頼我は入学当初からずっと同じクラスの美羅先輩が好きだった。でも、彼氏から奪い取るのは不可能。頼我は美羅先輩の友達ポジションをキープし続けた。都合よく美羅先輩に似たモサい田舎娘が現れたので口説き落とし、ジェネリック美羅先輩を作り上げた。ところが、肝心の美羅先輩が彼氏と別れたという。本物が手に入るかもしれない状況です。さあ、偽物はどんな末路をたどるのでしょう?
噂話やSNSの情報をまとめると外野から見た私、頼我、美羅先輩の三角関係はこうだった。三角関係というのもおこがましい。美羅先輩は私の存在すら知らない。頼我は「友達としてしか見られない」という理由でフラれた。
頼我がフラれたのなら、私が何も知らなかったことにすればいい。浮気なんてよくあることだから波風を立てたくない。私が我慢すればいい。でも、周りからの視線が辛い。助けて、頼我。
馬鹿なふりをして、いつものように頼我の家に泊まった。頼我のプレゼントで全身を着飾った。ほら、美羅先輩に似てるでしょ?私でいいじゃん。
「ごめん。別れて欲しい」
「嫌だ、別れたくない。美羅先輩の代わりでもいいから」
頼我に愛されるためなら、私の名前も魂もすぐにでも捨てていい。嘘でいいから愛して。願いは虚しく頼我の決意は固いままだった。
何もくれなくてもいいから、心だけください。と言いながら、頼我のくれたブランド物に身を包んでいる。だって、これしか着飾り方を知らない。
いくら可愛く着飾って、誰に好意を寄せられてもあなたに愛されなければ意味がないと言いたかった。頼我から私を奪い取ろうとする妙な男はトロフィーとしての私への興味を失った。賢い男は弄ばれた馬鹿な女に価値を見いださなかった。
どんなにきらきらした毎日もあなたがいなければ灰色だと言いたかった。メッキの剥がれた偽物は用無し。腫れ物になんて誰も触りたくない。みんなが私を遠巻きにするようになり、きらきらした学校生活はどこか遠くに行ってしまった。
頼我と別れて、私は全てを失った。空っぽの私のそばにいてくれたのは梓だけだった。梓がいなければ壊れていた。
後期のテストが終わった頃、頼我が写真で小さな賞を取った。コンクールのサイトには「躍動」というタイトルと頼我の名前があった。
賞をとったのはステージで躍る美羅先輩の写真だった。美羅先輩は汗も表情も動きも、全てが美しく輝いていた。この人には何億回生まれ変わったって敵わない。
頼我とは何十回もデートした。その間、頼我はただの一枚たりとも私の写真を撮らなかった。ぐちゃぐちゃな感情のまま、受賞コメントを読む。
「美しい瞬間が切り取りたくて写真を撮り続けています。4年間ずっと倉持さんが躍っているところを撮らせていただいていたのですが、ようやく彼女の魅力を引き出せたと満足しています」
お腹が痛い。気持ちが悪い。胃の中のものを全部吐いた。全部嘘だった。大学生活の楽しかった記憶は全部幻だった。嘘の上にたっていた砂上の楼閣は崩れた。こんな世界全部偽物なんだから何もかも消えてしまえばいい。
心を守るための記憶喪失というものは本当に起こるらしい。私の世界が壊れた日、失恋以降の記憶が寝て起きたら全部消えていた。確実に臓器にはダメージが残っていて、その後も何回か吐いた。熱を測ると普段より高くて、お腹が痛くて重かった。
その時の私の中では、まだ頼我と付き合っていた。記憶の混濁した私の出した結論は「妊娠による体調不良」だった。なぜかいるはずのない頼我の姿が見えていて、頼我の声の幻聴を何度も聞いた。
記憶が消えても、私をずっと守り続けてくれた梓への信頼は深層心理に残っていた。梓にだけは、妊娠を伝えた。結局、ただの想像妊娠で結果として大迷惑をかける結果になってしまったけれど。
噂話やSNSの情報をまとめると外野から見た私、頼我、美羅先輩の三角関係はこうだった。三角関係というのもおこがましい。美羅先輩は私の存在すら知らない。頼我は「友達としてしか見られない」という理由でフラれた。
頼我がフラれたのなら、私が何も知らなかったことにすればいい。浮気なんてよくあることだから波風を立てたくない。私が我慢すればいい。でも、周りからの視線が辛い。助けて、頼我。
馬鹿なふりをして、いつものように頼我の家に泊まった。頼我のプレゼントで全身を着飾った。ほら、美羅先輩に似てるでしょ?私でいいじゃん。
「ごめん。別れて欲しい」
「嫌だ、別れたくない。美羅先輩の代わりでもいいから」
頼我に愛されるためなら、私の名前も魂もすぐにでも捨てていい。嘘でいいから愛して。願いは虚しく頼我の決意は固いままだった。
何もくれなくてもいいから、心だけください。と言いながら、頼我のくれたブランド物に身を包んでいる。だって、これしか着飾り方を知らない。
いくら可愛く着飾って、誰に好意を寄せられてもあなたに愛されなければ意味がないと言いたかった。頼我から私を奪い取ろうとする妙な男はトロフィーとしての私への興味を失った。賢い男は弄ばれた馬鹿な女に価値を見いださなかった。
どんなにきらきらした毎日もあなたがいなければ灰色だと言いたかった。メッキの剥がれた偽物は用無し。腫れ物になんて誰も触りたくない。みんなが私を遠巻きにするようになり、きらきらした学校生活はどこか遠くに行ってしまった。
頼我と別れて、私は全てを失った。空っぽの私のそばにいてくれたのは梓だけだった。梓がいなければ壊れていた。
後期のテストが終わった頃、頼我が写真で小さな賞を取った。コンクールのサイトには「躍動」というタイトルと頼我の名前があった。
賞をとったのはステージで躍る美羅先輩の写真だった。美羅先輩は汗も表情も動きも、全てが美しく輝いていた。この人には何億回生まれ変わったって敵わない。
頼我とは何十回もデートした。その間、頼我はただの一枚たりとも私の写真を撮らなかった。ぐちゃぐちゃな感情のまま、受賞コメントを読む。
「美しい瞬間が切り取りたくて写真を撮り続けています。4年間ずっと倉持さんが躍っているところを撮らせていただいていたのですが、ようやく彼女の魅力を引き出せたと満足しています」
お腹が痛い。気持ちが悪い。胃の中のものを全部吐いた。全部嘘だった。大学生活の楽しかった記憶は全部幻だった。嘘の上にたっていた砂上の楼閣は崩れた。こんな世界全部偽物なんだから何もかも消えてしまえばいい。
心を守るための記憶喪失というものは本当に起こるらしい。私の世界が壊れた日、失恋以降の記憶が寝て起きたら全部消えていた。確実に臓器にはダメージが残っていて、その後も何回か吐いた。熱を測ると普段より高くて、お腹が痛くて重かった。
その時の私の中では、まだ頼我と付き合っていた。記憶の混濁した私の出した結論は「妊娠による体調不良」だった。なぜかいるはずのない頼我の姿が見えていて、頼我の声の幻聴を何度も聞いた。
記憶が消えても、私をずっと守り続けてくれた梓への信頼は深層心理に残っていた。梓にだけは、妊娠を伝えた。結局、ただの想像妊娠で結果として大迷惑をかける結果になってしまったけれど。