お母さん。

いつかきっと、あたしもそうなる時が来るのだと、

漠然と思い描いていた。

これが夢か現か幻かわからないけれど、

もし本当なら。



お母さんって、こんなにも不安になる存在なんだと思った。


恐怖なんて感じることもなく。

ただ言いたいことを言っていればいいのだと。

自分の思い通りになるように、あれダメこれダメ、あーしろこーしろって言うだけの。

子どもからすれば、心底はた迷惑な存在なのだと思っていた。


でも、今はあたしがこの子のお母さん。

もし、あたしがお母さんだったら。




自分の好きに生きればいい。

やりたいことをやればいい。

どうぞどうぞ。

お好きなように。

一人暮らしだろうが漫画家だろうが、自由に生きてちょうだい。







そんなふうに言い切れるだろうか?



少なくとも、これまでのあたしはその言葉がほしくて、

心のどこかで期待していた。


反発し続ければ、親はいつか折れてくれる。

自分の意志さえしっかり持っていれば、誰が何と言おうと突き進むべきだと。


頭ごなしに反対してくる親の存在が本当にウザくて、

消えていなくなればいいのに。

そうなれば、あたしはもっと自由に生きられるのに、と思うばかりで。

あたしは心の中で、何度も何度も、お母さんを消そうとした。


お母さんさえいなければ、あたしはもっと自由に生きられるのに。


お母さんのせい。

全部お母さんが悪い。

でも、もしお母さんがいなかったら?





あたしは生まれてくることすらなかったんだ。