★
漆黒の闇。
束の間の悪夢からの目覚めなのか。
暗い夜道を無我夢中で駆け抜けて、車に跳ね飛ばされたこの身体。
無事で済むはずがない。
全身を激しく揺さぶるような衝撃と、地面に叩きつけられた時の絶望感。
それから一気に解放されたかのように、今は何も感じない。
視界が徐々に鮮明になっていく。
どこか懐かしいーーはりかえたばかりの畳のにおいがする。
★
「ここは……?」
病院ではなく、見覚えのある一室。
あたしはその部屋の中央に立っていた。
何となく不自然な立ち位置に違和感を覚えて、辺りを見渡す。
開けっ放しの部屋の引き戸。
視線の先には廊下があって、向かいには台所とリビングがある。
その北側には、トイレと洗面所、お風呂があって。
「え……?」
この間取り、間違いない。
ここは、あたしのお母さんの部屋だ。
どうして?
「うッ……!」
不意に激しい吐き気に襲われ、あたしは思わず洗面台の方へ向かう。
「……ッ!」
キリキリとお腹が張り出し、同時に痛みも訪れた。
何これ。何でこんなに痛いの?
「はぁ、はぁ……」
胃のあたりがムカムカして、中にあるものすべてが今にも喉の奥を通って出そうなのに、何故か出ない。
何ともすっきりしない感じがたまらなく不快で、かといって横になって休む気にもなれない。
そういえば、さっき思いきり車にぶつかってとばされたはずなのに。
その痛みは全くない。
「何で……?」
目に見える怪我もない。
訝しく思いながらあたしは洗面台から上体を起こした。
「え……!?」
鏡を見て愕然とする。
2度見、3度見。
そこに映っていたのは。
「お……母さん?」
漆黒の闇。
束の間の悪夢からの目覚めなのか。
暗い夜道を無我夢中で駆け抜けて、車に跳ね飛ばされたこの身体。
無事で済むはずがない。
全身を激しく揺さぶるような衝撃と、地面に叩きつけられた時の絶望感。
それから一気に解放されたかのように、今は何も感じない。
視界が徐々に鮮明になっていく。
どこか懐かしいーーはりかえたばかりの畳のにおいがする。
★
「ここは……?」
病院ではなく、見覚えのある一室。
あたしはその部屋の中央に立っていた。
何となく不自然な立ち位置に違和感を覚えて、辺りを見渡す。
開けっ放しの部屋の引き戸。
視線の先には廊下があって、向かいには台所とリビングがある。
その北側には、トイレと洗面所、お風呂があって。
「え……?」
この間取り、間違いない。
ここは、あたしのお母さんの部屋だ。
どうして?
「うッ……!」
不意に激しい吐き気に襲われ、あたしは思わず洗面台の方へ向かう。
「……ッ!」
キリキリとお腹が張り出し、同時に痛みも訪れた。
何これ。何でこんなに痛いの?
「はぁ、はぁ……」
胃のあたりがムカムカして、中にあるものすべてが今にも喉の奥を通って出そうなのに、何故か出ない。
何ともすっきりしない感じがたまらなく不快で、かといって横になって休む気にもなれない。
そういえば、さっき思いきり車にぶつかってとばされたはずなのに。
その痛みは全くない。
「何で……?」
目に見える怪我もない。
訝しく思いながらあたしは洗面台から上体を起こした。
「え……!?」
鏡を見て愕然とする。
2度見、3度見。
そこに映っていたのは。
「お……母さん?」