、人手は多い方が良い。
みんなの協力はありがたい。
「でも、魔物の出現にも気を付けないといけないし、数人は警備に回すか?」
「大丈夫ですよ」
「えっ?」
レオが1人で住んでいるのだから、危険な魔物が出る可能性は低いとは思えるが、建築中に突然魔物が現れたら対応に戸惑うかもしれない。
魔物が来た時のために、戦う人間を用意することをガイオに提案された。
しかし、レオはその提案に対し、笑顔で断った。
魔物への対策なしにどうするつもりなのか、ガイオだけでなくみんな首を傾げる。
「ロイ! オル! ラグ! ドナ!」
「……?」
急に森の方向に向かって声を出すレオに、男性陣だけでなく洗濯や編み物をしていた女性陣も首を傾げた。
“ガサガサ……!!”
「何だ!? 魔物か?」
レオが声を出して少しすると、森の中から4体の人形が姿を現した。
それを見たみんなは、魔物の出現かと思い慌てて身構えた。
「ごめんね。昨日はずっと外に居させて」
その人形がレオに近付くと、片膝をついて頭を下げてきた。
ロイたちには悪いが、昨日は色々あって森の中で過ごしてもらったため、レオは4体の頭を順番に撫でていき、軽く謝罪の言葉をかける。
現れた4体はレオのスキルで動いている人形。
昨日のうちは、みんなすぐに出て行ってしまうのだからと、レオは自分のスキルを教えるつもりはなかった。
しかし、ここに住んでくれるとなると教えておかないと、さっきの反応のように魔物と間違えて攻撃されてしまうかもしれない。
そのため、レオはロイたちのことを教えることにした。
「レオ。その人形は魔物ではないのか?」
「違います。僕のスキルで動く人形たちです」
レオの行動で魔物ではないのは分かるが、どうして人形が動いているのか分からない。
そのため、ガイオはロイたちのことを指差してレオに問いかける。
それに対し、レオはみんなに伝えるように、ロイたちのことを説明した。
「人形操作……聞いたことないスキルだな……」
「今住んでいる家もこの能力を使ったので簡単でした」
レオからスキル名を聞いても、ガイオはピンと来ていない様子で、不思議そうにロイたちのことを見つめた。
結構精密な人形に見えるが、どうして動いているのかよく分からない。
それがスキルによるものなのだろうと分かるが、そのスキル自体が聞いたことがないため、なんとなく不思議な気分が拭えない。
しかし、この能力があるからこそ、レオが1人で暮らせているのだろうと考えるようになった。
「みんな引き続き魔物の警戒をお願い」
“コクッ!”
彼らがいるので魔物への対応はひとまず安心だということをみんなに伝え、ロイたちにはまた魔物への対応をお願いした。
レオの指示に頷き、また森の中へ向かって行ったロイたちの背を眺め、みんなは鳩が豆鉄砲を食ったように茫然としていた。
「…………」「…………」
みんなが茫然としている中、ガイオとセバスティアーノだけは、お互いの目を見合わせ、同じような考えに至っていた。
何か思う所があるようだが、レオが2人のことに気付くことはなかった。
「樹を切ってもすぐには使えないので、魔法が使える人は乾燥をさせてもらえませんか?」
「了解!」
ロイたちのことを紹介したレオは、早速建物の建設作業へと移ることにした。
今回はロイたちの協力がなくても、作業を手伝ってくれる人たちがいる。
まずは何人かに樹を切り倒す役を任せ、その後倒した樹を乾燥させる役を数人に任せることにした。
魔物への対応はそこまで心配しなくてもいいということから、多くの男性が投入され、かなりの速さで樹が切り倒されて乾燥されていった。
「乾燥させたのを細工するとなると、人手が必要だな」
「大丈夫です」
「……?」
レオの設計通りに作るとなると、釘がないので木材に加工を施さなくてはならなくなる。
造船の技術を持っているのはそれほど多くなく、かといって細かい作業が得意な人間は多くない。
そうなると人手が足らないように思えたガイオは、女性陣にも手伝ってもらおうかと思った。
しかし、女性陣に声をかける前に、考えがあるかのようにレオがストップをかけた。
何をするか分からないが、ガイオはレオがすることを黙って見守ることにした。
「スキル!」
「っ!! こんな小さい人形も動かせるのか?」
「えぇ!」
まだ何か策があるのかと思って見つめているガイオの前で、レオはポケットや魔法の指輪から布で出来た人形を出し、魔力を流してスキルを発動させた。
小さな人形が動き出し、建設用の木へ細工を開始したのを見て、ガイオは驚きの声をあげた。
多くの人形を動かしたが、そんなことをして魔力がもつのかと思ったが、小さい分少ない魔力で動かせるということを聞いて、ひとまず納得していた。
「彼らに手分けして細かい作業をしてもらいます」
「かなりの速さだな……」
人の手でも出来る作業だが、細かい分時間がかかる。
しかし、そう言った細かい作業が得意な布人形たちは、せっせと木材への加工を施していった。
多くの作業が一気に進んで行き、力自慢の人たちには布人形たちが加工した木材を運んでもらい、造船の技術のある人たちには組み立てる作業をおこなうことを頼んだ。
時間がかかる作業が省略されたことで、一気に建物の建設は進んで行った。
布人形の何体かは、作業が終わるとそのチョコチョコした動きが可愛らしいと、エレナや女性たちに捕まっていた。
元々は可愛らしい系統の人形を作っていたので、女性が反応するのも分からなくない。
喜んでもらえているのなら、しばらくはそのまま女性たちに楽しんでもらうことにした。
「完成!!」
「これが1日で出来るなんて……」
「皆さんの協力のお陰です!」
木製人形を作る用の木材があったとは言っても、レオの家の数倍の大きさの家が仕上がった。
男女に部屋を分けただけの家だが、みんな嬉しい気持ちと共にあっさりと出来てしまったことへの不思議な気持ちが入り混じっていた。
そんななか、みんなで作業をすることの楽しさを味わったレオは、とてもいい笑顔でみんなへの感謝を伝えた。
「敬語はいらないし、爵位もないから、レオでいいですよ」
この島に住まわせてほしいとガイオとセバスティアーノから頼まれ、レオは受け入れることを決定した。
翌日、エレナが代表として頭を下げてきた。
一応領主と言ってもレオには爵位がないため、あまり畏まられても困ってしまう。
そのため、レオはもっとフランクに接してくれるように頼んだ。
「でしたら、私もエレナでお願いします」
「分かったよ。エレナ」
エレナも叔父のムツィオから追っ手を送られるようなことになりたくはないので、世間的には死んだように見せたい。
そうなると、爵位がないも同然のため、レオと同じく特別扱いはしてほしくない。
その思いを受け、お互い敬称を付けないで呼び合うことにした。
「ここで暮らすとなると、みんなの家が必要だね」
総勢25人が住むにしても、今のままテント暮らしはあり得ない。
まずは雨風凌げて、全員が入って寝泊まりできるところを用意しないといけない。
そのため、レオはまずは大きな建物を1軒建てることにした。
「人手がいるなら力仕事は男共もいるし、造船の技術を持った彼らを使ってくれていいぞ?」
「それは助かります!」
みんなのための建物を建てることを告げると、ガイオが男性陣を使って良いと言ってくれた。
とりあえずとは言っても自分たちが寝床にする場所のため、みんな協力する気満々だ。
ガイオは足が折れているので、細かい手作業を手伝ってくれるらしい。
レオが住んでいる家よりも大きな建物を作らないといけないので、人手は多い方が良い。
みんなの協力はありがたい。
「でも、魔物の出現にも気を付けないといけないし、数人は警備に回すか?」
「大丈夫ですよ」
「えっ?」
レオが1人で住んでいるのだから、危険な魔物が出る可能性は低いとは思えるが、建築中に突然魔物が現れたら対応に戸惑うかもしれない。
魔物が来た時のために、戦う人間を用意することをガイオに提案された。
しかし、レオはその提案に対し、笑顔で断った。
魔物への対策なしにどうするつもりなのか、ガイオだけでなくみんな首を傾げる。
「ロイ! オル! ラグ! ドナ!」
「……?」
急に森の方向に向かって声を出すレオに、男性陣だけでなく洗濯や編み物をしていた女性陣も首を傾げた。
“ガサガサ……!!”
「何だ!? 魔物か?」
レオが声を出して少しすると、森の中から4体の人形が姿を現した。
それを見たみんなは、魔物の出現かと思い慌てて身構えた。
「ごめんね。昨日はずっと外に居させて」
その人形がレオに近付くと、片膝をついて頭を下げてきた。
ロイたちには悪いが、昨日は色々あって森の中で過ごしてもらったため、レオは4体の頭を順番に撫でていき、軽く謝罪の言葉をかける。
現れた4体はレオのスキルで動いている人形。
昨日のうちは、みんなすぐに出て行ってしまうのだからと、レオは自分のスキルを教えるつもりはなかった。
しかし、ここに住んでくれるとなると教えておかないと、さっきの反応のように魔物と間違えて攻撃されてしまうかもしれない。
そのため、レオはロイたちのことを教えることにした。
「レオ。その人形は魔物ではないのか?」
「違います。僕のスキルで動く人形たちです」
レオの行動で魔物ではないのは分かるが、どうして人形が動いているのか分からない。
そのため、ガイオはロイたちのことを指差してレオに問いかける。
それに対し、レオはみんなに伝えるように、ロイたちのことを説明した。
「人形操作……聞いたことないスキルだな……」
「今住んでいる家もこの能力を使ったので簡単でした」
レオからスキル名を聞いても、ガイオはピンと来ていない様子で、不思議そうにロイたちのことを見つめた。
結構精密な人形に見えるが、どうして動いているのかよく分からない。
それがスキルによるものなのだろうと分かるが、そのスキル自体が聞いたことがないため、なんとなく不思議な気分が拭えない。
しかし、この能力があるからこそ、レオが1人で暮らせているのだろうと考えるようになった。
「みんな引き続き魔物の警戒をお願い」
“コクッ!”
彼らがいるので魔物への対応はひとまず安心だということをみんなに伝え、ロイたちにはまた魔物への対応をお願いした。
レオの指示に頷き、また森の中へ向かって行ったロイたちの背を眺め、みんなは鳩が豆鉄砲を食ったように茫然としていた。
「…………」「…………」
みんなが茫然としている中、ガイオとセバスティアーノだけは、お互いの目を見合わせ、同じような考えに至っていた。
何か思う所があるようだが、レオが2人のことに気付くことはなかった。
「樹を切ってもすぐには使えないので、魔法が使える人は乾燥をさせてもらえませんか?」
「了解!」
ロイたちのことを紹介したレオは、早速建物の建設作業へと移ることにした。
今回はロイたちの協力がなくても、作業を手伝ってくれる人たちがいる。
まずは何人かに樹を切り倒す役を任せ、その後倒した樹を乾燥させる役を数人に任せることにした。
魔物への対応はそこまで心配しなくてもいいということから、多くの男性が投入され、かなりの速さで樹が切り倒されて乾燥されていった。
「乾燥させたのを細工するとなると、人手が必要だな」
「大丈夫です」
「……?」
レオの設計通りに作るとなると、釘がないので木材に加工を施さなくてはならなくなる。
造船の技術を持っているのはそれほど多くなく、かといって細かい作業が得意な人間は多くない。
そうなると人手が足らないように思えたガイオは、女性陣にも手伝ってもらおうかと思った。
しかし、女性陣に声をかける前に、考えがあるかのようにレオがストップをかけた。
何をするか分からないが、ガイオはレオがすることを黙って見守ることにした。
「スキル!」
「っ!! こんな小さい人形も動かせるのか?」
「えぇ!」
まだ何か策があるのかと思って見つめているガイオの前で、レオはポケットや魔法の指輪から布で出来た人形を出し、魔力を流してスキルを発動させた。
小さな人形が動き出し、建設用の木へ細工を開始したのを見て、ガイオは驚きの声をあげた。
多くの人形を動かしたが、そんなことをして魔力がもつのかと思ったが、小さい分少ない魔力で動かせるということを聞いて、ひとまず納得していた。
「彼らに手分けして細かい作業をしてもらいます」
「かなりの速さだな……」
人の手でも出来る作業だが、細かい分時間がかかる。
しかし、そう言った細かい作業が得意な布人形たちは、せっせと木材への加工を施していった。
多くの作業が一気に進んで行き、力自慢の人たちには布人形たちが加工した木材を運んでもらい、造船の技術のある人たちには組み立てる作業をおこなうことを頼んだ。
時間がかかる作業が省略されたことで、一気に建物の建設は進んで行った。
布人形の何体かは、作業が終わるとそのチョコチョコした動きが可愛らしいと、エレナや女性たちに捕まっていた。
元々は可愛らしい系統の人形を作っていたので、女性が反応するのも分からなくない。
喜んでもらえているのなら、しばらくはそのまま女性たちに楽しんでもらうことにした。
「完成!!」
「これが1日で出来るなんて……」
「皆さんの協力のお陰です!」
木製人形を作る用の木材があったとは言っても、レオの家の数倍の大きさの家が仕上がった。
男女に部屋を分けただけの家だが、みんな嬉しい気持ちと共にあっさりと出来てしまったことへの不思議な気持ちが入り混じっていた。
そんななか、みんなで作業をすることの楽しさを味わったレオは、とてもいい笑顔でみんなへの感謝を伝えた。