いつのことだったかしら。朝、学校に行くため、外に出たときだった。
自分の家の前で、真剣な表情でメモをとっている遠野さんの姿を見た。
胸がドキッとするほど、カッコよかった。
「こんにちは」
僕が挨拶すると、口元をゆるめて、
「こんにちは」
と返してくれた。メモを取り終わると、満足そうにうなずいた。
「行ってらっしゃい」
明るい声で僕を見送ってくれた。
何か、仕事のアイデアを思いついたのだろうか?
教室に入るまで、遠野さんが何をメモしていたか、ずっと考えていた。
いつのことだったかしら。学校から帰ってきて、偶然、コーポの前で会ったとき、なぜだかパッと心がときめいた。
そのとき、遠野さんったら不思議そうに、
「どうかしました?」
なんて聞いてきた。
恥ずかしいけど顔に出ていたみたい。思わず僕は、
「えっ? あの、カッコいいですね」
なんて顔真っ赤で答えていた。
答えて、ますます顔真っ赤。僕ってなに言ってるんだろう?
「松山くん。嬉しいこと言ってくれるね」
遠野さんったら、クールに首をかしげてみせる。このポーズが、とっても大人に見えてまぶしかった。
「彼も喜ぶと思う」
少しだけ口に笑み。
「わたしももう三十三歳か。彼、夢があってね。 夢がかなったら結婚しようって約束。わたしも彼の夢、応援している」
ご自分の個人情報をペラペラ話して大丈夫なんでしょうか? 僕、なんだか心配になってくる。 しかも年齢まで教えてくれるんだもの。
よくよく考えれば、
「わたしを好きになってもダメ。 最初からあきらめてほしい」
と言いたかったのかしら。
本音を言います。少し寂しかった。
僕が自分の家に入ろうとしたときだった。
「東洋教育大学、頑張ってね」
そう声をかけてくれた。
「合格したらUSJ連れてってあげるね。わたしの彼氏も一緒だけど」
僕は大きく頭を下げて家に入った。
すごく単純だけど……。
彼氏と一緒でもいい。遠野さんとUSJに行きたい。東洋教育大学頑張るぞ! そのとき、固く決意した。
遠野さんとふたりで話をしたのは、よく考えたらそれくらいだった。
どうして二月十四日の今日、僕の家の前にいるのだろうか?
自分の家の前で、真剣な表情でメモをとっている遠野さんの姿を見た。
胸がドキッとするほど、カッコよかった。
「こんにちは」
僕が挨拶すると、口元をゆるめて、
「こんにちは」
と返してくれた。メモを取り終わると、満足そうにうなずいた。
「行ってらっしゃい」
明るい声で僕を見送ってくれた。
何か、仕事のアイデアを思いついたのだろうか?
教室に入るまで、遠野さんが何をメモしていたか、ずっと考えていた。
いつのことだったかしら。学校から帰ってきて、偶然、コーポの前で会ったとき、なぜだかパッと心がときめいた。
そのとき、遠野さんったら不思議そうに、
「どうかしました?」
なんて聞いてきた。
恥ずかしいけど顔に出ていたみたい。思わず僕は、
「えっ? あの、カッコいいですね」
なんて顔真っ赤で答えていた。
答えて、ますます顔真っ赤。僕ってなに言ってるんだろう?
「松山くん。嬉しいこと言ってくれるね」
遠野さんったら、クールに首をかしげてみせる。このポーズが、とっても大人に見えてまぶしかった。
「彼も喜ぶと思う」
少しだけ口に笑み。
「わたしももう三十三歳か。彼、夢があってね。 夢がかなったら結婚しようって約束。わたしも彼の夢、応援している」
ご自分の個人情報をペラペラ話して大丈夫なんでしょうか? 僕、なんだか心配になってくる。 しかも年齢まで教えてくれるんだもの。
よくよく考えれば、
「わたしを好きになってもダメ。 最初からあきらめてほしい」
と言いたかったのかしら。
本音を言います。少し寂しかった。
僕が自分の家に入ろうとしたときだった。
「東洋教育大学、頑張ってね」
そう声をかけてくれた。
「合格したらUSJ連れてってあげるね。わたしの彼氏も一緒だけど」
僕は大きく頭を下げて家に入った。
すごく単純だけど……。
彼氏と一緒でもいい。遠野さんとUSJに行きたい。東洋教育大学頑張るぞ! そのとき、固く決意した。
遠野さんとふたりで話をしたのは、よく考えたらそれくらいだった。
どうして二月十四日の今日、僕の家の前にいるのだろうか?