「ハッ!!」
「うぐっ!!」
ジョコンドの槍による突きを剣で弾いて懐へ入り込み、スパーノはそのままジョコンドの腹へ拳を打ち込んだ。
それにより、気を失ったジョコンドがその場へと倒れ込み 冒険者同士の戦いに決着がついた。
同じ高ランクでもスパーノたちの方が精鋭揃いであるため、こうなることは分かっていたことだ。
勝利したはいいが、自分たちが戦っている間に何か起きていたようで、王国側の様子が慌ただしい。
「ジョコンド……、どうして……」
何が起きたかも気になるが、魔物専門のはずのジョコンドが参戦した理由が分からない。
他の冒険者の中には元々犯罪者紛いの人間も混じっているので、そいつらなら分からなくもないが、彼に関しては結局何が原因だったのか分からなかった。
「っ!? これは……」
倒れたジョコンドをこのまま放置しておく訳にはいかない。
そのため、スパーノは捕まえて王国側へと連れて行くことにした。
彼の体を持ち上げようとした時、スパーノはジョコンドの首筋辺りに違和感を抱いた。
何かと思って見てみると、そこには奴隷紋が刻印されていた。
戦っている時は後ろ髪で隠れていたので分からなかったが、これでようやくジョコンドが戦うことになった意味を理解した。
ルイゼン側には、強制奴隷が得意な人間がいるという話だった。
恐らく、その者に戦うように仕向けられたようだ。
「っ!? みんな退くぞ!!」
ジョコンド以外にもここにいる冒険者たちは強制奴隷にされていたらしく、倒れている他の人間を調べてみたら同じように奴隷紋が刻印されていた。
全員かは分からないが、多くの者が望まぬまま連れてこられたのかもしれない。
そのことにスパーノが気付いた時、一旦退いていたスケルトン軍団の侵攻が始まった。
このままここにいては、スパーノたちでも数に押しつぶされてしまう。
ジョコンドをはじめとして、生きている敵方の冒険者たちを抱え、スパーノたちは後退を始めた。
「魔導士隊!」
スパーノたちが戻ってきて、王国側はスケルトンが迫ってくるのを確認した。
スケルトンワイバーンを使用しての上空攻撃により、王国側の投石機が破壊されてしまった。
そうなると、これまでのように魔法による石の雨を降らすしかない。
フェリーラ領領主であるメルクリオの指示により、魔導士たちが投石用に用意していた石をスケルトンたちに飛ばし始めた。
「くそっ!! どんだけ用意しているんだ……」
急遽出動することになった魔導士たち。
これまでの戦いでこの攻撃方法になれたのか、スケルトンたちを次々と破壊していった。
しかし、結構な量のスケルトンを倒しているというのに、スケルトン兵は続々と迫ってきている。
相当数倒しているというのに減っている様子のないスケルトンの数に、メルクリオは思わず声を漏らす。
「ぐあっ!!」
落下してくる投石を抜けてきたスケルトン兵と動物型スケルトンが、王国兵へと襲い掛かる。
ロイたち人形兵たちも応戦しているが、数がこれまでよりも多いため対応しきれない。
多少攻撃を受けて、一部破損している人形たちが出始めた。
「このまま破壊されるくらいなら、魔導士の人たちの負担を減らした方がいいでしょう。出ている人形たちを使います!」
「レオ……、分かった!」
今の所動けなくなっている人形はいない。
このまま破壊されて動けなくなるよりも、内蔵している魔力を使ってスケルトンの数を減らしてしまいたい。
そうすれば魔導士たちの負担も減らせる。
そう考えたレオは、自分がこれからやることをメルクリオへ進言した。
兵たちの被害を減らすためにも、スケルトンの大量破壊は望ましいこと。
レオの申し出に、メルクリオは了承した。
「ロイ!」
“コクッ!”
レオの声に、ロイが了解したように頷きを返す。
最初に作り出されただけあって、主人の意をくむのが速いようだ。
“スッ!!”
ロイは仲間の人形たちに指示を出すように、剣をスケルトンたちへと向ける。
それだけで理解したのか、人形たちは列を作ってスケルトンたちに手を向けて魔力を放出し始めた。
その魔力によって石の雨が降り注ぐ。
「なっ!! 爆発!?」
ただの石の雨ではない。
着弾したと同時に爆発を起こすようにされていたらしく、石が割れて四方へと飛び散る。
直撃を免れたスケルトン兵たちも、その飛び散った石によってどこかしらの骨を破損した。
特に動物型のスケルトンの方が被害を受けているようで、俊敏だった機動力を削ぐことに成功していた。
その結末を見ることなく、レオの出した人形たちは力をなくしたように活動を停止した。
「ご苦労さま……」
動かなくなった自分の人形たちを見て、レオは褒めてあげたい気持ちになった。
彼らのお陰で、少しでも王国兵の命が救われる。
自分の魔力で動くだけの人形とは言っても、レオは人形たちの功績を嬉しく思ったのだ。
このまま戦場に置いては邪魔になってしまう。
レオは魔法によってできた僅かな時間を利用して、動かなくなった人形たちを魔法の指輪に収納していった。
「この人形たちに助けられました。ありがとうございました!」
人形たちの功績を認めていたのはレオだけではなかった。
魔法によって手の空いた王国兵たちも、レオの収納作業に協力してくれた。
レオの側に動かなくなったオルを運んできた兵は、感謝の言葉と共にレオへと渡していった。
どうやらオルが彼を助けたようだ。
その感謝の言葉に、レオはさらに人形たちを誇らしく思ったのだった。
「お疲れ……」
「私というより人形たちのお陰です」
人形たちを収納して戻ってきたレオへ、メルクリオは労の言葉をかける。
それに対し、自分の能力であっても評価を受けるのは違うような気がしたレオは、メルクリオへと返答した。
「……それでも、一時しのぎにしかならないか……」
「そうみたいですね……」
人形たちの魔法で多くのスケルトンを減らせ、弱らせることができた。
それがあったというのにもかかわらず、スケルトンがまだ迫ってきている。
いい加減呆れて来るような数で、せっかくの人形たちの成果も霞んでしまいそうだ。
「それにしても、ジェロニモという男はとんでもない魔力量の持ち主のようですね」
魔石による行動時間の延長を施しているレオの人形たちと違い、スケルトンたちは与えられた魔力だけで行動している。
つまりは、一定期間を過ぎれば動かなくなるはずだ。
そうならないためにはほぼ毎日魔力の供給をおこなわなければならない。
休戦後に王国側が攻め込むという可能性を感じていたといっても、ここまでの数を用意されているとなると、スキルを発動しているジェロニモの魔力量がとんでもないということになる。
ロイたちが倒した魔物による成長と、ヴェントレ島の魔法指導員であるジーノに訓練され、レオ自身魔力量は人並み以上にあると思っている。
そんなレオの倍以上の魔力量を有しているということが、スケルトンの数で分かる。
どうせなら、その力を真っ当な方面に使ってもらいたかった。
「後は兵のみんなに頑張ってもらうしかないです……」
「そうだな」
魔法の指輪の中に収納している人形兵は出し尽くした。
残ったスケルトンたちは、ここに集まった王国兵たちに頑張ってもらうしかない。
レオの言葉に同意するように、メルクリオも頷いたのだった。
「くそっ! あの人形にこんな隠し玉が隠されているとは!!」
またもスケルトンを大量に減らされ、ジェロニモはいら立ちの言葉と共に椅子から立ち上がった。
似ている能力のため、スケルトンたちも魔法を使える。
しかし、威力が弱く、稼働時間のことを考えると魔法を使った攻撃をさせられない。
収納器官がないスケルトンの場合、魔石を使った稼働時間の延長ができないため、直接戦闘という面でしか期待できなかった。
そもそも同じような能力を持っている人間がいると思わなかったため、このような魔法攻撃をされるとは思いもしなかった。
残ったスケルトンだけだと、もしかしたら王国兵を殲滅するのは厳しいかもしれない。
「……仕方ない。スケルトンドラゴンを出すぞ!」
「ハッ!」
数による勝利に自信があったのだが、ここまでの戦いでそれも怪しくなってきた。
しかし、王国側は空撃による投石機の破壊に成す術なかった。
そのことが頭をよぎったジェロニモは、とうとう最終手段に出ることを決めたのだった。
「うぐっ!!」
ジョコンドの槍による突きを剣で弾いて懐へ入り込み、スパーノはそのままジョコンドの腹へ拳を打ち込んだ。
それにより、気を失ったジョコンドがその場へと倒れ込み 冒険者同士の戦いに決着がついた。
同じ高ランクでもスパーノたちの方が精鋭揃いであるため、こうなることは分かっていたことだ。
勝利したはいいが、自分たちが戦っている間に何か起きていたようで、王国側の様子が慌ただしい。
「ジョコンド……、どうして……」
何が起きたかも気になるが、魔物専門のはずのジョコンドが参戦した理由が分からない。
他の冒険者の中には元々犯罪者紛いの人間も混じっているので、そいつらなら分からなくもないが、彼に関しては結局何が原因だったのか分からなかった。
「っ!? これは……」
倒れたジョコンドをこのまま放置しておく訳にはいかない。
そのため、スパーノは捕まえて王国側へと連れて行くことにした。
彼の体を持ち上げようとした時、スパーノはジョコンドの首筋辺りに違和感を抱いた。
何かと思って見てみると、そこには奴隷紋が刻印されていた。
戦っている時は後ろ髪で隠れていたので分からなかったが、これでようやくジョコンドが戦うことになった意味を理解した。
ルイゼン側には、強制奴隷が得意な人間がいるという話だった。
恐らく、その者に戦うように仕向けられたようだ。
「っ!? みんな退くぞ!!」
ジョコンド以外にもここにいる冒険者たちは強制奴隷にされていたらしく、倒れている他の人間を調べてみたら同じように奴隷紋が刻印されていた。
全員かは分からないが、多くの者が望まぬまま連れてこられたのかもしれない。
そのことにスパーノが気付いた時、一旦退いていたスケルトン軍団の侵攻が始まった。
このままここにいては、スパーノたちでも数に押しつぶされてしまう。
ジョコンドをはじめとして、生きている敵方の冒険者たちを抱え、スパーノたちは後退を始めた。
「魔導士隊!」
スパーノたちが戻ってきて、王国側はスケルトンが迫ってくるのを確認した。
スケルトンワイバーンを使用しての上空攻撃により、王国側の投石機が破壊されてしまった。
そうなると、これまでのように魔法による石の雨を降らすしかない。
フェリーラ領領主であるメルクリオの指示により、魔導士たちが投石用に用意していた石をスケルトンたちに飛ばし始めた。
「くそっ!! どんだけ用意しているんだ……」
急遽出動することになった魔導士たち。
これまでの戦いでこの攻撃方法になれたのか、スケルトンたちを次々と破壊していった。
しかし、結構な量のスケルトンを倒しているというのに、スケルトン兵は続々と迫ってきている。
相当数倒しているというのに減っている様子のないスケルトンの数に、メルクリオは思わず声を漏らす。
「ぐあっ!!」
落下してくる投石を抜けてきたスケルトン兵と動物型スケルトンが、王国兵へと襲い掛かる。
ロイたち人形兵たちも応戦しているが、数がこれまでよりも多いため対応しきれない。
多少攻撃を受けて、一部破損している人形たちが出始めた。
「このまま破壊されるくらいなら、魔導士の人たちの負担を減らした方がいいでしょう。出ている人形たちを使います!」
「レオ……、分かった!」
今の所動けなくなっている人形はいない。
このまま破壊されて動けなくなるよりも、内蔵している魔力を使ってスケルトンの数を減らしてしまいたい。
そうすれば魔導士たちの負担も減らせる。
そう考えたレオは、自分がこれからやることをメルクリオへ進言した。
兵たちの被害を減らすためにも、スケルトンの大量破壊は望ましいこと。
レオの申し出に、メルクリオは了承した。
「ロイ!」
“コクッ!”
レオの声に、ロイが了解したように頷きを返す。
最初に作り出されただけあって、主人の意をくむのが速いようだ。
“スッ!!”
ロイは仲間の人形たちに指示を出すように、剣をスケルトンたちへと向ける。
それだけで理解したのか、人形たちは列を作ってスケルトンたちに手を向けて魔力を放出し始めた。
その魔力によって石の雨が降り注ぐ。
「なっ!! 爆発!?」
ただの石の雨ではない。
着弾したと同時に爆発を起こすようにされていたらしく、石が割れて四方へと飛び散る。
直撃を免れたスケルトン兵たちも、その飛び散った石によってどこかしらの骨を破損した。
特に動物型のスケルトンの方が被害を受けているようで、俊敏だった機動力を削ぐことに成功していた。
その結末を見ることなく、レオの出した人形たちは力をなくしたように活動を停止した。
「ご苦労さま……」
動かなくなった自分の人形たちを見て、レオは褒めてあげたい気持ちになった。
彼らのお陰で、少しでも王国兵の命が救われる。
自分の魔力で動くだけの人形とは言っても、レオは人形たちの功績を嬉しく思ったのだ。
このまま戦場に置いては邪魔になってしまう。
レオは魔法によってできた僅かな時間を利用して、動かなくなった人形たちを魔法の指輪に収納していった。
「この人形たちに助けられました。ありがとうございました!」
人形たちの功績を認めていたのはレオだけではなかった。
魔法によって手の空いた王国兵たちも、レオの収納作業に協力してくれた。
レオの側に動かなくなったオルを運んできた兵は、感謝の言葉と共にレオへと渡していった。
どうやらオルが彼を助けたようだ。
その感謝の言葉に、レオはさらに人形たちを誇らしく思ったのだった。
「お疲れ……」
「私というより人形たちのお陰です」
人形たちを収納して戻ってきたレオへ、メルクリオは労の言葉をかける。
それに対し、自分の能力であっても評価を受けるのは違うような気がしたレオは、メルクリオへと返答した。
「……それでも、一時しのぎにしかならないか……」
「そうみたいですね……」
人形たちの魔法で多くのスケルトンを減らせ、弱らせることができた。
それがあったというのにもかかわらず、スケルトンがまだ迫ってきている。
いい加減呆れて来るような数で、せっかくの人形たちの成果も霞んでしまいそうだ。
「それにしても、ジェロニモという男はとんでもない魔力量の持ち主のようですね」
魔石による行動時間の延長を施しているレオの人形たちと違い、スケルトンたちは与えられた魔力だけで行動している。
つまりは、一定期間を過ぎれば動かなくなるはずだ。
そうならないためにはほぼ毎日魔力の供給をおこなわなければならない。
休戦後に王国側が攻め込むという可能性を感じていたといっても、ここまでの数を用意されているとなると、スキルを発動しているジェロニモの魔力量がとんでもないということになる。
ロイたちが倒した魔物による成長と、ヴェントレ島の魔法指導員であるジーノに訓練され、レオ自身魔力量は人並み以上にあると思っている。
そんなレオの倍以上の魔力量を有しているということが、スケルトンの数で分かる。
どうせなら、その力を真っ当な方面に使ってもらいたかった。
「後は兵のみんなに頑張ってもらうしかないです……」
「そうだな」
魔法の指輪の中に収納している人形兵は出し尽くした。
残ったスケルトンたちは、ここに集まった王国兵たちに頑張ってもらうしかない。
レオの言葉に同意するように、メルクリオも頷いたのだった。
「くそっ! あの人形にこんな隠し玉が隠されているとは!!」
またもスケルトンを大量に減らされ、ジェロニモはいら立ちの言葉と共に椅子から立ち上がった。
似ている能力のため、スケルトンたちも魔法を使える。
しかし、威力が弱く、稼働時間のことを考えると魔法を使った攻撃をさせられない。
収納器官がないスケルトンの場合、魔石を使った稼働時間の延長ができないため、直接戦闘という面でしか期待できなかった。
そもそも同じような能力を持っている人間がいると思わなかったため、このような魔法攻撃をされるとは思いもしなかった。
残ったスケルトンだけだと、もしかしたら王国兵を殲滅するのは厳しいかもしれない。
「……仕方ない。スケルトンドラゴンを出すぞ!」
「ハッ!」
数による勝利に自信があったのだが、ここまでの戦いでそれも怪しくなってきた。
しかし、王国側は空撃による投石機の破壊に成す術なかった。
そのことが頭をよぎったジェロニモは、とうとう最終手段に出ることを決めたのだった。