「テスタ!」
「ハッ!」
スケルトンドラゴンの稼働を決意したジェロニモは、裏組織の長であるテスタを呼び出す。
どこで聞いていたのか分からないが、テスタはその呼び出しですぐ姿を現した。
父のムツィオを殺した後、テスタの組織はそのままジェロニモに仕えることにした。
そうなったのも、依頼人が父から子に変わっただけの思いしかないからだ。
ムツィオよりも金払いが良いことから、ジェロニモの方がむしろやりがいがあるといってもいい。
「これからスケルトンドラゴンを稼働する」
「蹂躙劇の始まりですか?」
「その通りだ」
スケルトンドラゴンの稼働。
そうなれば王国兵が大量に消え去ることになる。
テスタはその様を見るのがとても楽しみで仕方がないらしく、ジェロニモの発言に笑みを浮かべる。
最初にジェロニモがテスタたちに依頼した内容は、ドラゴンの骨の入手。
その話を聞いた時、テスタはジェロニモが何をしたいのか分からなかった。
依頼は依頼なので、とりあえずテスタたちはルイゼン領内で竜が発見されたことがなかったか文献を探し回った。
1件だけ遺跡のようなものを発見したテスタは、ジェロニモをそこへ案内した。
遺跡を掘り起こして骨が残っていたのを見たジェロニモが、それをスケルトンとして動かした時は驚愕したものだ。
「楽しみですね……」
ドラゴンの骨まで動かすジェロニモの能力。
その能力は恐ろしいが、一撃で全てを消し去る様はテスタを魅了した。
暗殺や諜報のような作業が得意ではあるが、何もかも一発で吹き飛ばしてしまう方がテスタの性格に合っていたといったところだろうか。
スケルトンドラゴンの強力な一撃で、王国兵が消え去る様がまた見られるのかと思うと楽しみで仕方がないようだ。
「お前にその蹂躙の開始合図を任せる」
「了解しました!」
スケルトンドラゴンを動かすにしても、態勢充分の状態で動かすより何かしらの混乱に乗じて攻めかからせた方が王国への被害も甚大にできる。
そう考え、ジェロニモはテスタへ王国混乱をさせる指示を出す。
その指示に頷いたテスタは、その場から消えるようにいなくなった。
「スケルトンの弱点は頭だ! 頭を破壊すれば動かなくなる!」
「頭を狙え!!」
数によって攻めかかってくるスケルトンたちに、王国兵たちは奮戦する。
魔導士たちは魔法による投石で数を減らし、戦闘兵はそれを抜けてきたのを相手にしていた。
ここまでの戦いで、兵にはスケルトンの弱点は露呈している。
兵たちは報告を受けている通り、スケルトンの頭部を目掛けて攻撃をしかけている。
「ぐあっ!!」
それでも数の多いスケルトンを全て抑えることなどできなく、兵の1人がスケルトンの剣で怪我を負う。
鎧を着けていたことで即死はまぬがれたが、かなりの深手だ。
「誰か! 彼を治療室へ運んでくれ!」
「「ハッ」」
先程怪我を負った仲間を肩に担ぎ、1人の兵が後方に控える支援兵に任せる。
その怪我人を受け取った支援兵たちは、怪我人を治療室へと運んで行った。
「怪我人だ!! 治療を頼む!!」
「そこへ横にしてくれ!!」
怪我人が運ばれると、治療班が対処に当たる。
指示された支援兵は、言われた通りに怪我人をベッドに横にして、また戦場の方へと向かっていった。
「……うっ、うぅ……」
「……大丈夫だ。そんなに深い傷じゃないぞ!!」
1人の治療員が運び込まれた兵の怪我の様子を見る。
怪我人のうめき声に、他の治療員が励ますように声をかける。
言葉の通り、怪我は深いが治療可能のレベルだ。
「これで大丈夫だ!」
治療員によって回復薬をかけられ、次第に傷口が塞がっていく。
これで安静にしていれば問題ないだろう。
「ありがとさん!!」
「「「っ!?」」」
兵を助けられて安堵した治療班たちに、回復したばかりの兵は目を開いて感謝の言葉を口にする。
しかし、その言葉を発した次の瞬間、どこから出した短剣で治療班たちの首を掻き斬った。
「何だ!? 何を……!?」
「敵から連れてきた冒険者たちはどこだ?」
突如仲間が殺され、治療班の者たちは慌てる。
数人が部屋の外へと逃げ出す中、1人の治療班の女性が殺人を犯した男に捕まる。
恐怖に慄く女性に対し、男は血まみれの短剣を首筋に当てて問いかける。
「に、西棟へ……」
「そうか。ご苦労…さん!」
男の目的はジョコンドたちの居場所だ。
スパーノたちが捕まえて連れて来ていたジョコンドたちは、戦後に奴隷紋を解呪したあと聴取を開始する予定だった。
これまでの経験から、牢に入れても奴隷紋の影響で死んでしまう可能性がある。
そのため、牢ではなく1つの棟の中へ入れておくことになっていた。
男はジョコンドたちの場所を聞くことができると、そのまま短剣で女性の首を掻き斬ったのだった。
「西棟か……」
治療室から1羽のカラスが飛び立つ。
そのカラスは、砦付近に隠れていたテスタの所へとたどり着いた。
カラスによって届けられた報告により、テスタはジョコンドたちの位置を把握した。
“ドーーーン!!”
「何だっ!?」
「爆発っ!?」
後方からの爆発音に、レオたちは慌てたように声をあげる。
何が起きたのか分からないのだから当然だ。
「西棟からだ!!」
砦内にいた兵たちも何が起きているのか分からず、爆発した方へと向かっていく。
爆発したのは西棟。
恐らく強制奴隷にされた冒険者たちを隔離していた場所だ。
「何か起きた!?」
「て、敵の……冒険者たちが、爆発した……」
爆発に巻き込まれて怪我を負った人間に駆け寄った兵が声をかけると、その怪我人によって何が起きたのか分かった。
手錠などで魔力を使えないようにしていたので安心していたのだが、ジョコンドたち冒険者の体内には魔道具が仕掛けられたようだ。
その魔道具が遠隔操作されたらしく、全員が一斉に爆発を起こしたそうだ。
爆発によって西棟が壊れ、その瓦礫が兵たちに襲い掛かったそうだ。
「何が起きた!?」
「治療室でも異変があったそうです!!」
「何っ!?」
西棟付近にいた兵が少なかったのは幸いと言っていいだろう。
とりあえず怪我人を治療するため、怪我した兵を治療室へ運ぶことにした。
そうしたら、治療室の周辺でも兵たちが動き回っていた。
「何でも怪我した兵に扮して忍び込んだそうです!」
「くそっ!! ちゃんと調査はおこなっていたはずなのに……」
入り込んだ男はすぐさま駆け付けた兵たちによって始末されたようだが、治療班の4人が殺害されてしまったそうだ。
その話に、信じられないといったような表情で支援兵の男は呟く。
彼が言ったように、王国内に進入していたスパイたちは、王室調査官の手によって捕まえるか始末されていた。
兵の中にも敵に繋がっている者がいないか調査をおこなっていたため、侵入されているとは思ってもいなかったのだ。
「まずは治療室が問題だ! そこの空いている部屋を治療室代わりにするんだ!」
どうやって侵入したかは分からないが、今は治療室の問題が重要だ。
血まみれの部屋での治療は衛生的に良くない。
そのため、支援兵の1人が機転を利かせて近くの部屋を代替にすることを提案した。
その後、治療班を殺害した男の首筋には奴隷紋が刻印されていたのが確認された。
治療に当たる際には、首筋を確認してからおこなうことが徹底され、再発防止がされることになった。
「まさか侵入されていたなんて……」
報告を受けたレオは、驚きつつ何が起きたのかを理解した。
西棟の冒険者たちの爆発と侵入者の因果関係が分からないが、無関係だとは思えない。
調査したいところだが、そんな時間はない。
とりあえず、これ以上大事にならないことは理解したため、後は自然と沈静化するのを待つしかない。
「っ!?」
兵たちが慌てている所で、レオは首筋に嫌な予感がした。
その勘に従うように、ルイゼン側の陣の方へ目を向ける。
「……スケルトンドラゴン」
「ハッ!」
スケルトンドラゴンの稼働を決意したジェロニモは、裏組織の長であるテスタを呼び出す。
どこで聞いていたのか分からないが、テスタはその呼び出しですぐ姿を現した。
父のムツィオを殺した後、テスタの組織はそのままジェロニモに仕えることにした。
そうなったのも、依頼人が父から子に変わっただけの思いしかないからだ。
ムツィオよりも金払いが良いことから、ジェロニモの方がむしろやりがいがあるといってもいい。
「これからスケルトンドラゴンを稼働する」
「蹂躙劇の始まりですか?」
「その通りだ」
スケルトンドラゴンの稼働。
そうなれば王国兵が大量に消え去ることになる。
テスタはその様を見るのがとても楽しみで仕方がないらしく、ジェロニモの発言に笑みを浮かべる。
最初にジェロニモがテスタたちに依頼した内容は、ドラゴンの骨の入手。
その話を聞いた時、テスタはジェロニモが何をしたいのか分からなかった。
依頼は依頼なので、とりあえずテスタたちはルイゼン領内で竜が発見されたことがなかったか文献を探し回った。
1件だけ遺跡のようなものを発見したテスタは、ジェロニモをそこへ案内した。
遺跡を掘り起こして骨が残っていたのを見たジェロニモが、それをスケルトンとして動かした時は驚愕したものだ。
「楽しみですね……」
ドラゴンの骨まで動かすジェロニモの能力。
その能力は恐ろしいが、一撃で全てを消し去る様はテスタを魅了した。
暗殺や諜報のような作業が得意ではあるが、何もかも一発で吹き飛ばしてしまう方がテスタの性格に合っていたといったところだろうか。
スケルトンドラゴンの強力な一撃で、王国兵が消え去る様がまた見られるのかと思うと楽しみで仕方がないようだ。
「お前にその蹂躙の開始合図を任せる」
「了解しました!」
スケルトンドラゴンを動かすにしても、態勢充分の状態で動かすより何かしらの混乱に乗じて攻めかからせた方が王国への被害も甚大にできる。
そう考え、ジェロニモはテスタへ王国混乱をさせる指示を出す。
その指示に頷いたテスタは、その場から消えるようにいなくなった。
「スケルトンの弱点は頭だ! 頭を破壊すれば動かなくなる!」
「頭を狙え!!」
数によって攻めかかってくるスケルトンたちに、王国兵たちは奮戦する。
魔導士たちは魔法による投石で数を減らし、戦闘兵はそれを抜けてきたのを相手にしていた。
ここまでの戦いで、兵にはスケルトンの弱点は露呈している。
兵たちは報告を受けている通り、スケルトンの頭部を目掛けて攻撃をしかけている。
「ぐあっ!!」
それでも数の多いスケルトンを全て抑えることなどできなく、兵の1人がスケルトンの剣で怪我を負う。
鎧を着けていたことで即死はまぬがれたが、かなりの深手だ。
「誰か! 彼を治療室へ運んでくれ!」
「「ハッ」」
先程怪我を負った仲間を肩に担ぎ、1人の兵が後方に控える支援兵に任せる。
その怪我人を受け取った支援兵たちは、怪我人を治療室へと運んで行った。
「怪我人だ!! 治療を頼む!!」
「そこへ横にしてくれ!!」
怪我人が運ばれると、治療班が対処に当たる。
指示された支援兵は、言われた通りに怪我人をベッドに横にして、また戦場の方へと向かっていった。
「……うっ、うぅ……」
「……大丈夫だ。そんなに深い傷じゃないぞ!!」
1人の治療員が運び込まれた兵の怪我の様子を見る。
怪我人のうめき声に、他の治療員が励ますように声をかける。
言葉の通り、怪我は深いが治療可能のレベルだ。
「これで大丈夫だ!」
治療員によって回復薬をかけられ、次第に傷口が塞がっていく。
これで安静にしていれば問題ないだろう。
「ありがとさん!!」
「「「っ!?」」」
兵を助けられて安堵した治療班たちに、回復したばかりの兵は目を開いて感謝の言葉を口にする。
しかし、その言葉を発した次の瞬間、どこから出した短剣で治療班たちの首を掻き斬った。
「何だ!? 何を……!?」
「敵から連れてきた冒険者たちはどこだ?」
突如仲間が殺され、治療班の者たちは慌てる。
数人が部屋の外へと逃げ出す中、1人の治療班の女性が殺人を犯した男に捕まる。
恐怖に慄く女性に対し、男は血まみれの短剣を首筋に当てて問いかける。
「に、西棟へ……」
「そうか。ご苦労…さん!」
男の目的はジョコンドたちの居場所だ。
スパーノたちが捕まえて連れて来ていたジョコンドたちは、戦後に奴隷紋を解呪したあと聴取を開始する予定だった。
これまでの経験から、牢に入れても奴隷紋の影響で死んでしまう可能性がある。
そのため、牢ではなく1つの棟の中へ入れておくことになっていた。
男はジョコンドたちの場所を聞くことができると、そのまま短剣で女性の首を掻き斬ったのだった。
「西棟か……」
治療室から1羽のカラスが飛び立つ。
そのカラスは、砦付近に隠れていたテスタの所へとたどり着いた。
カラスによって届けられた報告により、テスタはジョコンドたちの位置を把握した。
“ドーーーン!!”
「何だっ!?」
「爆発っ!?」
後方からの爆発音に、レオたちは慌てたように声をあげる。
何が起きたのか分からないのだから当然だ。
「西棟からだ!!」
砦内にいた兵たちも何が起きているのか分からず、爆発した方へと向かっていく。
爆発したのは西棟。
恐らく強制奴隷にされた冒険者たちを隔離していた場所だ。
「何か起きた!?」
「て、敵の……冒険者たちが、爆発した……」
爆発に巻き込まれて怪我を負った人間に駆け寄った兵が声をかけると、その怪我人によって何が起きたのか分かった。
手錠などで魔力を使えないようにしていたので安心していたのだが、ジョコンドたち冒険者の体内には魔道具が仕掛けられたようだ。
その魔道具が遠隔操作されたらしく、全員が一斉に爆発を起こしたそうだ。
爆発によって西棟が壊れ、その瓦礫が兵たちに襲い掛かったそうだ。
「何が起きた!?」
「治療室でも異変があったそうです!!」
「何っ!?」
西棟付近にいた兵が少なかったのは幸いと言っていいだろう。
とりあえず怪我人を治療するため、怪我した兵を治療室へ運ぶことにした。
そうしたら、治療室の周辺でも兵たちが動き回っていた。
「何でも怪我した兵に扮して忍び込んだそうです!」
「くそっ!! ちゃんと調査はおこなっていたはずなのに……」
入り込んだ男はすぐさま駆け付けた兵たちによって始末されたようだが、治療班の4人が殺害されてしまったそうだ。
その話に、信じられないといったような表情で支援兵の男は呟く。
彼が言ったように、王国内に進入していたスパイたちは、王室調査官の手によって捕まえるか始末されていた。
兵の中にも敵に繋がっている者がいないか調査をおこなっていたため、侵入されているとは思ってもいなかったのだ。
「まずは治療室が問題だ! そこの空いている部屋を治療室代わりにするんだ!」
どうやって侵入したかは分からないが、今は治療室の問題が重要だ。
血まみれの部屋での治療は衛生的に良くない。
そのため、支援兵の1人が機転を利かせて近くの部屋を代替にすることを提案した。
その後、治療班を殺害した男の首筋には奴隷紋が刻印されていたのが確認された。
治療に当たる際には、首筋を確認してからおこなうことが徹底され、再発防止がされることになった。
「まさか侵入されていたなんて……」
報告を受けたレオは、驚きつつ何が起きたのかを理解した。
西棟の冒険者たちの爆発と侵入者の因果関係が分からないが、無関係だとは思えない。
調査したいところだが、そんな時間はない。
とりあえず、これ以上大事にならないことは理解したため、後は自然と沈静化するのを待つしかない。
「っ!?」
兵たちが慌てている所で、レオは首筋に嫌な予感がした。
その勘に従うように、ルイゼン側の陣の方へ目を向ける。
「……スケルトンドラゴン」