「何だ、あれは……?」
上空に跳び上がる物体を見て、驚いているのはジェロニモたちだけではない。
初めて見た王国兵たちも、味方であるレオの出したものに驚いている。
レオの出したものは、秘策として作り出しておいた鷲型人形。
ただし、普通の鷲のサイズではなく、それを数倍の大きさにしてレオを背に乗せて跳び回ることを可能にした人形だ。
ジェロニモも同じように大型鳥の骨を求めたようだが、レオの場合は作れば手に入る。
そういった部分ではレオの能力の方が有利に働いたという所だ。
「鷲か……」
その鷲型人形を見たメルクリオは、レオがどうして自信ありげに言っていたのか理解した。
上空からの攻撃もできるスケルトンドラゴンだが、巨体なだけに上空だと移動速度が鈍く、簡単に方向転換できないような状態だ。
生前の生身の状態の時ならそれも何とかできたかもしれないが、骨と魔力で動いているだけだと上手く飛ぶことができていない。
そこを突けば攻撃することができるということだ。
「似たような能力なら、こっちも空を飛べばいい!」
スケルトンドラゴンよりも上空へと上がったレオは、旋回しながら攻撃を開始することにした。
「っ!! スケルトンワイバーンか……」
スケルトンドラゴンへの攻撃を開始しようとしたところで、下から何かが向かって来るのが見えた。
そのため、レオは鷲人形に付けている手綱を操作して、その場から移動する。
飛んできたのは3体のスケルトンワイバーンだった。
投石機を潰した時同様に、3人の男がスケルトンワイバーンの足へ掴まっている。
「まさかスケルトンドラゴン対策が更に上空からの攻撃だとは……」
「ジェロニモ様も驚かれていたぞ」
「しかし、我々が阻止させてもらう!!」
スケルトンワイバーンに掴まっている男たちが、順番に言葉を発する。
どうやらレオの鷲人形を見て、ジェロニモが咄嗟に出動を命じたらしい。
来ることは分かっていたが、せめてもう少し待ってほしかった。
スケルトンドラゴンを倒してしまってからなら、何の憂いもなくこの3体の相手することができた。
ジェロニモの判断力が、思ったよりも良かったことが恨めしい。
「くそっ!!」
同じ骨と魔力で飛び回るといっても重量のあるスケルトンドラゴンとは違い、レオの鷲型人形と同じくらいのサイズをしているスケルトンワイバーンの方は小回りが利く。
それでもレオの人形の方が速く動き回れるのだが、相手は3体で連携して向かって来ている。
1体から逃れても、他の2体が先を読むように追いかけて来て突き放すことができない。
このままでは、いつまで経ってもスケルトンドラゴンへ攻撃することなんて出来そうにない。
「危ない! ……もしかして相打ちでも狙っているのか?」
「ご名答!」
上空で鷲型人形を操作して動き回るレオ。
その進行方向に合わせ、体当たりするように1体のスケルトンワイバーンが飛び込んで来た。
ギリギリの所を何とか回避し、レオは冷や汗をかいた。
その時思わず出たレオの呟きに、男の1人が答えを返してきた。
相手は3体だ。
その中の1体がレオと共に落ちようとも、他の2体が仲間の男だけでも救出すればいいだけだ。
最大戦力のスケルトンドラゴンを潰されるより、スケルトンワイバーンの1体が潰れるくらいなんてことないという判断のようだ。
「命令されたのかもしれないが、そんなことしてあんたたちが絶対助かる保証なんてないだろ!!」
落下する人間を空中でキャッチするなんて、成功するか分かったものではない。
絶対助かるという保証がないなか相打ちを狙ってくるなんて、命を捨てるようなことをしているとレオは男たちに自制を促す。
「そんなの分かった上での攻撃だ!!」
「何だって!!」
レオの言葉は男たちには響かない。
そうなる事が最初から分かっての相打ち狙いのようだ。
父のムツィオ同様、人の命を何とも思わない作戦ばかりするジェロニモに、そこまで尽くす意味が分からない。
「そうか……」
彼らの表情を見る限り、望んでやっているようには見えない。
切羽詰まった表情をしているので、レオはなんとなく事情を察した。
上空で動き回っているため確認することはできないが、恐らく彼らも強制奴隷にされているのかもしれない。
それならば、命令に従って命を落とす行為をおこなう理由が理解できた。
それと同時に、レオはまたも人の命を軽く扱うジェロニモのことが許せなかった。
「申し訳ないが、君たちにやられる訳にはいかない!」
「「「っ!!」」」
レオの言葉と共に、急に鷲型人形の飛空速度が加速する。
突然の出来事に、男たちはついていけない。
あっという間に、レオとの距離が広がっていた。
「魔道具か!?」
男の1人が呟いたように、レオの鷲型人形が加速したのは魔道具を使ったことによるものだ。
ジェロニモとレオの能力は似ているが、違う部分が存在する。
魔力のみで行動するスケルトンとは違い、レオの場合人形に魔道具を仕込むことが可能なところだ。
魔道具を併用すれば、戦闘などに使える魔力が温存できる。
普通の鳥と同じく、レオの作った鷲型人形は風に乗って飛んでいる。
もしもの時の逃走用に、加速装置として足の裏から風を噴き出す魔道具をしていたのだが、こんなすぐに使うことになるとは思わなかった。
しかし、結果的に用意していたのは正解だった。
これでスケルトンワイバーンへの攻撃をする余裕ができた。
「【風刃】!!」
距離を取り、正対するようにUターンすると、レオは手綱から右手を離して魔法を放つ。
魔法の師匠であるジーノから教わったことにより、成長したレオの風魔法が発動する。
スケルトンワイバーンに向かって、風の刃が飛んで行った。
「なっ!?」
「ヤバい!!」
「翼っ!?」
レオの魔法により、3体のスケルトンワイバーンが落下し始める。
捕まっている3人の男は慌てたように声をあげた。
ジェロニモのスケルトンは、普通のアンデッド魔物であるスケルトンと同じで頭部が弱点。
違いがあるとすれば、魔石があるかないかの違いだろう。
そのため、男たちはレオがスケルトンワイバーンの頭部を狙ってくると思っていた。
しかし、それが違った。
レオが狙ったのは、スケルトンワイバーンの翼の部分だった。
原理は分からないが、翼があるから飛べているのだと判断したレオは、頭部に攻撃を加えて倒すよりも、翼の部分を破壊して飛べなくしてしまえば、後は自由落下で地面にたたきつけられて頭部も破壊できると考えたのだ。
案の定、レオの魔法で翼を破壊されたスケルトンワイバーンたちは、錐揉み状態で落下しだした。
「良かった……」
翼がなくても飛べた時のために、念のため頭部への攻撃も用意していた。
そうすることなく済んで、レオはひとまず安心した。
「次はスケルトンドラゴンだ!!」
レオが3体のスケルトンワイバーンを相手にしている間に、地面へ降り立ったスケルトンドラゴンが王国兵たちに攻撃をしていた。
最初の大火球ではなく、尻尾や足の骨による攻撃だ。
巨体に物を言わせた攻撃により、沢山の王国兵が吹き飛ばされていた。
そのままズンズン進んで行き、王国側の砦までもう少しという所まで迫っていた。
攻撃をしようとするが、人が放つ矢や石が通用する訳もなく、全く止めることなどできない状態だった。
スケルトンドラゴンを倒すのが自分の最大のミッション。
レオはすぐさま方向を変え、スケルトンドラゴンへ向けて飛んで行ったのだった。
「クッ!! このままでは……」
スケルトンドラゴンの姿がどんどん近付いてくる。
レオにこのスケルトンドラゴンの破壊を任せたのだが、まさかあんなに早く邪魔が入るとは思ってもいなかった。
ここまで近付かれると、大火球で砦ごと吹き飛ばされることになるかもしれない。
恐慌状態に陥る兵もいるなか、メルクリオは自分もやられる覚悟を決めるしかなかった。
上空に跳び上がる物体を見て、驚いているのはジェロニモたちだけではない。
初めて見た王国兵たちも、味方であるレオの出したものに驚いている。
レオの出したものは、秘策として作り出しておいた鷲型人形。
ただし、普通の鷲のサイズではなく、それを数倍の大きさにしてレオを背に乗せて跳び回ることを可能にした人形だ。
ジェロニモも同じように大型鳥の骨を求めたようだが、レオの場合は作れば手に入る。
そういった部分ではレオの能力の方が有利に働いたという所だ。
「鷲か……」
その鷲型人形を見たメルクリオは、レオがどうして自信ありげに言っていたのか理解した。
上空からの攻撃もできるスケルトンドラゴンだが、巨体なだけに上空だと移動速度が鈍く、簡単に方向転換できないような状態だ。
生前の生身の状態の時ならそれも何とかできたかもしれないが、骨と魔力で動いているだけだと上手く飛ぶことができていない。
そこを突けば攻撃することができるということだ。
「似たような能力なら、こっちも空を飛べばいい!」
スケルトンドラゴンよりも上空へと上がったレオは、旋回しながら攻撃を開始することにした。
「っ!! スケルトンワイバーンか……」
スケルトンドラゴンへの攻撃を開始しようとしたところで、下から何かが向かって来るのが見えた。
そのため、レオは鷲人形に付けている手綱を操作して、その場から移動する。
飛んできたのは3体のスケルトンワイバーンだった。
投石機を潰した時同様に、3人の男がスケルトンワイバーンの足へ掴まっている。
「まさかスケルトンドラゴン対策が更に上空からの攻撃だとは……」
「ジェロニモ様も驚かれていたぞ」
「しかし、我々が阻止させてもらう!!」
スケルトンワイバーンに掴まっている男たちが、順番に言葉を発する。
どうやらレオの鷲人形を見て、ジェロニモが咄嗟に出動を命じたらしい。
来ることは分かっていたが、せめてもう少し待ってほしかった。
スケルトンドラゴンを倒してしまってからなら、何の憂いもなくこの3体の相手することができた。
ジェロニモの判断力が、思ったよりも良かったことが恨めしい。
「くそっ!!」
同じ骨と魔力で飛び回るといっても重量のあるスケルトンドラゴンとは違い、レオの鷲型人形と同じくらいのサイズをしているスケルトンワイバーンの方は小回りが利く。
それでもレオの人形の方が速く動き回れるのだが、相手は3体で連携して向かって来ている。
1体から逃れても、他の2体が先を読むように追いかけて来て突き放すことができない。
このままでは、いつまで経ってもスケルトンドラゴンへ攻撃することなんて出来そうにない。
「危ない! ……もしかして相打ちでも狙っているのか?」
「ご名答!」
上空で鷲型人形を操作して動き回るレオ。
その進行方向に合わせ、体当たりするように1体のスケルトンワイバーンが飛び込んで来た。
ギリギリの所を何とか回避し、レオは冷や汗をかいた。
その時思わず出たレオの呟きに、男の1人が答えを返してきた。
相手は3体だ。
その中の1体がレオと共に落ちようとも、他の2体が仲間の男だけでも救出すればいいだけだ。
最大戦力のスケルトンドラゴンを潰されるより、スケルトンワイバーンの1体が潰れるくらいなんてことないという判断のようだ。
「命令されたのかもしれないが、そんなことしてあんたたちが絶対助かる保証なんてないだろ!!」
落下する人間を空中でキャッチするなんて、成功するか分かったものではない。
絶対助かるという保証がないなか相打ちを狙ってくるなんて、命を捨てるようなことをしているとレオは男たちに自制を促す。
「そんなの分かった上での攻撃だ!!」
「何だって!!」
レオの言葉は男たちには響かない。
そうなる事が最初から分かっての相打ち狙いのようだ。
父のムツィオ同様、人の命を何とも思わない作戦ばかりするジェロニモに、そこまで尽くす意味が分からない。
「そうか……」
彼らの表情を見る限り、望んでやっているようには見えない。
切羽詰まった表情をしているので、レオはなんとなく事情を察した。
上空で動き回っているため確認することはできないが、恐らく彼らも強制奴隷にされているのかもしれない。
それならば、命令に従って命を落とす行為をおこなう理由が理解できた。
それと同時に、レオはまたも人の命を軽く扱うジェロニモのことが許せなかった。
「申し訳ないが、君たちにやられる訳にはいかない!」
「「「っ!!」」」
レオの言葉と共に、急に鷲型人形の飛空速度が加速する。
突然の出来事に、男たちはついていけない。
あっという間に、レオとの距離が広がっていた。
「魔道具か!?」
男の1人が呟いたように、レオの鷲型人形が加速したのは魔道具を使ったことによるものだ。
ジェロニモとレオの能力は似ているが、違う部分が存在する。
魔力のみで行動するスケルトンとは違い、レオの場合人形に魔道具を仕込むことが可能なところだ。
魔道具を併用すれば、戦闘などに使える魔力が温存できる。
普通の鳥と同じく、レオの作った鷲型人形は風に乗って飛んでいる。
もしもの時の逃走用に、加速装置として足の裏から風を噴き出す魔道具をしていたのだが、こんなすぐに使うことになるとは思わなかった。
しかし、結果的に用意していたのは正解だった。
これでスケルトンワイバーンへの攻撃をする余裕ができた。
「【風刃】!!」
距離を取り、正対するようにUターンすると、レオは手綱から右手を離して魔法を放つ。
魔法の師匠であるジーノから教わったことにより、成長したレオの風魔法が発動する。
スケルトンワイバーンに向かって、風の刃が飛んで行った。
「なっ!?」
「ヤバい!!」
「翼っ!?」
レオの魔法により、3体のスケルトンワイバーンが落下し始める。
捕まっている3人の男は慌てたように声をあげた。
ジェロニモのスケルトンは、普通のアンデッド魔物であるスケルトンと同じで頭部が弱点。
違いがあるとすれば、魔石があるかないかの違いだろう。
そのため、男たちはレオがスケルトンワイバーンの頭部を狙ってくると思っていた。
しかし、それが違った。
レオが狙ったのは、スケルトンワイバーンの翼の部分だった。
原理は分からないが、翼があるから飛べているのだと判断したレオは、頭部に攻撃を加えて倒すよりも、翼の部分を破壊して飛べなくしてしまえば、後は自由落下で地面にたたきつけられて頭部も破壊できると考えたのだ。
案の定、レオの魔法で翼を破壊されたスケルトンワイバーンたちは、錐揉み状態で落下しだした。
「良かった……」
翼がなくても飛べた時のために、念のため頭部への攻撃も用意していた。
そうすることなく済んで、レオはひとまず安心した。
「次はスケルトンドラゴンだ!!」
レオが3体のスケルトンワイバーンを相手にしている間に、地面へ降り立ったスケルトンドラゴンが王国兵たちに攻撃をしていた。
最初の大火球ではなく、尻尾や足の骨による攻撃だ。
巨体に物を言わせた攻撃により、沢山の王国兵が吹き飛ばされていた。
そのままズンズン進んで行き、王国側の砦までもう少しという所まで迫っていた。
攻撃をしようとするが、人が放つ矢や石が通用する訳もなく、全く止めることなどできない状態だった。
スケルトンドラゴンを倒すのが自分の最大のミッション。
レオはすぐさま方向を変え、スケルトンドラゴンへ向けて飛んで行ったのだった。
「クッ!! このままでは……」
スケルトンドラゴンの姿がどんどん近付いてくる。
レオにこのスケルトンドラゴンの破壊を任せたのだが、まさかあんなに早く邪魔が入るとは思ってもいなかった。
ここまで近付かれると、大火球で砦ごと吹き飛ばされることになるかもしれない。
恐慌状態に陥る兵もいるなか、メルクリオは自分もやられる覚悟を決めるしかなかった。