「膠着状態になりましたね……」
「あぁ……」
防壁の上から遠くに陣取るルイゼン軍の様子を眺めるレオとアゴスティーノ。
敵は一時撤退し、またもスケルトンの補充がされている。
今また攻め込んでくれば、敵が優位にこの砦を攻められると思われる。
そういった行動に出ることなく、敵は進軍をしてくる気配は感じられないでいた。
援軍を待つ王国軍からすると、この状態はありがたいところだ。
いまだに、敵はどこからあのスケルトンたちを生み出しているのかは見当が付いていない。
王国が手を焼いているのはあのスケルトンの数の暴力が問題のため、早々にあのスケルトンの情報を手に入れたいところだ。
数に対抗するにしても、王国側も援軍到着までは動けないため、お互い膠着状態になっていた。
「これもレオ君のお陰だろうね」
「そういって頂けると嬉しいです」
何度か話すうちに仲が良くなり、アゴスティーノはレオのことを君付けで呼ぶようになっていた。
レオも良くしてもらっているので、ありがたく思っている。
アゴスティーノのいうレオのお陰というのは、敵の膠着を生んだのが敵の後方からの石の雨によるものだからだ。
それを起こしたのが闇猫のクオーレによるもののため、主人であるレオのお陰というのは正しい。
「流石にまた後方から攻め立てられるようなことがあっては大変だからね」
「そうですね」
こちらがスケルトンの情報を得たいのと同時に、敵側はどうやって自陣の後方へ敵が回り込んだのかということを知りたいところだろう。
攻め込んでまた後方から石の雨でも食らおうものなら、またもスケルトンの大量破壊を受ける可能性がある。
あの一回の攻撃で、敵は迂闊に攻め込むことを躊躇っているようだ。
「レオポルド殿」
「ディスカラ様」
レオたちが話している所に、ディスカラがやってきた。
その姿を見たレオたちは、軽く会釈をした。
「陛下から報が届いた」
「ハッ!」
どうやら先日の勝利を受けたクラウディオ王から、全兵に向けての称賛の手紙が届いたそうだ。
それと同時に、ラスタラマの虚偽の招集書によって参戦することになったレオに関して、今後のことについても書かれていた。
陛下からの報と聞いて、レオは背筋を正して手紙の内容に耳を傾けた。
「今回の功に対しての褒賞を受けるために王都へ帰還せよとのことだ」
「了解しました!」
元々陛下からの招集ではないので、レオをいつまでも戦場におくのは間違っている。
ラスタラマによる虚偽の招集だったが、レオは敵の将でもあり指名手配犯である親と兄を捕縛した功労者だ。
その功に対する褒賞を与えてくれることになったらしい。
まだルイゼン領の奪還が済んでいない状態ではあるが、帰還できることは嬉しい。
その知らせを聞いたレオは、頭を下げてそれを受け入れたのだった。
「レオ! 帰還するんだってな?」
「はい。皆さんお世話になりました」
帰還の知らせを受け、ここで知り合った人たちへの別れと支度を整えるために、レオは砦内を回っていた。
貴族の者たちの挨拶も済ませ、レオは一緒にカロージェロたちの捕縛に協力してくれたスパーノたちにも挨拶へと向かった。
すると、帰還のことを知らされていたらしく、スパーノたちはレオの顔を見るとすぐにその話へと移っていった。
その話に入ったので、レオはすぐスパーノたちに感謝の言葉をかけた。
「何言ってんだ! お前に協力したことで俺たちみんなにも褒賞が出るらしいからな。ありがとよ!」
「協力してもらったのは事実ですから、気にしなくて良いですよ」
元々、彼らは様々な領の中から招集されているため今回の参戦の金額は高額だろうが、更に褒賞が出るのは嬉しいことのようだ。
ディスカラにも言ったように、スパーノたちの協力を受けたことでカロージェロたちを誘き出せたので、自分だけでなくみんなにも褒賞が出ることに安心した。
「戦いが終わったらお前んとこの領に遊びに行かせてもらうぜ!」
「はい。その時は歓迎しますよ」
そのうちヴェントレ島にもギルドを造り、冒険者を招集することになるだろう。
ここにいる精鋭たちの多くは高ランク冒険者だ。
その時には、彼らのような冒険者に来てもらえるのはありがたいため、レオとしては歓迎したい。
スパーノ以外にも同じように言ってくれる者たちもいて、レオとしてはその時のことが楽しみになった。
「まだ戦いが続くなか離脱するのは心苦しいのですが、お世話になりました」
「気にすることはない。我々は君には感謝している」
出発の日になり、レオは最後に会議室に集まった貴族たちに一言挨拶に向かった。
まだ戦いを続ける彼らに任せることになり、心苦しい思いをしつつ帰還することを告げた。
問題貴族は主要な部隊から除外され、ここに残った貴族たちはみんなレオの策成功を称賛してくれた者たちだ。
負け続きから一矢報いた形になれたことが嬉しかったようだ。
彼らを代表し、ディスカラがレオに感謝を述べる。
「あとは残った我々と援軍の勝利に期待していてくれ」
「はい。皆さんのご武運を祈っております」
今後は援軍によって数に押されることは緩和できるだろう。
兵の数では劣っても、所詮スケルトン単体の強さはたいしたことはない。
増え続けるスケルトンのことは気になるが、きっとルイゼン領の奪還を果たしてくれることだろう。
エレナのためにも自分の力でという程、レオは自分の能力を過信していない。
今後は彼らに頑張ってほしいところだ。
「では、失礼します!」
「あぁ!」
最後に室内にいる全員に向けて礼をし、レオは砦を後にすることになった。
◆◆◆◆◆
王都に着いて早々、レオは王城へ向かうことになった。
以前フェリーラ領の領主であるメルクリオからもらった正装を、魔法の指輪の中に入れておいて正解だった。
わざわざ仕立て直す必要がなく、余計な出費をしなくて済んだ。
出費をしなくて良かったのはいいが、王に呼ばれるというのは緊張するものだ。
しかも今回はメルクリオと一緒ではなく1人で来ることになったのだから、失礼なことをしないようにレオの頭はいっぱいになっていた。
そんななか、玉座の間に呼ばれたレオは、王の前で片膝をついて頭を垂れた。
「レオポルド・ディ・ヴェントレ、面を上げよ!」
「ハッ!」
以前とは貴族の数も違う。
その分レオは少しだけ気が楽になった。
いない貴族はルイゼン奪還に参戦しに向かったのだろう。
そんななか、陛下に名を呼ばれたレオは、言われた通り頭を上げた。
「今回の招集の件で色々あったが、元ディステ家の2人の捕縛ご苦労だった」
「ハッ! ともに招集された精鋭たちの協力あっての成果です!」
「うむっ!」
クラウディオの労いの言葉に、レオはこれまで通りの考えを返答する。
功を独り占めするような者が、市民に好かれるかというと疑わしいところだ。
全て自分の成果とすることのないレオの態度に、貴族らしくないとは思いつつも、クラウディオは好ましい態度だと思っていた。
「他の者たちの協力あってなのは分かっている。だが、間違いの招集ながら功を上げたことは素晴らしい」
「ありがとうございます!」
ディスカラからの報告で、ラスタラマの策によりレオは囮にされたという報告を受けている。
死ぬことが大いにあり得たことなのに、それでしっかりと成果を出したレオにクラウディオは称賛の言葉をかける。
王からの言葉に、レオは感謝の言葉と共に頭を下げた。
「よって、今回の貴殿の褒賞に、準男爵の爵位を授ける!」
「…ありがとうございます!!」
その褒賞に、レオは一瞬反応が遅れてしまった。
周りの貴族たちも驚いている様子だった。
賞金か何かが与えられると思っていただけなのに、まさか爵位を上げてもらえるなんて思ってもいなかったからだ。
陞爵を受けたレオは、喜びと戸惑いを持ちつつ玉座の間から去っていった。
「あぁ……」
防壁の上から遠くに陣取るルイゼン軍の様子を眺めるレオとアゴスティーノ。
敵は一時撤退し、またもスケルトンの補充がされている。
今また攻め込んでくれば、敵が優位にこの砦を攻められると思われる。
そういった行動に出ることなく、敵は進軍をしてくる気配は感じられないでいた。
援軍を待つ王国軍からすると、この状態はありがたいところだ。
いまだに、敵はどこからあのスケルトンたちを生み出しているのかは見当が付いていない。
王国が手を焼いているのはあのスケルトンの数の暴力が問題のため、早々にあのスケルトンの情報を手に入れたいところだ。
数に対抗するにしても、王国側も援軍到着までは動けないため、お互い膠着状態になっていた。
「これもレオ君のお陰だろうね」
「そういって頂けると嬉しいです」
何度か話すうちに仲が良くなり、アゴスティーノはレオのことを君付けで呼ぶようになっていた。
レオも良くしてもらっているので、ありがたく思っている。
アゴスティーノのいうレオのお陰というのは、敵の膠着を生んだのが敵の後方からの石の雨によるものだからだ。
それを起こしたのが闇猫のクオーレによるもののため、主人であるレオのお陰というのは正しい。
「流石にまた後方から攻め立てられるようなことがあっては大変だからね」
「そうですね」
こちらがスケルトンの情報を得たいのと同時に、敵側はどうやって自陣の後方へ敵が回り込んだのかということを知りたいところだろう。
攻め込んでまた後方から石の雨でも食らおうものなら、またもスケルトンの大量破壊を受ける可能性がある。
あの一回の攻撃で、敵は迂闊に攻め込むことを躊躇っているようだ。
「レオポルド殿」
「ディスカラ様」
レオたちが話している所に、ディスカラがやってきた。
その姿を見たレオたちは、軽く会釈をした。
「陛下から報が届いた」
「ハッ!」
どうやら先日の勝利を受けたクラウディオ王から、全兵に向けての称賛の手紙が届いたそうだ。
それと同時に、ラスタラマの虚偽の招集書によって参戦することになったレオに関して、今後のことについても書かれていた。
陛下からの報と聞いて、レオは背筋を正して手紙の内容に耳を傾けた。
「今回の功に対しての褒賞を受けるために王都へ帰還せよとのことだ」
「了解しました!」
元々陛下からの招集ではないので、レオをいつまでも戦場におくのは間違っている。
ラスタラマによる虚偽の招集だったが、レオは敵の将でもあり指名手配犯である親と兄を捕縛した功労者だ。
その功に対する褒賞を与えてくれることになったらしい。
まだルイゼン領の奪還が済んでいない状態ではあるが、帰還できることは嬉しい。
その知らせを聞いたレオは、頭を下げてそれを受け入れたのだった。
「レオ! 帰還するんだってな?」
「はい。皆さんお世話になりました」
帰還の知らせを受け、ここで知り合った人たちへの別れと支度を整えるために、レオは砦内を回っていた。
貴族の者たちの挨拶も済ませ、レオは一緒にカロージェロたちの捕縛に協力してくれたスパーノたちにも挨拶へと向かった。
すると、帰還のことを知らされていたらしく、スパーノたちはレオの顔を見るとすぐにその話へと移っていった。
その話に入ったので、レオはすぐスパーノたちに感謝の言葉をかけた。
「何言ってんだ! お前に協力したことで俺たちみんなにも褒賞が出るらしいからな。ありがとよ!」
「協力してもらったのは事実ですから、気にしなくて良いですよ」
元々、彼らは様々な領の中から招集されているため今回の参戦の金額は高額だろうが、更に褒賞が出るのは嬉しいことのようだ。
ディスカラにも言ったように、スパーノたちの協力を受けたことでカロージェロたちを誘き出せたので、自分だけでなくみんなにも褒賞が出ることに安心した。
「戦いが終わったらお前んとこの領に遊びに行かせてもらうぜ!」
「はい。その時は歓迎しますよ」
そのうちヴェントレ島にもギルドを造り、冒険者を招集することになるだろう。
ここにいる精鋭たちの多くは高ランク冒険者だ。
その時には、彼らのような冒険者に来てもらえるのはありがたいため、レオとしては歓迎したい。
スパーノ以外にも同じように言ってくれる者たちもいて、レオとしてはその時のことが楽しみになった。
「まだ戦いが続くなか離脱するのは心苦しいのですが、お世話になりました」
「気にすることはない。我々は君には感謝している」
出発の日になり、レオは最後に会議室に集まった貴族たちに一言挨拶に向かった。
まだ戦いを続ける彼らに任せることになり、心苦しい思いをしつつ帰還することを告げた。
問題貴族は主要な部隊から除外され、ここに残った貴族たちはみんなレオの策成功を称賛してくれた者たちだ。
負け続きから一矢報いた形になれたことが嬉しかったようだ。
彼らを代表し、ディスカラがレオに感謝を述べる。
「あとは残った我々と援軍の勝利に期待していてくれ」
「はい。皆さんのご武運を祈っております」
今後は援軍によって数に押されることは緩和できるだろう。
兵の数では劣っても、所詮スケルトン単体の強さはたいしたことはない。
増え続けるスケルトンのことは気になるが、きっとルイゼン領の奪還を果たしてくれることだろう。
エレナのためにも自分の力でという程、レオは自分の能力を過信していない。
今後は彼らに頑張ってほしいところだ。
「では、失礼します!」
「あぁ!」
最後に室内にいる全員に向けて礼をし、レオは砦を後にすることになった。
◆◆◆◆◆
王都に着いて早々、レオは王城へ向かうことになった。
以前フェリーラ領の領主であるメルクリオからもらった正装を、魔法の指輪の中に入れておいて正解だった。
わざわざ仕立て直す必要がなく、余計な出費をしなくて済んだ。
出費をしなくて良かったのはいいが、王に呼ばれるというのは緊張するものだ。
しかも今回はメルクリオと一緒ではなく1人で来ることになったのだから、失礼なことをしないようにレオの頭はいっぱいになっていた。
そんななか、玉座の間に呼ばれたレオは、王の前で片膝をついて頭を垂れた。
「レオポルド・ディ・ヴェントレ、面を上げよ!」
「ハッ!」
以前とは貴族の数も違う。
その分レオは少しだけ気が楽になった。
いない貴族はルイゼン奪還に参戦しに向かったのだろう。
そんななか、陛下に名を呼ばれたレオは、言われた通り頭を上げた。
「今回の招集の件で色々あったが、元ディステ家の2人の捕縛ご苦労だった」
「ハッ! ともに招集された精鋭たちの協力あっての成果です!」
「うむっ!」
クラウディオの労いの言葉に、レオはこれまで通りの考えを返答する。
功を独り占めするような者が、市民に好かれるかというと疑わしいところだ。
全て自分の成果とすることのないレオの態度に、貴族らしくないとは思いつつも、クラウディオは好ましい態度だと思っていた。
「他の者たちの協力あってなのは分かっている。だが、間違いの招集ながら功を上げたことは素晴らしい」
「ありがとうございます!」
ディスカラからの報告で、ラスタラマの策によりレオは囮にされたという報告を受けている。
死ぬことが大いにあり得たことなのに、それでしっかりと成果を出したレオにクラウディオは称賛の言葉をかける。
王からの言葉に、レオは感謝の言葉と共に頭を下げた。
「よって、今回の貴殿の褒賞に、準男爵の爵位を授ける!」
「…ありがとうございます!!」
その褒賞に、レオは一瞬反応が遅れてしまった。
周りの貴族たちも驚いている様子だった。
賞金か何かが与えられると思っていただけなのに、まさか爵位を上げてもらえるなんて思ってもいなかったからだ。
陞爵を受けたレオは、喜びと戸惑いを持ちつつ玉座の間から去っていった。