「止まれ!! ジョコンド!!」
「スパーノ……」
王国軍へ向かって攻め込んで来た冒険者たち。
それを止めるべく、同業者のスパーノたちが止めに入る。
元は同じ国の冒険者ということもあり、見知った顔が多くいるようだ。
その中の1人、先頭を走る男性にスパーノは話しかける。
相手も知った顔を見て、驚きと共に足を止めた。
「魔物専門のお前らが何で参戦なんかしてんだ?」
「…………」
ルイゼン領を拠点として、多くの依頼をこなしていた冒険者パーティーのリーダーがこのジョコンドだ。
スパーノも何度か魔物退治で一緒に行動したことがある。
基本的に魔物の討伐で稼いでいたジョコンドたちが、どうしてルイゼン側の兵として参戦しているのか分からない。
特にジョコンドは対人戦を嫌っていたため、人殺しが仕事のような戦争に参加しているのが信じられない。
何があったか分からないが、スパーノはいきなりの方針転換の理由を尋ねた。
しかし、その問いに対しジョコンドは何も答えない。
「もしかして、スケルトンドラゴンの勝ち馬に乗ろうって考えたのか?」
「…………」
ジョコンドたちのパーティーは、ランク的には魔物の相手をしているだけで充分な資金を得られる。
そのため、嫌いな戦争に参加しなくてもいいはずだ。
可能性としては、スケルトンドラゴンの出現で勝利を確信し、参加して活躍すれば好待遇の地位に就けると唆されたのだろうか。
そんなことで意思を変えるような人間ではないとは思いつつ、更にスパーノが問いかけるがジョコンドは何も答えを返してこない。
「何か言えよ!!」
質問に対してジョコンドは何の返答もして来ない。
せめて何か言ってくれれば対応を考えるのだが、何も言ってこないのではもう戦うしかない。
最後の警告をするかのように、スパーノはジョコンドへ声を荒らげた。
「何も言えない……言うことができない」
「……まさか、お前……」
僅かな返答で、スパーノはジョコンドが望んで参戦しているのではないということが理解できた。
原因は分からないが、何か弱みでも握られているのかもしれない。
「スパーノ! 勝負と行こうか?」
「くそっ!!」
何にしても、ジョコンドたち冒険者たちを説得で止めることはできそうにないようだ。
ジョコンドは主武器となる槍を構え、スパーノへ向けて構えを取った。
これ以上話し合う余地がないというかのような態度に、スパーノも渋々剣を抜くしかなかった。
「説得は無理だったようですね……」
「そのようだな……」
戦わずに済めばいいと思ってスパーノたちを送ったのだが、どうやらその期待も無駄だったらしい。
ルイゼン側の冒険者たちとスパーノたちの戦闘が始まってしまった。
その様子を、レオはフェリーラ領領主のメルクリオと共に眺めていた。
スパーノたちは色々な領地から集められた精鋭たちだ。
それぞれがそれぞれの領地で成果を上げている冒険者のため、それぞれの領主とすればあまり危険な目に遭わせてほしくないだろう。
だが、スパーノたちが言い出したことなのでもう任せるしかない。
「高ランク冒険者たちということですが、スパーノたちに勝てるとは思えんな……」
「そうですね……」
冒険者同士の戦いが始まったが、レオたちはそこまで心配していない。
ルイゼン領を拠点としているBランク以上の高ランク冒険者なのだろうが、スパーノたちはみんなAランク以上の冒険者たちだ。
数はほぼ同数のため、戦いは1対1の状態になる。
それならば当然スパーノたちの方が有利。
少しすれば均衡も崩れていくだろう。
「なんか変ですね……」
「何がだ?」
レオの呟きにメルクリオが反応する。
スパーノたちが参戦しているのは敵側も知っていた。
冒険者を出せば、こちらも冒険者を当ててくると予想することもできたはず。
ならば、こちらの戦力を減らすことは難しいと分かっているのに、どうして冒険者たちを出してきたのだろうか。
「時間稼ぎにしかならないんじゃ……」
「たしかに……」
ルイゼン側が何を考えて冒険者たちを出してきたのかは分からないが、時間を稼ぐぐらいしかならないと思える。
そうなると、敵側はこの機に乗じて何かを仕掛けてくるということになる。
「総員! 敵が何かしてくる可能性がある。念のため周囲を警戒しろ!」
「「「「「ハイッ!!」」」」」
レオの言うことが正解とは限らないが、確かに何かおかしい。
そう感じたメルクリオは、兵たちに向けて警戒の指示を出す。
それを受けた兵たちは、少し戸惑いつつも周囲を見渡して警戒を始めた。
「っ!! 何だ!? あれは……」
周囲を警戒していても何の変化も起きない。
気にし過ぎだったのかと思っていたところで、レオはなんとなく上空に目を向けた。
直感に近いその反応により、レオは上空に何かが飛んでいるのが目に入った。
「気付いたようだがもう遅い!!」
上空に飛来しているのは、ワイバーンの骨を利用したスケルトンだろう。
そうやら上空からの攻撃を考えて手に入れたのかもしれない。
それが3体飛行しており、その足には人間が掴まっている。
レオたちの視線が自分たちに向いていると気付いたその人間は、魔法の指輪から巨大な岩を取り出してそのまま落下させてきた。
「作戦終了!!」
「くそっ!! 投石機をやられた!!」
予想通りの結果を得られ、スケルトンワイバーンはUターンするようにルイゼン側へと戻っていった。
彼らがしたかったのは、スケルトン兵にとって面倒な投石機を破壊することだったようだ。
巨大な岩の落下によって、今回のために用意した王国側の投石機のほとんどが破壊されてしまった。
せめてもう少し早く気付いていればと、レオはこの結果に歯を食いしばって悔しがった。
「フッ! これでスケルトン兵が動かせる」
「他国から仕入れた甲斐がありましたね」
投石機の破壊に成功したスケルトンワイバーンたちが戻ってくる。
これで、スケルトン兵による得意の物量押しができる。
上空からの攻撃と考えた時に鳥型の魔物の骨を求めたのだが、人を乗せたり運んだりできるような鳥型の魔物を捕まえることは不可能だった。
人も運べるとなるとワイバーンが思いつき、ワイバーンの骨を手に入れようと考えたのだが、ルイゼン領どころかヴァティーク王国でワイバーンが討伐されたという報告は、ここ何年も聞いたことがない。
自領での入手は無理だったが、他国へ金を出して求めた所、何とか運よく3体の骨を入手することに成功した。
コルラードが言うように、金を出した甲斐があったというものだ。
「スケルトン兵の再度出撃だ!」
地上の冒険者同士の戦闘に目を向けての上空からの攻撃。
それが成功した今、投石による破壊に恐れる必要がなくなったジェロニモは、すぐさまスケルトン兵の出撃を命令した。
「動物型も出し、敵兵を討ち倒す!!」
しかも、スケルトン兵だけでなく、動物型のスケルトンも出しての攻撃を開始した。
おかしな人形も出してきて数を増やしてきたようだが、数なら負けることはない。
王国側が攻め込んで来た時のために、出来る限りのスケルトンを稼働しておいたのだ。
「上空からの攻撃がスケルトンドラゴンだと思っていたのか? あの様子だとスケルトンドラゴン対策も怪しいものだな?」
「そうですね」
スケルトンワイバーンを出したのは、どう対応するのかの確認も見るためのものでもあった。
しかし、王国は気付くのが遅れたとは言っても、成す術もなく攻撃を受けることになった。
それを見る限り対応策があるのかも疑わしく思えてきたジェロニモとコルラードは、王国側を嘲笑うかのような笑みを浮かべた。
「攻め滅ぼせ!!」
これならスケルトンドラゴンを出さずとも大打撃を与えられるのではないか。
そう思ったジェロニモは、スケルトンたちへ向けて再度進軍を指示したのだった。
「スパーノ……」
王国軍へ向かって攻め込んで来た冒険者たち。
それを止めるべく、同業者のスパーノたちが止めに入る。
元は同じ国の冒険者ということもあり、見知った顔が多くいるようだ。
その中の1人、先頭を走る男性にスパーノは話しかける。
相手も知った顔を見て、驚きと共に足を止めた。
「魔物専門のお前らが何で参戦なんかしてんだ?」
「…………」
ルイゼン領を拠点として、多くの依頼をこなしていた冒険者パーティーのリーダーがこのジョコンドだ。
スパーノも何度か魔物退治で一緒に行動したことがある。
基本的に魔物の討伐で稼いでいたジョコンドたちが、どうしてルイゼン側の兵として参戦しているのか分からない。
特にジョコンドは対人戦を嫌っていたため、人殺しが仕事のような戦争に参加しているのが信じられない。
何があったか分からないが、スパーノはいきなりの方針転換の理由を尋ねた。
しかし、その問いに対しジョコンドは何も答えない。
「もしかして、スケルトンドラゴンの勝ち馬に乗ろうって考えたのか?」
「…………」
ジョコンドたちのパーティーは、ランク的には魔物の相手をしているだけで充分な資金を得られる。
そのため、嫌いな戦争に参加しなくてもいいはずだ。
可能性としては、スケルトンドラゴンの出現で勝利を確信し、参加して活躍すれば好待遇の地位に就けると唆されたのだろうか。
そんなことで意思を変えるような人間ではないとは思いつつ、更にスパーノが問いかけるがジョコンドは何も答えを返してこない。
「何か言えよ!!」
質問に対してジョコンドは何の返答もして来ない。
せめて何か言ってくれれば対応を考えるのだが、何も言ってこないのではもう戦うしかない。
最後の警告をするかのように、スパーノはジョコンドへ声を荒らげた。
「何も言えない……言うことができない」
「……まさか、お前……」
僅かな返答で、スパーノはジョコンドが望んで参戦しているのではないということが理解できた。
原因は分からないが、何か弱みでも握られているのかもしれない。
「スパーノ! 勝負と行こうか?」
「くそっ!!」
何にしても、ジョコンドたち冒険者たちを説得で止めることはできそうにないようだ。
ジョコンドは主武器となる槍を構え、スパーノへ向けて構えを取った。
これ以上話し合う余地がないというかのような態度に、スパーノも渋々剣を抜くしかなかった。
「説得は無理だったようですね……」
「そのようだな……」
戦わずに済めばいいと思ってスパーノたちを送ったのだが、どうやらその期待も無駄だったらしい。
ルイゼン側の冒険者たちとスパーノたちの戦闘が始まってしまった。
その様子を、レオはフェリーラ領領主のメルクリオと共に眺めていた。
スパーノたちは色々な領地から集められた精鋭たちだ。
それぞれがそれぞれの領地で成果を上げている冒険者のため、それぞれの領主とすればあまり危険な目に遭わせてほしくないだろう。
だが、スパーノたちが言い出したことなのでもう任せるしかない。
「高ランク冒険者たちということですが、スパーノたちに勝てるとは思えんな……」
「そうですね……」
冒険者同士の戦いが始まったが、レオたちはそこまで心配していない。
ルイゼン領を拠点としているBランク以上の高ランク冒険者なのだろうが、スパーノたちはみんなAランク以上の冒険者たちだ。
数はほぼ同数のため、戦いは1対1の状態になる。
それならば当然スパーノたちの方が有利。
少しすれば均衡も崩れていくだろう。
「なんか変ですね……」
「何がだ?」
レオの呟きにメルクリオが反応する。
スパーノたちが参戦しているのは敵側も知っていた。
冒険者を出せば、こちらも冒険者を当ててくると予想することもできたはず。
ならば、こちらの戦力を減らすことは難しいと分かっているのに、どうして冒険者たちを出してきたのだろうか。
「時間稼ぎにしかならないんじゃ……」
「たしかに……」
ルイゼン側が何を考えて冒険者たちを出してきたのかは分からないが、時間を稼ぐぐらいしかならないと思える。
そうなると、敵側はこの機に乗じて何かを仕掛けてくるということになる。
「総員! 敵が何かしてくる可能性がある。念のため周囲を警戒しろ!」
「「「「「ハイッ!!」」」」」
レオの言うことが正解とは限らないが、確かに何かおかしい。
そう感じたメルクリオは、兵たちに向けて警戒の指示を出す。
それを受けた兵たちは、少し戸惑いつつも周囲を見渡して警戒を始めた。
「っ!! 何だ!? あれは……」
周囲を警戒していても何の変化も起きない。
気にし過ぎだったのかと思っていたところで、レオはなんとなく上空に目を向けた。
直感に近いその反応により、レオは上空に何かが飛んでいるのが目に入った。
「気付いたようだがもう遅い!!」
上空に飛来しているのは、ワイバーンの骨を利用したスケルトンだろう。
そうやら上空からの攻撃を考えて手に入れたのかもしれない。
それが3体飛行しており、その足には人間が掴まっている。
レオたちの視線が自分たちに向いていると気付いたその人間は、魔法の指輪から巨大な岩を取り出してそのまま落下させてきた。
「作戦終了!!」
「くそっ!! 投石機をやられた!!」
予想通りの結果を得られ、スケルトンワイバーンはUターンするようにルイゼン側へと戻っていった。
彼らがしたかったのは、スケルトン兵にとって面倒な投石機を破壊することだったようだ。
巨大な岩の落下によって、今回のために用意した王国側の投石機のほとんどが破壊されてしまった。
せめてもう少し早く気付いていればと、レオはこの結果に歯を食いしばって悔しがった。
「フッ! これでスケルトン兵が動かせる」
「他国から仕入れた甲斐がありましたね」
投石機の破壊に成功したスケルトンワイバーンたちが戻ってくる。
これで、スケルトン兵による得意の物量押しができる。
上空からの攻撃と考えた時に鳥型の魔物の骨を求めたのだが、人を乗せたり運んだりできるような鳥型の魔物を捕まえることは不可能だった。
人も運べるとなるとワイバーンが思いつき、ワイバーンの骨を手に入れようと考えたのだが、ルイゼン領どころかヴァティーク王国でワイバーンが討伐されたという報告は、ここ何年も聞いたことがない。
自領での入手は無理だったが、他国へ金を出して求めた所、何とか運よく3体の骨を入手することに成功した。
コルラードが言うように、金を出した甲斐があったというものだ。
「スケルトン兵の再度出撃だ!」
地上の冒険者同士の戦闘に目を向けての上空からの攻撃。
それが成功した今、投石による破壊に恐れる必要がなくなったジェロニモは、すぐさまスケルトン兵の出撃を命令した。
「動物型も出し、敵兵を討ち倒す!!」
しかも、スケルトン兵だけでなく、動物型のスケルトンも出しての攻撃を開始した。
おかしな人形も出してきて数を増やしてきたようだが、数なら負けることはない。
王国側が攻め込んで来た時のために、出来る限りのスケルトンを稼働しておいたのだ。
「上空からの攻撃がスケルトンドラゴンだと思っていたのか? あの様子だとスケルトンドラゴン対策も怪しいものだな?」
「そうですね」
スケルトンワイバーンを出したのは、どう対応するのかの確認も見るためのものでもあった。
しかし、王国は気付くのが遅れたとは言っても、成す術もなく攻撃を受けることになった。
それを見る限り対応策があるのかも疑わしく思えてきたジェロニモとコルラードは、王国側を嘲笑うかのような笑みを浮かべた。
「攻め滅ぼせ!!」
これならスケルトンドラゴンを出さずとも大打撃を与えられるのではないか。
そう思ったジェロニモは、スケルトンたちへ向けて再度進軍を指示したのだった。