「ハッ!!」
自分勝手なことばかり言っているジェロニモ。
放って置けばいつまで経っても王国に、そしてエレナに危険が及び続ける。
何としてもこの場で止めるために、レオはジェロニモへ斬りかかった。
「フンッ!!」
「っ!!」
横から迫っての袈裟斬りを放ったレオだが、その剣を途中で止めて後退する。
そのまま斬りかかっていた場合、レオの顔面に鞭が直撃していたことだろう。
好判断により、レオは黒い炎のような魔力を纏った鞭を躱せた。
「危ない……」
後退して躱せたことに安堵するレオ。
しかし、完全に躱したわけではなかったことに気付く。
焦げた匂いに視線を少し上へ向けると、自分の前髪が何本か焼けていたが見えた。
「……あの魔力か?」
迫っていた鞭は躱せた。
しかし、その鞭を纏っている黒い炎のような魔力は掠っていた。
前髪が焦げた理由を考えると、レオにはそれしか思い至らなかった。
「どうした!? かかってこい!!」
斬りかかってきたレオが、一瞬にして表情を変える。
自分の纏っている魔力に恐れを感じているのだとジェロニモには分かる。
ジェロニモ自身、この能力を使えるようになって驚いたものだ。
「来ないならこっちからいってやるよ!!」
「くっ!!」
どう戦うべきか考えているレオに、ジェロニモは襲い掛かってきた。
接近戦では、武器は躱せてもあの魔力まで躱しきれるか微妙だ。
活路を見つけ出すまでは近付けないと、レオはジェロニモから逃げ回った。
「どうした!? 時間稼ぎのつもりか!?」
威勢のいいことを言っていたのにもかかわらず、逃げ回るしかないレオを煽るように言いつつ、ジェロニモは接近と攻撃をし続ける。
その一撃は人間による攻撃にしては強力。
レオが1発食らえば、大ダメージを食らうこと間違いなしだ。
しかも、炎の魔力による熱も厄介だ。
逃げ回りながらも、レオは懸命にどう戦うかを考え続けた。
「その能力……」
「んっ?」
逃げ回っていたレオが口を開く。
何か気付いた様子のレオに、余裕のジェロニモは一旦攻撃をやめる。
「バルログだな?」
「ほお~……、気付いたか?」
飛空時に出した翼、炎の剣と鞭、ジェロニモが被っている頭蓋骨の形全てを合わせて考えると、レオにはある魔物の存在が思いついた。
炎の悪魔とも呼ばれるバルログという魔物だ。
その名前を出した瞬間、ジェロニモは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「その通り! これはバルログの骨だ!」
「……どうやって手に入れたんだ?」
言い当てられてどことなく嬉しそうなジェロニモ。
それはレオには好都合。
考える時間を稼ぐために、レオは特に興味もない質問を投げかける。
「俺は元々スカルグッズの収集家でな……」
レオの質問に対し、ジェロニモが話し始める。
しかし、そのことは情報として知っているため、レオは聞いているふりをしてどう戦うか考える。
「大体の人間が気味悪がったが、エレナだけは認めてくれていた」
『……だからエレナに付きまとっているのか?』
それを聞いて、レオはなんとなく納得した。
どうやら、自分の趣味を認めてくれたことがきっかけで、ジェロニモはエレナのことを好きになったようだ。
しかし、自分が好きだからと言って、エレナが自分に惚れているという訳ではない。
そんなことが分かっていないから、このようなことをしているのだろう。
人の気持ちを考えないジェロニモに、レオは何だか可哀想な人に見えてきた。
しかし、思ったことを口に出せば、すぐにでもまた襲いかかってくるかもしれない。
なので、黙ったまま聞いている振りを続けた。
「スケルトンを置いてきて良かったのか?」
「そんなのたいしたことではない。スケルトンがいなくてもお前くらい苦でもないわ!!」
あの状態だけでも面倒なのに、これでスケルトンまでまだあるとしたら勝ち目が薄い。
それを確認するために、レオはジェロニモに話しかける。
すると、どうやら吹き飛ばした自分を追いかけてきたので、スケルトンはそのまま全部城に置いてきたようだ。
それを聞いて、レオは少し安心した。
「ハッ!!」
「フンッ!! お前はまだ人形を残していたか?」
スケルトンを全部おいてきたジェロニモとは違い、レオはまだ少し戦闘人形を残しておいた。
それでも10体程度。
バルログの力を使えるジェロニモと戦うには、どう考えてもこれでは数が足りない。
それが分かっているのか、ジェロニモは人形たちを見ても余裕の表情を崩さなかった。
「すまんが、みんな頼むぞ!」
“コクッ!!”
レオの指示を受け、頷いた人形たちは手に持つ剣でジェロニモへと向かっていく。
「舐めるな!!」
迫り来る人形たちに、ジェロニモは慌てることなく剣と鞭を振るう。
その数回の攻撃だけで、あっという間にレオの人形たちは破壊されてしまった。
しかも、壊されただけでなく、剣で斬られたり鞭で叩かれた場所から着火し、全身に炎が燃え広がっていった。
「バルログの力を使える上に人としての知能も使える。お前単体でバルログと戦うようなものだ!!」
「くそっ!!」
ジェロニモの戦い方を見極めるためとはいえ、自分の作り出した人形たちが壊される。
しかも、軸となる金属だけ残して燃やし尽くしてしまった。
そうなる可能性を感じていたとはいえ、人形たちに申し訳ないことをさせてしまったと、レオは歯を食いしばって悔しがった。
人形たちがやられてしまい、またも1人になってしまったが、レオの中には少しだけ分かったことがあった。
『思った通り、剣技などに関してはたいしたことはない』
バルログの力により、ジェロニモの攻撃の威力と速度はとんでもないものがある。
しかし、それを使っているジェロニモ自身の技術がそんなでもないことからか、防ぐ分には難しくないかもしれない。
「おっ?」
『接近戦より遠距離攻撃だ!!』
人形たちを犠牲にしてしまったからには、勝たないといけない。
そう考えたレオは、人形たちが教えてくれた情報を元にジェロニモとの戦闘方法を導き出した。
レオが何かを掴んだような表情をして魔力を練りだしたのを見て、ジェロニモは何かしてくるのかと身構える。
しかし、何をされても大丈夫な自信があるのか、武器を下げたままだ。
「【水】!!」
「魔法!?」
炎には水。
そう言うかのように、レオはまず水の魔法で水球を放つ。
何をするのかと思っていたら魔法を放って来たので、ジェロニモは僅かに驚きの声をあげる。
魔法はたしかに優秀な能力だが、戦闘において使えるほどの威力を出せる者は少ない。
人形使いとしてしか知らないため、ジェロニモはレオがそんな攻撃をしてくるとは思っていなかったようだ。
「ムッ! ……何だ。なかなかの威力だが、俺には通じんじゃないか……」
飛んできた水球に対し、ジェロニモは剣を盾にするようにして身構える。
水球が着弾した瞬間衝撃を受けるが、防いでしまえばなんてことない。
当たって弾けた水も、すぐにジェロニモの炎の魔力によって、ジュ~という音と共に蒸発していった。
その結果を見たジェロニモは、肩をなで下ろすように笑みを浮かべた。
「【氷】!!」
「今度は氷か……」
続いてレオが放ったのは氷魔法の氷柱。
先が尖った氷柱が、ジェロニモに向かって飛んで行く。
その氷柱を、ジェロニモは鞭を振って防ぐ。
鞭に触れて軌道がずれた氷柱が、水へと変わって地面へと飛び散った。
「抵抗は終わりか?」
「あぁ……」
「何っ?」
魔法攻撃をしてくるとは思わなかったが、防げるレベルだ。
レオの攻撃に脅威を感じなかったジェロニモは、余裕の態度で話しかける。
自分の攻撃が通用しないと分かり、恐れおののく表情を期待していたのだが、レオは思い通りの言葉と表情をしていなかった。
それどころか、レオの方も笑みを浮かべていた。
自分勝手なことばかり言っているジェロニモ。
放って置けばいつまで経っても王国に、そしてエレナに危険が及び続ける。
何としてもこの場で止めるために、レオはジェロニモへ斬りかかった。
「フンッ!!」
「っ!!」
横から迫っての袈裟斬りを放ったレオだが、その剣を途中で止めて後退する。
そのまま斬りかかっていた場合、レオの顔面に鞭が直撃していたことだろう。
好判断により、レオは黒い炎のような魔力を纏った鞭を躱せた。
「危ない……」
後退して躱せたことに安堵するレオ。
しかし、完全に躱したわけではなかったことに気付く。
焦げた匂いに視線を少し上へ向けると、自分の前髪が何本か焼けていたが見えた。
「……あの魔力か?」
迫っていた鞭は躱せた。
しかし、その鞭を纏っている黒い炎のような魔力は掠っていた。
前髪が焦げた理由を考えると、レオにはそれしか思い至らなかった。
「どうした!? かかってこい!!」
斬りかかってきたレオが、一瞬にして表情を変える。
自分の纏っている魔力に恐れを感じているのだとジェロニモには分かる。
ジェロニモ自身、この能力を使えるようになって驚いたものだ。
「来ないならこっちからいってやるよ!!」
「くっ!!」
どう戦うべきか考えているレオに、ジェロニモは襲い掛かってきた。
接近戦では、武器は躱せてもあの魔力まで躱しきれるか微妙だ。
活路を見つけ出すまでは近付けないと、レオはジェロニモから逃げ回った。
「どうした!? 時間稼ぎのつもりか!?」
威勢のいいことを言っていたのにもかかわらず、逃げ回るしかないレオを煽るように言いつつ、ジェロニモは接近と攻撃をし続ける。
その一撃は人間による攻撃にしては強力。
レオが1発食らえば、大ダメージを食らうこと間違いなしだ。
しかも、炎の魔力による熱も厄介だ。
逃げ回りながらも、レオは懸命にどう戦うかを考え続けた。
「その能力……」
「んっ?」
逃げ回っていたレオが口を開く。
何か気付いた様子のレオに、余裕のジェロニモは一旦攻撃をやめる。
「バルログだな?」
「ほお~……、気付いたか?」
飛空時に出した翼、炎の剣と鞭、ジェロニモが被っている頭蓋骨の形全てを合わせて考えると、レオにはある魔物の存在が思いついた。
炎の悪魔とも呼ばれるバルログという魔物だ。
その名前を出した瞬間、ジェロニモは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「その通り! これはバルログの骨だ!」
「……どうやって手に入れたんだ?」
言い当てられてどことなく嬉しそうなジェロニモ。
それはレオには好都合。
考える時間を稼ぐために、レオは特に興味もない質問を投げかける。
「俺は元々スカルグッズの収集家でな……」
レオの質問に対し、ジェロニモが話し始める。
しかし、そのことは情報として知っているため、レオは聞いているふりをしてどう戦うか考える。
「大体の人間が気味悪がったが、エレナだけは認めてくれていた」
『……だからエレナに付きまとっているのか?』
それを聞いて、レオはなんとなく納得した。
どうやら、自分の趣味を認めてくれたことがきっかけで、ジェロニモはエレナのことを好きになったようだ。
しかし、自分が好きだからと言って、エレナが自分に惚れているという訳ではない。
そんなことが分かっていないから、このようなことをしているのだろう。
人の気持ちを考えないジェロニモに、レオは何だか可哀想な人に見えてきた。
しかし、思ったことを口に出せば、すぐにでもまた襲いかかってくるかもしれない。
なので、黙ったまま聞いている振りを続けた。
「スケルトンを置いてきて良かったのか?」
「そんなのたいしたことではない。スケルトンがいなくてもお前くらい苦でもないわ!!」
あの状態だけでも面倒なのに、これでスケルトンまでまだあるとしたら勝ち目が薄い。
それを確認するために、レオはジェロニモに話しかける。
すると、どうやら吹き飛ばした自分を追いかけてきたので、スケルトンはそのまま全部城に置いてきたようだ。
それを聞いて、レオは少し安心した。
「ハッ!!」
「フンッ!! お前はまだ人形を残していたか?」
スケルトンを全部おいてきたジェロニモとは違い、レオはまだ少し戦闘人形を残しておいた。
それでも10体程度。
バルログの力を使えるジェロニモと戦うには、どう考えてもこれでは数が足りない。
それが分かっているのか、ジェロニモは人形たちを見ても余裕の表情を崩さなかった。
「すまんが、みんな頼むぞ!」
“コクッ!!”
レオの指示を受け、頷いた人形たちは手に持つ剣でジェロニモへと向かっていく。
「舐めるな!!」
迫り来る人形たちに、ジェロニモは慌てることなく剣と鞭を振るう。
その数回の攻撃だけで、あっという間にレオの人形たちは破壊されてしまった。
しかも、壊されただけでなく、剣で斬られたり鞭で叩かれた場所から着火し、全身に炎が燃え広がっていった。
「バルログの力を使える上に人としての知能も使える。お前単体でバルログと戦うようなものだ!!」
「くそっ!!」
ジェロニモの戦い方を見極めるためとはいえ、自分の作り出した人形たちが壊される。
しかも、軸となる金属だけ残して燃やし尽くしてしまった。
そうなる可能性を感じていたとはいえ、人形たちに申し訳ないことをさせてしまったと、レオは歯を食いしばって悔しがった。
人形たちがやられてしまい、またも1人になってしまったが、レオの中には少しだけ分かったことがあった。
『思った通り、剣技などに関してはたいしたことはない』
バルログの力により、ジェロニモの攻撃の威力と速度はとんでもないものがある。
しかし、それを使っているジェロニモ自身の技術がそんなでもないことからか、防ぐ分には難しくないかもしれない。
「おっ?」
『接近戦より遠距離攻撃だ!!』
人形たちを犠牲にしてしまったからには、勝たないといけない。
そう考えたレオは、人形たちが教えてくれた情報を元にジェロニモとの戦闘方法を導き出した。
レオが何かを掴んだような表情をして魔力を練りだしたのを見て、ジェロニモは何かしてくるのかと身構える。
しかし、何をされても大丈夫な自信があるのか、武器を下げたままだ。
「【水】!!」
「魔法!?」
炎には水。
そう言うかのように、レオはまず水の魔法で水球を放つ。
何をするのかと思っていたら魔法を放って来たので、ジェロニモは僅かに驚きの声をあげる。
魔法はたしかに優秀な能力だが、戦闘において使えるほどの威力を出せる者は少ない。
人形使いとしてしか知らないため、ジェロニモはレオがそんな攻撃をしてくるとは思っていなかったようだ。
「ムッ! ……何だ。なかなかの威力だが、俺には通じんじゃないか……」
飛んできた水球に対し、ジェロニモは剣を盾にするようにして身構える。
水球が着弾した瞬間衝撃を受けるが、防いでしまえばなんてことない。
当たって弾けた水も、すぐにジェロニモの炎の魔力によって、ジュ~という音と共に蒸発していった。
その結果を見たジェロニモは、肩をなで下ろすように笑みを浮かべた。
「【氷】!!」
「今度は氷か……」
続いてレオが放ったのは氷魔法の氷柱。
先が尖った氷柱が、ジェロニモに向かって飛んで行く。
その氷柱を、ジェロニモは鞭を振って防ぐ。
鞭に触れて軌道がずれた氷柱が、水へと変わって地面へと飛び散った。
「抵抗は終わりか?」
「あぁ……」
「何っ?」
魔法攻撃をしてくるとは思わなかったが、防げるレベルだ。
レオの攻撃に脅威を感じなかったジェロニモは、余裕の態度で話しかける。
自分の攻撃が通用しないと分かり、恐れおののく表情を期待していたのだが、レオは思い通りの言葉と表情をしていなかった。
それどころか、レオの方も笑みを浮かべていた。