疾風(はやて)の如く(ちゅう)を駆け抜けるボールの目的地はコートの端。ナベのマークマン、背番号6。
 俺の発した「ナ」の字だけでもう、自分の名だと理解してくれたナベの長い手がボールを捕らえに向かっていた。

 頼む、奪ってくれっ。

 そう神に願うのに、何故かボールの行き先ががらりと変わった。

「なに!?」

 それはナベの手がボールへと届くよりも先に、6番がそれにした平手打ち。
 べチンと大きな音を立て、ボールはフロアでワンバウンド。ゴール下を守っていた熊五郎が咄嗟に掴みにかかるけど、計算し尽くされたように背番号5の胸元でキャッチされ、熊五郎は歯を食いしばっていた。

「ちっ!」

 メラッと熊五郎の瞳が燃ゆる。

 ボールを抱えた5番は次にパスを出す相手を探していた──かと思ったら。