「昔、体は小さいけど、ある村にとっても大食いの猫さんがいたの。猫さんはね、たくさん食べ過ぎて、ついに村中のネズミさんを食べ尽くしてしまったの。
 そうしたらもう新たなネズミさんは食べられなくなってしまうでしょう?猫さんは途方に暮れてしまったの。ネズミさんを探して、村の1番外れの山まで行ったの。山には洞窟があったの。でも、そこから出てきたネズミさんもみんな食べてしまっていたから、やっぱりネズミさんはいなかったの。
 代わりに巨人さんがいたの。ネコさんは当然びっくりして怖がったわ。でもね、その巨人さんはとっても恐がりだったから、小さな猫さんを見ただけで、震え上がってしまったのよ。
 ところでハルさんは蚤の心臓って言葉を知ってるかしら?とっても、臆病な人のこと。そう、つまりその巨人さんはね、心臓に虫を飼っていたのよ。
 猫さんは頭を抱えてブルブル震えている巨人さんを見て、ふと思ったのよ。あれ、僕、もしかしたらこの人より強いんじゃないかな……って。巨人さんの心臓からは虫の良い匂い。
 そうしたらもう猫さんは迷わなかったわ。巨人さんの心臓を鋭い爪でガリっとえぐり取って、心臓の虫をぱくり。ああ、久しぶりの食事は美味しいなあ。
 猫さんが虫を飲み込むと、猫さんの体はみるみうるうちに大きくなったわ。不思議ね。実はね、心臓の虫を食べると飼い主の体のほしいものがもらえるの。猫さんは巨人さんみたいに大きくなりたかった。猫さんはみるみるうちに大きくなったの。
 食いしん坊の猫さんは巨人さんと同じくらい大きくなったわ。人間なんて一口で食べることが出来るくらいに。そして猫さんは呟いたの。
 「ああ、お腹がすいたなあ」って」