大嫌い。


大嫌い。


親も、あたしも、何もかも。


全部、全部、全部。


大嫌い。


大嫌い。


大っ嫌い。






お母さんなんて、大嫌い。


たった今、あたしの念願叶った夢を踏みにじったから。


応援してくれると、微塵でも思ったあたしが馬鹿だった。




「ねぇ、凛々(りり)。聞いてるの?」


しつこいな、お母さん。


「ねぇ、お父さんからも言ってやってよ」


いい加減解放してくれないかな。もうかれこれ1時間以上座りっぱなしでお尻が痛い。


夕飯食べ終わった直後から、片付けもしないまま説教になるなんて。


そもそも、話を切り出すタイミングを完全に間違えた。

「……うっざ」



それにしても、長い。


長いだけで、同じ言葉の繰り返し。


ウザくて、ウザくて。


もう耐えられない。



どうしてあたしの好きなようにさせてくれないんだろう。


「何で? 何でできないとか簡単に言うの? やっと掴んだチャンスなのに!」


「だから、まだ早すぎるのよ。そんな歳で一人暮らしなんて、無理に決まってるじゃない」


「はあ? なにそれ。そうやってすぐ決めつけんのやめてよ」


「凛々、いい加減現実を見なさい。何が漫画家よ。お絵描きで食べていけるほど世の中甘くないのよ。デビューって言っても、賞取るのが関の山でしょ。賞金だって生活費の足しにもならないじゃない。ちょっと、お父さんも凛々に言って聞かせてよ。我儘ばっかり言うんだから」


お父さんはあたしに興味がない。


普段から空気みたいだし、喋っても基本「ああ」しか言わない。


「ああ」


ほら。



「もう、私にばっかり言わせないで。何とか言ってやって。父親でしょう」


「あー、また今度な」

「お父さん!」



お母さんは、

お母さんは、







あたしの敵だ。




もう疲れた。

出ていこう、こんな家。

ここにあたしの居場所は……ない。