「それで? どう攻めるつもりだい?」
徹底抗戦が確定し、今後の戦闘方法を決めることになった。
今回レオの能力がカギを握るため、シュティウスはレオに作戦を尋ねてきた。
「闇討ちでもかますか?」
メルクリオが続いて話しかける。
いつも世話になっているので、少し軽い口調だ。
「実はその手も考えていましたが……」
メルクリオの問いに返答する。
もしも誰も協力を名乗り出なかった場合、レオは独断で行動することも考えていた。
五分五分というのはレオの期待値も加味されての分析で、本当はもう少し分が悪かったかもしれない。
「皆さんの協力でそれを実行する必要がなくなりました」
本来なら命がけで闇討ちを決行して、ジェロニモとその秘書を道連れにするつもりだった。
夜とは言っても、敵の砦に乗り込んだら当然兵もいるし、スケルトン出現の罠もしかけられているはずだ。
その罠の中をレオ単独で攻めるなんて無謀も良いところだ。
失敗すれば個人の暴走で斬り捨ててもらうつもりだったのは本気なので、攻め込むつもり満々だった。
しかし、メルクリオをはじめとして、沢山の協力者が名乗りを上げてくれた。
これなら闇討ちなどと言う危険を冒さなくても、正面からジェロニモを倒すことができるかもしれない。
「皆さんはこれまで通りスケルトンの相手をしていて頂きたい」
「……えっ?」
レオの申し出に、室内の者たちは驚きが隠せない。
何かしらの作戦があると踏んでいたのだが、これまで通りで良いなんていわれるとは思ってもいなかったからだ。
「それで大丈夫なのか?」
「はい! そうして頂けることで、私はジェロニモに集中できます」
レオとジェロニモの能力は似ている。
違う点といえば、動かしているものが違うということだろうか。
そうなると、他のことで勝負するしかない。
この時のために、レオは色々な人形を開発し、秘匿してきたのだ。
エレナのためにも、今回レオは全力を出させてもらうつもりでいた。
「ハハハ……奴ら頭でもおかしくなったのか?」
4月になり、停戦期間も終了した。
そろそろ会談を開いて、ジェロニモはエレナを受け取りに行くつもりだったのだが、王国側が戦闘に向けての行動を開始しているのが確認できた。
どうやらこちらを相手に戦うつもりのようだ。
停戦前の戦闘で分かりやすいようにこちらの実力を見せてやったというのに、何を考えているというのだろうか。
まさか勝つ気でいるのかと、ジェロニモは笑いを堪えることができなかった。
「スケルトンドラゴンを倒す何かしらの対策を考えてきたのでしょうか?」
「……なるほど、それなら戦うという選択を取ったのも納得できる」
王国側は、スケルトンドラゴンさえいなければ優位に戦えていた。
それならばスケルトンドラゴンを倒せばまた優位に立て、攻め込んで行けるという思いを持っているのだろう。
戦うという選択を王国側が取るのは、コルラードが言うように何か対策を思いついた可能性がある。
そう考えると、ジェロニモもスケルトンドラゴンの使いどころを考えた方が良いかもしれない。
「まぁ、それならそれで構わん。やれるものならやってみろといったところだ」
たしかに、スケルトンドラゴンはジェロニモにとって最大の戦力だ。
しかし、ジェロニモには父のムツィオにも伝えていない秘策がある。
どんな方法かは分からないが、スケルトンドラゴンの破壊をしようとするならば、その時それに対応すればいいだけのことだ。
「念のため背後も警戒するように言っておけよ!」
「はい。かしこまりました」
まだジェロニモが死人のように生きていた時、この戦いでいきなり背後からの敵襲を受けたということをコルラードから聞いた。
その時のことを教訓にし、ジェロニモは背後へも警戒することを指示する。
コルラードはその指示に従い、部隊の配備をすることにした。
「さて、どうでるか見させてもらおう」
優位に立つ余裕なのか、ジェロニモは警戒しつつも王国の動きを注視することにした。
「やれー!!」
王国側の攻撃によって、戦いが始まった。
ルイゼン側のスケルトン兵の対策に、これまでは魔法による投石をおこなっていたが、何も魔法でおこなう必要はない。
投石機を大量に砦に運び入れ、それによって一斉投石の攻撃を開始したのだ。
「よしっ! これまで通りスケルトンに通じているぞ!」
魔法でなくても、投石はスケルトンに通用した。
これで魔法使いたちも戦闘に参加させられる。
「数が多いからって調子に乗るなよ!!」
魔法使いたちによって、攻撃強化や防御強化等の補助魔法をかけてもらった兵たちは、投石を逃れて攻めかかってくるスケルトンと対峙していた。
スケルトンの戦闘力は、一般兵並という評価をされているが、この戦いに集まっている兵たちはそれぞれ領からの選りすぐりの者たちばかり。
そのため、1対1なら当然負けるはずがなく、しかも補助魔法を受けているのでスケルトンは相手にならない。
集団で襲い掛かるからこそ手強いが、それができなければ脅威にならず、王国兵たちはスケルトンを破壊していった。
「なるほど……、スケルトン兵では攻め込めないか……」
ジェロニモがレオに勝っているとしたら、その魔力量だろう。
レオがジェロニモの操るスケルトンドラゴン級の人形を動かそうにも、1分程度しか動かせないだろう。
動かすものの大きさや重量によって、必要となる魔力量は膨大になる。
停戦前の戦いで、王国軍が退くまで姿を現していたところを考えると、レオの倍以上の魔力量があるかもしれない。
その魔力量に物を言わせ、休戦中もジェロニモは兵に遺体を集めさせ、スケルトン兵製造を続けていた。
大量のスケルトン兵を前線に配備したのだが、王国側はこれまでの戦いで対処法を掴んでいるようだ。
それでも時折敵兵を倒しているが、これでは王国の兵を減らすのに時間がかかる。
「ならば……」
スケルトンドラゴンを倒すための策があるのかもしれないが、そんなの砦ごと潰してしまえばいい。
そう考えたジェロニモは、開始早々ではあるが持っているカードを切ることにした。
「……何だあれは!?」
投石機の射程距離からスケルトン兵が後退する。
スケルトン兵ではなかなか決め手になるような攻撃ができないと判断しての行動だろう。
しかし、スケルトンの後退に変わって何かが迫ってきていた。
スケルトン兵の後退により、王国側は敵へと向けて攻めかかろうとしていたが、その何かを確認するように一旦停止した。
「なっ!?」
「犬? 猪? 他にも色々なスケルトンが……」
ジェロニモが切ったカードといっても、似た能力を持つレオが持っているのと変わりはない。
色んなタイプの動物型スケルトンが、王国兵へと向けて突進してきたのだ。
「くっ! スケルトン兵よりも俊敏性が高い!」
迫り来る動物スケルトンたちは、先程後退したスケルトンと違って俊敏性が段違いだ。
投石機による攻撃も、スイスイ躱して接近してくる。
「がっ!! 何て突進力だ!!」
何かの魔物の骨を動かしているのだろう。
猪型のスケルトンが盾兵へと突進する。
1体の突進に対し、2人の盾兵で止めに入る。
何とか止めることはできるが、ジリジリと圧されて後退を余儀なくされた。
「落ち着け! それぞれの特徴を見て対応すれば戦える!」
見たこともないスケルトンたちに、王国兵たちは慌てる。
それを見たフェリーラ領の領主であるメルクリオは、対人戦闘から対魔物戦闘の対応に変化することを指示した。
「メルクリオ様! そろそろ動きます!」
「レオ……、気を付けろよ!」
「はい!」
動物型のスケルトンに慌てる王国兵。
メルクリオの指示で少しずつ対応できるようになっていってはいるが、スケルトンたちの動きが速く分が悪い。
このままでは怪我人が大量に出る。
そう判断したレオは、自分も動くことを決意したのだった。
徹底抗戦が確定し、今後の戦闘方法を決めることになった。
今回レオの能力がカギを握るため、シュティウスはレオに作戦を尋ねてきた。
「闇討ちでもかますか?」
メルクリオが続いて話しかける。
いつも世話になっているので、少し軽い口調だ。
「実はその手も考えていましたが……」
メルクリオの問いに返答する。
もしも誰も協力を名乗り出なかった場合、レオは独断で行動することも考えていた。
五分五分というのはレオの期待値も加味されての分析で、本当はもう少し分が悪かったかもしれない。
「皆さんの協力でそれを実行する必要がなくなりました」
本来なら命がけで闇討ちを決行して、ジェロニモとその秘書を道連れにするつもりだった。
夜とは言っても、敵の砦に乗り込んだら当然兵もいるし、スケルトン出現の罠もしかけられているはずだ。
その罠の中をレオ単独で攻めるなんて無謀も良いところだ。
失敗すれば個人の暴走で斬り捨ててもらうつもりだったのは本気なので、攻め込むつもり満々だった。
しかし、メルクリオをはじめとして、沢山の協力者が名乗りを上げてくれた。
これなら闇討ちなどと言う危険を冒さなくても、正面からジェロニモを倒すことができるかもしれない。
「皆さんはこれまで通りスケルトンの相手をしていて頂きたい」
「……えっ?」
レオの申し出に、室内の者たちは驚きが隠せない。
何かしらの作戦があると踏んでいたのだが、これまで通りで良いなんていわれるとは思ってもいなかったからだ。
「それで大丈夫なのか?」
「はい! そうして頂けることで、私はジェロニモに集中できます」
レオとジェロニモの能力は似ている。
違う点といえば、動かしているものが違うということだろうか。
そうなると、他のことで勝負するしかない。
この時のために、レオは色々な人形を開発し、秘匿してきたのだ。
エレナのためにも、今回レオは全力を出させてもらうつもりでいた。
「ハハハ……奴ら頭でもおかしくなったのか?」
4月になり、停戦期間も終了した。
そろそろ会談を開いて、ジェロニモはエレナを受け取りに行くつもりだったのだが、王国側が戦闘に向けての行動を開始しているのが確認できた。
どうやらこちらを相手に戦うつもりのようだ。
停戦前の戦闘で分かりやすいようにこちらの実力を見せてやったというのに、何を考えているというのだろうか。
まさか勝つ気でいるのかと、ジェロニモは笑いを堪えることができなかった。
「スケルトンドラゴンを倒す何かしらの対策を考えてきたのでしょうか?」
「……なるほど、それなら戦うという選択を取ったのも納得できる」
王国側は、スケルトンドラゴンさえいなければ優位に戦えていた。
それならばスケルトンドラゴンを倒せばまた優位に立て、攻め込んで行けるという思いを持っているのだろう。
戦うという選択を王国側が取るのは、コルラードが言うように何か対策を思いついた可能性がある。
そう考えると、ジェロニモもスケルトンドラゴンの使いどころを考えた方が良いかもしれない。
「まぁ、それならそれで構わん。やれるものならやってみろといったところだ」
たしかに、スケルトンドラゴンはジェロニモにとって最大の戦力だ。
しかし、ジェロニモには父のムツィオにも伝えていない秘策がある。
どんな方法かは分からないが、スケルトンドラゴンの破壊をしようとするならば、その時それに対応すればいいだけのことだ。
「念のため背後も警戒するように言っておけよ!」
「はい。かしこまりました」
まだジェロニモが死人のように生きていた時、この戦いでいきなり背後からの敵襲を受けたということをコルラードから聞いた。
その時のことを教訓にし、ジェロニモは背後へも警戒することを指示する。
コルラードはその指示に従い、部隊の配備をすることにした。
「さて、どうでるか見させてもらおう」
優位に立つ余裕なのか、ジェロニモは警戒しつつも王国の動きを注視することにした。
「やれー!!」
王国側の攻撃によって、戦いが始まった。
ルイゼン側のスケルトン兵の対策に、これまでは魔法による投石をおこなっていたが、何も魔法でおこなう必要はない。
投石機を大量に砦に運び入れ、それによって一斉投石の攻撃を開始したのだ。
「よしっ! これまで通りスケルトンに通じているぞ!」
魔法でなくても、投石はスケルトンに通用した。
これで魔法使いたちも戦闘に参加させられる。
「数が多いからって調子に乗るなよ!!」
魔法使いたちによって、攻撃強化や防御強化等の補助魔法をかけてもらった兵たちは、投石を逃れて攻めかかってくるスケルトンと対峙していた。
スケルトンの戦闘力は、一般兵並という評価をされているが、この戦いに集まっている兵たちはそれぞれ領からの選りすぐりの者たちばかり。
そのため、1対1なら当然負けるはずがなく、しかも補助魔法を受けているのでスケルトンは相手にならない。
集団で襲い掛かるからこそ手強いが、それができなければ脅威にならず、王国兵たちはスケルトンを破壊していった。
「なるほど……、スケルトン兵では攻め込めないか……」
ジェロニモがレオに勝っているとしたら、その魔力量だろう。
レオがジェロニモの操るスケルトンドラゴン級の人形を動かそうにも、1分程度しか動かせないだろう。
動かすものの大きさや重量によって、必要となる魔力量は膨大になる。
停戦前の戦いで、王国軍が退くまで姿を現していたところを考えると、レオの倍以上の魔力量があるかもしれない。
その魔力量に物を言わせ、休戦中もジェロニモは兵に遺体を集めさせ、スケルトン兵製造を続けていた。
大量のスケルトン兵を前線に配備したのだが、王国側はこれまでの戦いで対処法を掴んでいるようだ。
それでも時折敵兵を倒しているが、これでは王国の兵を減らすのに時間がかかる。
「ならば……」
スケルトンドラゴンを倒すための策があるのかもしれないが、そんなの砦ごと潰してしまえばいい。
そう考えたジェロニモは、開始早々ではあるが持っているカードを切ることにした。
「……何だあれは!?」
投石機の射程距離からスケルトン兵が後退する。
スケルトン兵ではなかなか決め手になるような攻撃ができないと判断しての行動だろう。
しかし、スケルトンの後退に変わって何かが迫ってきていた。
スケルトン兵の後退により、王国側は敵へと向けて攻めかかろうとしていたが、その何かを確認するように一旦停止した。
「なっ!?」
「犬? 猪? 他にも色々なスケルトンが……」
ジェロニモが切ったカードといっても、似た能力を持つレオが持っているのと変わりはない。
色んなタイプの動物型スケルトンが、王国兵へと向けて突進してきたのだ。
「くっ! スケルトン兵よりも俊敏性が高い!」
迫り来る動物スケルトンたちは、先程後退したスケルトンと違って俊敏性が段違いだ。
投石機による攻撃も、スイスイ躱して接近してくる。
「がっ!! 何て突進力だ!!」
何かの魔物の骨を動かしているのだろう。
猪型のスケルトンが盾兵へと突進する。
1体の突進に対し、2人の盾兵で止めに入る。
何とか止めることはできるが、ジリジリと圧されて後退を余儀なくされた。
「落ち着け! それぞれの特徴を見て対応すれば戦える!」
見たこともないスケルトンたちに、王国兵たちは慌てる。
それを見たフェリーラ領の領主であるメルクリオは、対人戦闘から対魔物戦闘の対応に変化することを指示した。
「メルクリオ様! そろそろ動きます!」
「レオ……、気を付けろよ!」
「はい!」
動物型のスケルトンに慌てる王国兵。
メルクリオの指示で少しずつ対応できるようになっていってはいるが、スケルトンたちの動きが速く分が悪い。
このままでは怪我人が大量に出る。
そう判断したレオは、自分も動くことを決意したのだった。