相手のディフェンスは、コート真ん中にのびのびと引かれた線を越えてから。あの白線を一度(ひとたび)跨げばそこから始まるサバイバル。
 敵のいない空っぽなハーフコートで俺はゆっくりドリブルをつき、頭をフル回転させた。

 チーム内において最も高身長で、高い得点率を常に保持している熊五郎。確実に点を取りにいくのならば、やはり彼を使った方がいいだろうか。
 俺はふと、リング傍で待ち受ける熊五郎を見た。彼の瞳で揺蕩(たゆた)う炎は健在だ。

 リングを挟んだ熊五郎の反対側。そこではナベが構えている。彼もゴール下に強いシューター。
 彼が瞬時に判断してとる行動はいつも正しくて、ディフェンスを欺くのもお得意なよう。
 ナベを見ればぶつかる視線。いつでも来いと、彼の瞳が言っていた。

 アッキーと陽平と俺。この3人でボールを回し、熊五郎かナベでシュートがベストか?

 ダム ダム ダム。

「でも、なあ……」

 じゃあそうしようって俺がアクションを起こせないのは、すぐにやって来る「その()」を不安視しているから。

 77対80。その差は3点。

 最低でもスリーポイントラインからゴールを決めなければ、延長戦にも持ち込めない。