「お待ちください!! ジェロニモ様!!」
レオの挑発に乗り、ジェロニモは武器を構えた。
それを止めるようにして、コルラードがジェロニモの前に立ち塞がった。
先程のレオの言葉は、エレナに関することになるとジェロニモが正常な判断ができないことを逆手に取ったものだ。
きっと、仲間の兵が来るまでジェロニモをこの場から逃がさないための挑発にすぎない。
そんな挑発に乗って危険に晒すわけにはいかないため、なんとかジェロニモを止めようとしたのだ。
「いくらジェロニモ様でも多くの兵に囲まれては危険です!! また機をうかがうべきです!!」
「邪魔をするな!! コルラード!!」
ジェロニモが無事なら、いつでもまたエレナ奪還の機会は訪れる。
それだけの力があるのだから、今は一旦退くのが最適手だ。
それを懸命に訴えるが、ジェロニモの意識はレオを倒すことへと向いていて、コルラードの訴えは耳に届いていない。
レオの電撃魔法によって足下がおぼつかない程のダメージを受けているのに、まだ戦う気は満々といった様子だ。
「そうだ。逃げた方が良いぞ!」
「「っ!?」」
さっきとは打って変わったレオの言葉に、ジェロニモとコルラードは訝し気な表情へと変わる。
「そうすれば、エレナはお前のことをその程度の男だと判断する」
「「っ!!」」
続いて発せられた言葉に、2人はそれぞれ違うことを発想する。
ジェロニモの勝手な考えからすれば、せっかく助けに来た自分が逃げ帰るようなことをすれば、エレナの気持ちが離れてしまうのではないかというもの。
コルラードからしたら、レオが的確にジェロニモをこの場に留める発言をしたというもの。
「どけ! コルラード……」
「しかし……!!」
レオの考えは、コルラードが考えたのと同じことだ。
エレナに固執しているジェロニモなら、嫌われるようなことはしたくないと思うはず。
はっきり言って、やることなす事全部裏目に出て、エレナがジェロニモに好意を抱いている訳がない。
しかし、勘違いしているジェロニモには効果てきめん。
レオの思い通り、完全に退避の考えを消すことができたようだ。
ふらつく足を動かしレオへと迫ろうとするジェロニモは、目の前に立ち塞がるコルラードにどくように指示する。
「どけ!!」
「…………っ」
これ以上ここにいては、レオの思い通り兵が集まってしまう。
それなら早々にレオを倒して、少しでも気を静めてもらうしかない。
必死に止めたのも虚しく、邪魔をするなら容赦しないという意思をジェロニモから感じ取ったコルラードは、黙りこんで脇へと逸れたのだった。
「貴様を殺してエレナを手に入れる!!」
「そうはさせないさ!!」
コルラードが離れると、ジェロニモは魔力を膨れ上がらせる。
そんなジェロニモに臆することなく、レオは剣を構えた。
「ハッ!!」
「っ!!」
ジェロニモの背中に魔力の翼のようなものが生える。
そして、その翼を使って、ジェロニモは空へと飛んだ。
魔力を膨れ上がらせたのは、このためだったようだ。
「……空から攻める気か!?」
魔法による電撃攻撃で、ジェロニモの動きが鈍ってしまった。
その場に立ち尽くしたまま相手をしていては、無駄に時間がかかるだけだ。
それなら大量の魔力を使えばいいと判断しての考えなのだろう。
飛び上がった時に逃げる気なのかとも思ったがそうではないらしく、ジェロニモはレオへ視線を向けたままだ。
どうやら空から攻めかかるつもりのようだ。
「ハーッ!!」
「速っ……!! ぐっ!!」
上空からの急降下。
右手の剣を突き出したまま、ジェロニモはレオへと突撃する。
これまでも速かったが、更に速度が上がった。
驚いている暇もないとばかりに、レオはその場から横へと跳び退く。
何とか躱したと思ったが、僅かに肩を掠めてレオに傷を負わせた。
「くっ!」
「ハハッ!」
傷を受けた肩を抑えて声を漏らすレオ。
その姿を見て、ようやく傷を負わせることに成功したジェロニモは、愉悦の笑みを浮かべる。
『血は出ていない? 斬られてすぐに焼かれたのか?』
傷を見て、レオは手に血が付いていないことに気付く。
あのバルログの炎の魔力によるものなのだろう。
斬られた部分が火傷をして血を止めたようだ。
出血をしないことは良しとして、少しの傷だというのに、斬られると焼かれるの2重の痛みに苛まれた。
「死ね!!」
「がっ!!」
またも迫り来るジェロニモの攻撃を、今度は剣で防ごうと試みた。
何とか合わせることはできたが、落下も合わさったその突進力を止めることができず、レオは弾かれるように吹き飛んで行った。
ジェロニモの剣の攻撃によるものではなく、地面を何度も弾むことによるダメージがレオへと襲い掛かった。
「ぐぅ……」
寝ていたら止めを刺される。
何度も地面に打ち付けられた痛みに苦しみながらも、レオは何とか立ち上がった。
「このっ!! 【風刃】!!」
「そんなの効くわけないだろ!!」
「くっ!!」
何か抵抗しないと攻撃を受ける。
レオは左手を前にして魔法を放つ。
風の刃を幾つも放ち攻撃するが、上空にいるジェロニモは手に持つ剣と鞭を使って、難なく攻撃を弾いてしまった。
「オラッ!!」
「ぐあっ!!」
魔法が防がれたレオへ、再度ジェロニモが襲い掛かる。
痛みで反応が遅れたレオは剣で防ぐも、また弾かれたように吹き飛ばされた。
「くっ! 足が……」
地面に打ち付けられたことで、足を捻ったか折れたのかもしれない。
しかし、このままでいる訳にもいかないレオは、その痛みに耐え、剣を杖にするようにして立ち上がった。
「ハハハッ!! そんなボロボロの状態ではもう防げまい!!」
立つには立ったが、満身創痍と言ったような状況になってしまったレオ。
完全に形勢逆転となった状況に、ジェロニモは勝利を確信したように笑い声を上げる。
「止めだ!! 死ね!!」
足を痛めた今なら、まともに防ぐことも難しいだろう。
防いだとしても、また弾け飛んで今度こそ動けなくなるはず。
そう確信したジェロニモはレオを仕留めるため、また上空から落下を始めた。
「…………」
「んっ? 相打ちでも狙うつもりか!?」
片足を庇うようにしてなんとか立つレオ。
杖にしていた剣を、ジェロニモに向けることなく下段に構える。
防御するために構えているように思えない。
そのため、迫るジェロニモはレオが相打ち覚悟で斬りかかってくるのだと判断した。
「死ねっ!!」
レオの攻撃は鞭で防げばいい。
そう考えたジェロニモは、止まることなくレオへと突進した。
「っ!!」
痛みで反応できないのか、レオからは攻撃が来ない。
このまま自分の剣がレオの心臓を突き刺して勝利する。
そう思った瞬間、ジェロニモの剣が僅かに横にずれた。
「ぐぅぅーーっ!!」
そのまま交錯する事無く、ジェロニモが着地する。
心臓には刺さらなかったが、ジェロニモの剣はレオの左腕を斬り飛ばしていた。
斬られた痛みが来た後に、傷口を焼かれる痛みがレオへ襲い掛かる。
神経を焼かれるような痛みに、レオは気を失いそうになりながらも懸命に耐えた。
「…………ガハッ!!」
着地したジェロニモは、そのままレオへ襲い掛かることはなく大量の血を吐きだし、その場へと前のめりに倒れ伏した。
「ジェロニモ様!! ……は、腹を……」
何が起きたのか見えなかったコルラードは、慌てたように主人のジェロニモへと駆け寄る。
地面に大量の血だまりができているのを確認し、ジェロニモを抱きかかえると、コルラードはどうして倒れたのかを理解した。
交錯していないように思えたが、どうやらレオの攻撃が入っていたようで、ジェロニモは腹を斬り裂かれて大量に出血をしていた。
「……あ、操り…糸か……?」
「その通りだ」
自分がやられたことで、ジェロニモは何が起きたのか理解した。
レオの心臓ではなく、左腕へとずれたジェロニモの剣。
そのズレを生んだのは、レオの左手から伸びた操り糸だ。
生物相手には大した効果を及ぼさない操り能力。
しかし、全く効かない訳ではない。
僅かな時間、僅かにジェロニモの剣の軌道をずらすくらいはできなくはない。
その能力を使って、レオは反撃の機会を作りだしたのだ。
「とんでもなく速いが、お前の攻撃は直線的だったんでな……」
飛空からの落下攻撃はたしかに速い。
しかし、直線的だったため、レオはカウンターのチャンスがあると踏んだ。
何とかうまくいって攻撃をずらせたレオは、切り上げるようにして剣を振り、ジェロニモの腹を斬り裂いたのだった。
レオの挑発に乗り、ジェロニモは武器を構えた。
それを止めるようにして、コルラードがジェロニモの前に立ち塞がった。
先程のレオの言葉は、エレナに関することになるとジェロニモが正常な判断ができないことを逆手に取ったものだ。
きっと、仲間の兵が来るまでジェロニモをこの場から逃がさないための挑発にすぎない。
そんな挑発に乗って危険に晒すわけにはいかないため、なんとかジェロニモを止めようとしたのだ。
「いくらジェロニモ様でも多くの兵に囲まれては危険です!! また機をうかがうべきです!!」
「邪魔をするな!! コルラード!!」
ジェロニモが無事なら、いつでもまたエレナ奪還の機会は訪れる。
それだけの力があるのだから、今は一旦退くのが最適手だ。
それを懸命に訴えるが、ジェロニモの意識はレオを倒すことへと向いていて、コルラードの訴えは耳に届いていない。
レオの電撃魔法によって足下がおぼつかない程のダメージを受けているのに、まだ戦う気は満々といった様子だ。
「そうだ。逃げた方が良いぞ!」
「「っ!?」」
さっきとは打って変わったレオの言葉に、ジェロニモとコルラードは訝し気な表情へと変わる。
「そうすれば、エレナはお前のことをその程度の男だと判断する」
「「っ!!」」
続いて発せられた言葉に、2人はそれぞれ違うことを発想する。
ジェロニモの勝手な考えからすれば、せっかく助けに来た自分が逃げ帰るようなことをすれば、エレナの気持ちが離れてしまうのではないかというもの。
コルラードからしたら、レオが的確にジェロニモをこの場に留める発言をしたというもの。
「どけ! コルラード……」
「しかし……!!」
レオの考えは、コルラードが考えたのと同じことだ。
エレナに固執しているジェロニモなら、嫌われるようなことはしたくないと思うはず。
はっきり言って、やることなす事全部裏目に出て、エレナがジェロニモに好意を抱いている訳がない。
しかし、勘違いしているジェロニモには効果てきめん。
レオの思い通り、完全に退避の考えを消すことができたようだ。
ふらつく足を動かしレオへと迫ろうとするジェロニモは、目の前に立ち塞がるコルラードにどくように指示する。
「どけ!!」
「…………っ」
これ以上ここにいては、レオの思い通り兵が集まってしまう。
それなら早々にレオを倒して、少しでも気を静めてもらうしかない。
必死に止めたのも虚しく、邪魔をするなら容赦しないという意思をジェロニモから感じ取ったコルラードは、黙りこんで脇へと逸れたのだった。
「貴様を殺してエレナを手に入れる!!」
「そうはさせないさ!!」
コルラードが離れると、ジェロニモは魔力を膨れ上がらせる。
そんなジェロニモに臆することなく、レオは剣を構えた。
「ハッ!!」
「っ!!」
ジェロニモの背中に魔力の翼のようなものが生える。
そして、その翼を使って、ジェロニモは空へと飛んだ。
魔力を膨れ上がらせたのは、このためだったようだ。
「……空から攻める気か!?」
魔法による電撃攻撃で、ジェロニモの動きが鈍ってしまった。
その場に立ち尽くしたまま相手をしていては、無駄に時間がかかるだけだ。
それなら大量の魔力を使えばいいと判断しての考えなのだろう。
飛び上がった時に逃げる気なのかとも思ったがそうではないらしく、ジェロニモはレオへ視線を向けたままだ。
どうやら空から攻めかかるつもりのようだ。
「ハーッ!!」
「速っ……!! ぐっ!!」
上空からの急降下。
右手の剣を突き出したまま、ジェロニモはレオへと突撃する。
これまでも速かったが、更に速度が上がった。
驚いている暇もないとばかりに、レオはその場から横へと跳び退く。
何とか躱したと思ったが、僅かに肩を掠めてレオに傷を負わせた。
「くっ!」
「ハハッ!」
傷を受けた肩を抑えて声を漏らすレオ。
その姿を見て、ようやく傷を負わせることに成功したジェロニモは、愉悦の笑みを浮かべる。
『血は出ていない? 斬られてすぐに焼かれたのか?』
傷を見て、レオは手に血が付いていないことに気付く。
あのバルログの炎の魔力によるものなのだろう。
斬られた部分が火傷をして血を止めたようだ。
出血をしないことは良しとして、少しの傷だというのに、斬られると焼かれるの2重の痛みに苛まれた。
「死ね!!」
「がっ!!」
またも迫り来るジェロニモの攻撃を、今度は剣で防ごうと試みた。
何とか合わせることはできたが、落下も合わさったその突進力を止めることができず、レオは弾かれるように吹き飛んで行った。
ジェロニモの剣の攻撃によるものではなく、地面を何度も弾むことによるダメージがレオへと襲い掛かった。
「ぐぅ……」
寝ていたら止めを刺される。
何度も地面に打ち付けられた痛みに苦しみながらも、レオは何とか立ち上がった。
「このっ!! 【風刃】!!」
「そんなの効くわけないだろ!!」
「くっ!!」
何か抵抗しないと攻撃を受ける。
レオは左手を前にして魔法を放つ。
風の刃を幾つも放ち攻撃するが、上空にいるジェロニモは手に持つ剣と鞭を使って、難なく攻撃を弾いてしまった。
「オラッ!!」
「ぐあっ!!」
魔法が防がれたレオへ、再度ジェロニモが襲い掛かる。
痛みで反応が遅れたレオは剣で防ぐも、また弾かれたように吹き飛ばされた。
「くっ! 足が……」
地面に打ち付けられたことで、足を捻ったか折れたのかもしれない。
しかし、このままでいる訳にもいかないレオは、その痛みに耐え、剣を杖にするようにして立ち上がった。
「ハハハッ!! そんなボロボロの状態ではもう防げまい!!」
立つには立ったが、満身創痍と言ったような状況になってしまったレオ。
完全に形勢逆転となった状況に、ジェロニモは勝利を確信したように笑い声を上げる。
「止めだ!! 死ね!!」
足を痛めた今なら、まともに防ぐことも難しいだろう。
防いだとしても、また弾け飛んで今度こそ動けなくなるはず。
そう確信したジェロニモはレオを仕留めるため、また上空から落下を始めた。
「…………」
「んっ? 相打ちでも狙うつもりか!?」
片足を庇うようにしてなんとか立つレオ。
杖にしていた剣を、ジェロニモに向けることなく下段に構える。
防御するために構えているように思えない。
そのため、迫るジェロニモはレオが相打ち覚悟で斬りかかってくるのだと判断した。
「死ねっ!!」
レオの攻撃は鞭で防げばいい。
そう考えたジェロニモは、止まることなくレオへと突進した。
「っ!!」
痛みで反応できないのか、レオからは攻撃が来ない。
このまま自分の剣がレオの心臓を突き刺して勝利する。
そう思った瞬間、ジェロニモの剣が僅かに横にずれた。
「ぐぅぅーーっ!!」
そのまま交錯する事無く、ジェロニモが着地する。
心臓には刺さらなかったが、ジェロニモの剣はレオの左腕を斬り飛ばしていた。
斬られた痛みが来た後に、傷口を焼かれる痛みがレオへ襲い掛かる。
神経を焼かれるような痛みに、レオは気を失いそうになりながらも懸命に耐えた。
「…………ガハッ!!」
着地したジェロニモは、そのままレオへ襲い掛かることはなく大量の血を吐きだし、その場へと前のめりに倒れ伏した。
「ジェロニモ様!! ……は、腹を……」
何が起きたのか見えなかったコルラードは、慌てたように主人のジェロニモへと駆け寄る。
地面に大量の血だまりができているのを確認し、ジェロニモを抱きかかえると、コルラードはどうして倒れたのかを理解した。
交錯していないように思えたが、どうやらレオの攻撃が入っていたようで、ジェロニモは腹を斬り裂かれて大量に出血をしていた。
「……あ、操り…糸か……?」
「その通りだ」
自分がやられたことで、ジェロニモは何が起きたのか理解した。
レオの心臓ではなく、左腕へとずれたジェロニモの剣。
そのズレを生んだのは、レオの左手から伸びた操り糸だ。
生物相手には大した効果を及ぼさない操り能力。
しかし、全く効かない訳ではない。
僅かな時間、僅かにジェロニモの剣の軌道をずらすくらいはできなくはない。
その能力を使って、レオは反撃の機会を作りだしたのだ。
「とんでもなく速いが、お前の攻撃は直線的だったんでな……」
飛空からの落下攻撃はたしかに速い。
しかし、直線的だったため、レオはカウンターのチャンスがあると踏んだ。
何とかうまくいって攻撃をずらせたレオは、切り上げるようにして剣を振り、ジェロニモの腹を斬り裂いたのだった。