気味が悪かった。ゾッとした。

「嘘だろ、おい……」

 スパンと軽快な音でネットを(くぐ)り抜けたボールは何度かコートで跳ねると、まるで意思でも持ったかのように、そのコートを静かに出て行った。

 77対80。

 スコアが変わり、沸き立つは敵のベンチと応援席。対して俺等の応援側の人々は事故でも目撃したように青ざめていて、ベンチに座る仲間に至ってはもう、身内の葬式へ参列しているような顔だった。

 ドクドクドクドク。

 躍動感が消えた鼓動は、聞いていても反吐(へど)が出るだけ。

 なんだよまじかよ。こんなんじゃもう……

「馬鹿野郎!切り替えろ!」

 ぼけっと絶望していれば、鬼頭の唾が飛ぶ。

「さっきまでの意気込みはどこへ行ったんだ!こんなことで諦めんな、ふざけんな!てっぺんとるんだろう!?」

 その瞬間、アッキーが微笑(びしょう)した。